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第54話『修練迷宮第一層、後編』


 3つ目のフロアに入ると、マップで見た通り広さがさっきまでとは全く違う。


 サッカー位なら出来そうな広さに、球状な為か広さが増した分、天井もより高くなっている。

 出て来る魔獣の数や大きさが増えてもおかしくないし、天井がかなり高くなってるので、空を飛ぶ魔獣なんかが出る可能性も否定出来ない。


「広いわね~」

「でも何も無いから面白味が無いよ」


 桜がフロア内を見渡して言った言葉に、紅葉ちゃんが不満気な表情で返していた。

 紅葉ちゃん的には、さっきまでのフロアとの違いが広いしか無いと言うのはつまらないらしい。


「でも、こんだけ広いなら出て来る魔獣はさっきまでとは違ってるだろうから要注意だぞ」

「量が増える位ならちょっと大変ですけど、素早く走り回る相手だと厄介ですね」


 あぁ、確かに俺達は普通に強いだけならある程度力押しでやれるけど、ちょこまか動き回られるのは苦労しそうだ。


「まぁ、幾ら考えてても仕方ないし、さっさと相手を出すぞ」


 周りに一声掛けて手早く出現を選択した。


 出現により出て来たのは同じ魔獣が4体、蛇の尾を持ち山羊の胴体に翼が生え…………何故か頭部は猫だった。

 さり気に頭部だけは4体全て種類がバラバラだったが、種類が違うだけで猫だ。


 何となく予想は付くが相手のステータスを表示してみると。


【種族名・キマイラ(人造種)

 ランク・B+飛行タイプ】


 分かってた、頭部以外イメージ通りだもん。


「へぇ~、アタシ達4人で1匹づつって事ね、丁度いいじゃない」

「あ~、でも別々に戦うのはキツいんじゃないか? アレ絶対飛ぶぞ?」

「確かに、桜さんは魔法使ってしまうと相手を引き付けてしまいますから、途中で桜さんの方に行ってしまうかも知れません」

「桜は攻撃力不足だし、椿も近付かれたら危ないんじゃないかな? まだ近い距離で戦うの慣れてないじゃん」


  出て来た魔獣を見て、そんな事を言ってる間にキマイラは翼を広げ空を飛び回り始める。


 あ~、俺と桜に問題点があるのは確かだけど、俺達はそんなに集団戦の練習してないんだよな。


「まだ実際に効果は見てないけど障壁がある事だし、まずは各自で魔法を使わず戦ってみてもいいだろ! 危なそうなら助けを求めるって事で、1人1体を目標に戦闘開始!」


「そ~言う簡単なの大好き! 僕向こうのやる~!」


 早速紅葉ちゃんが駆け出した、どうやら一番奥の方に居るキマイラに目星を付けた様で、別のキマイラの下をすり抜けて飛び付いている。


「もぅ、また真っ先に行っちゃって……椿さんは無理しないで危ない時はすぐに言って下さいね、一番に駆け付けますから」


「アタシは目の前の奴貰っていいかしら? きっと仕留めるのはアタシが最後になっちゃうでしょうし」

「了解了解、俺は真ん中やると向こうに居る紅葉ちゃんの邪魔になりそうだしな」


 桜は中央、楓ちゃんと俺は左右を飛ぶキマイラに狙いを定めて走り出した。



「まずは先制攻撃だ」


 俺は走り出すと同時に魔力弾を数発撃ち出す。

 練習の結果、いつもより生成の際に掛ける時間を減らし速射する事で適度な威力の魔力弾を作る事に成功した……筈。


 ぶっちゃけすぐに撃ち出す性で込められた魔力量は大雑把にしか分からない上、試し撃ちの的が無かったので正確な威力は分からない。

 いつものが10で、さっきの戦闘の時が100だとすると多分20~50辺りの威力になってる……と思う。



「チッ、追加で撃ってどうにか1発当たったけど他は全部避けられたか」

 キマイラは縦横無尽に空を駆け、魔力弾を回避しながらこちらに向かって来たので、更に魔力弾を撃ち込み何とか翼に命中させ空中から叩き落とす事に成功した。


『フシャー!!』


 片翼を負傷したキマイラは地面に降り立ち、器用にも頭部の毛だけ逆立て鳴き声を上げて威嚇してくる。

 と言うか、やっぱり鳴き声は猫なのか。



 そんな風に考えていると、キマイラは身を屈めると一気に跳び掛って来た。

 咄嗟に魔力弾を撃ち迎撃しながら横に転がる様に回避する。


 跳び上がったキマイラは翼が片方負傷している為か、空中で魔力弾を避けられず右前足に直撃した性で攻撃を外した後の着地に失敗して転倒した。


「翼はボロボロになる程度の威力はあるみたいだけど、足には今一な効きだな」


 翼は強度がそこまで高く無いらしく、翼膜が破れボロボロになっているが、直撃した前足は多少血が滲んでいる位で軽傷にしかなっていない。

 それでも、立ち上がってすぐに再び襲い掛かって来る程軽いダメージでは無いらしく、立ち上がった後は警戒した様子で唸り声を上げて身構えている。


「1発や2発程度じゃ足りなそうだな、ちょっと可哀想だが数で対抗させて貰うぞ」


 キマイラが再度跳び掛って来る前に、キマイラに向けて杖を掲げ魔力弾を機関銃の様に連続で撃ち出す。

 キマイラは横に駆け出し魔力弾を避けながら近付いて来ようとするが、避けたキマイラを追う様に連射した魔力弾の方向を変える。


 キマイラは追ってくる魔力弾を避ける為に真横に軌道を変え、俺の周りをグルグルと回って近付けない。


「チッ、寄せ付けない様には出来たが、動きが速くてこのままじゃキリがない」


 駆けるキマイラを追う様に魔力弾を放ち続けるが、全く当たらない。


 無駄な魔力弾の連射を止めると、キマイラは向きを変えそのままの速さで接近してくる。


 キマイラは速度を落とさず、体当たりしてきたのでタイミングを合わせて横に飛び退きながら、側面から再度魔力弾の連射した。


『フギャ!?』

 体の側面に魔力弾の連射をくらい、キマイラは鳴き声を上げバランスを崩し駆けた勢いのまま転倒して転がっていく。


 今度は立て直す前に容赦無く魔力弾の連射をキマイラに向けて追撃した。


 休み無く発射される魔力弾はキマイラの体に当たり、キマイラの体を引き摺る様に動かしながら徐々に鮮血が飛び散り始める。



 きっちり仕留める為に、容赦無く魔力弾を数百発以上撃ち続けると、途中で光の粒子が飛び散って鮮血が見えなくなった。


 魔力弾を止めてキマイラが居た辺りを見ると、既にキマイラの姿は無くなっていた。


「倒しきったか、流石に早い内に物量でゴリ押しにせずにもっと近接戦に挑戦した方が良かったかな」


 キマイラが居た辺りを見ながら頬を掻きつつ苦笑いする。

 結局障壁があるから、と言いつつ攻撃を受けない様に力押しで倒してしまったのを少し後悔した。


「椿さんが怪我しない様に、安全に倒してしまうのが一番ですよ」


 唐突に声を掛けられて、ビクッ! と肩を跳ね上げ驚きで固まり声がした方へゆっくり視線を向けると。




 目の前に予想を遥かに越える程の至近距離でニコニコ笑顔の楓ちゃんが居て、思いっ切り飛び退いた。

 近過ぎるし怖いわっ!。

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