第45話『普通の魔法使いは接近戦が不得意』
何か短い……。
戦闘シーンがありますが、典型的な魔法使いが単独で戦うのであっさり気味。
と言うか、典型的な魔法使いは短期戦で終わらせないと危険だよね。
「暴風よ、敵を吹き飛ばせ!」
ミーシャは近付いて来るコボルトに向け、そう叫んで杖を翳すとコボルトに向かって強風が吹き荒れる。
1体は強風に煽られ転び、残り2体はその場で伏せ地面に張り付く様に耐えた。
ミーシャはすぐさま、杖の先に展開した魔方陣を他の物に変え、別の魔法を続けて放つ。
「火球よ、敵を焼き払え!」
杖の先端から、風に耐えて地面に伏せている2体のコボルトに向け1つずつ、合わせて2発の火の玉が放たれた。
放たれた火の玉は、コボルトの背中に当たると一気に燃え上がり、2体のコボルトは火だるまになって地面を転げ回る。
地面を転げ回る2体のコボルトの間から、風に煽られ転がっていたコボルトが飛び出し、接近してきた。
「っ……光よ、敵の目を眩ませっ!」
近付いて来るコボルトに向け、杖を翳すとカメラのフラッシュを焚いた様に眩い光が放たれた。
「フギャッ!?」
光を諸に食らったコボルトは叫び声を上げ、立ち上がって手で顔を覆い仰け反る。
「火球よ、敵を焼き払えっ!」
ミーシャは仰け反ったコボルトの胴体に向けて、火の玉を放ち最後の1体のコボルトも燃え上がり火だるまになった。
しばらく油断無く杖を構えたまま見守っていると、徐々にコボルトは動かなくなった。
「ほらっ! あたしに掛かればコボルトなんて楽勝なのよっ!」
ミーシャが胸を張って自信満々に言って来る。
がしかし、ギルは微妙な表情を浮かべ、俺も……こう、何と言うか参考になる様で全く参考にならない感じが。
「こんなに黒焦げでは、討伐部位の爪の価値が下がりかねないのである。
火属性以外で仕留められなかったのであるか?」
「と言うか、先制攻撃で倒されたら俺達の練習にならないんだけど」
俺達は金稼ぎ目的じゃないから、ギルの言ってる事はまだしも、近付いて来る前に仕留められたら俊敏な魔獣相手にどう戦うか、そんな訓練が出来ない。
むしろ、あんな風に倒すなら多分俺でもすぐに出来る気がする。
「そんな事言われても……あたし火属性以外の攻撃魔法何て使えないし……それにっ! 普通の魔法士は接近戦なんて殆ど出来ないわよっ!」
いや、まぁ魔法使いが近接戦闘が得意な訳無いけどさ。
「だからって、弱い魔獣相手に近寄られたら対処出来ないのはマズいだろ」
Dランクとか、マトモな魔獣の中では最低ランクなんだから、最低ランクの魔獣で近接距離の対応が出来ないんじゃ、1つランクが上がっただけで勝てなくなる可能性が高い。
「椿殿の言う通りなのである、コボルト程度の相手に手間取る様では、Cランクの依頼で同行を許可出来ないのである、近い内に命を落とすのである」
「うっ……確かにDより上だと危ないのは確かだけど、でも椿もDランクでやるならいいじゃない」
「いや、接近戦とか素早い魔獣相手に練習したいだけで、多分近々CやB辺りもやると思うぞ」
桜はどうなのか知らないが、ゴブリン基準で言えばCランクのジェネラルまでなら今でも何とかなりそうだし。
文字魔法を使った身体強化を使いこなせる様になれば、恐らくBのキングも単独で倒せる気がする……力強くて頑丈だけど結構動き遅かったし。
「椿殿はそんなに強かったのであるか、例の魔道具の力であるか?」
「いや、影響が全く無い訳じゃないけど、一応自前だ、多分それアリなら力任せでAランクもやれるんじゃないか?」
あの魔装具にはバリア的なのがあるらしいし、魔力も10倍以上に跳ね上がるんだから、多少攻撃を食らってもカウンターで魔力弾ブチ込めばやれる気がする。
「ちょっと、魔道具って何の話よ」
「あ~……俺や桜、それとあの時居た楓ちゃんと紅葉ちゃんの4人はこの国の魔道具の使い手として呼ばれたんだよ。
魔力自体を使い始めたのは最近で、その魔道具を使うにしても力任せにしか使えないから、まず普通に魔力を使って戦う練習してんの」
面倒だからそれなりに事情を暴露した、別に問題は無い……筈。