第42話『2度目の休日、昼前』
「あら、椿ちゃんいらっしゃい、水着を受け取りに来たのよね?」
防具屋に入って早々にガルドに遭遇した。
この人の店何だから、会うのは当たり前何だけど、扉を開けてすぐ目の前に居たので、後退りし掛けた。
別にオネェな人自体は、自分に被害が及ばなければ、そんなに嫌いじゃないんだけど、この人って髭面のドワーフだし、ちょっと見た目とのギャップが激しいオネェな人は衝撃が強過ぎるんだよね。
「え、えぇ……出来てますよね?」
「ちゃんと椿ちゃんの要望通り、袖があって膝の辺りまで覆う水着で作ったわよ」
ん? 何か抜けてる様な気が……気のせいか?。
「そっちの人は初めてよね? 私はこの店の店主兼職人のガルドよ」
「アタシは桜、ココは水着も作ってくれるのね、防具屋って言う位だから鎧みたいな防具しか無いと思ってたわ」
あぁ、ゲームとかの知識が無いと、そう思ってもおかしくないよな。
知識があれば、皮製の鎧とか殆ど裁縫類だし、明らかに布系の何かは鍛冶の技術必要無いだろう。
更に、そう言う系があるかは不明だけど、水着系の防具何かも普通にある可能性を考えると、防具としての性能が低い普通の生地を使えば、普通に服屋として商品売れるから割と店の生命線になりそうだよな。
「奥に行けば衣類もあるわよ、サイズの問題で見本しか無いから、買うなら全部特注品になっちゃうけどね」
「あら、特注って事は女性用もアタシのサイズで作ってくれるのかしら?」
「勿論よ~、ちょっと割高になっちゃうけど、オリジナルのデザインも絵に書いてくれれば作るわよ」
「それは嬉しいわね、アタシも今度デザインを書いて頼もうかしら?」
あ~、何か2人で超盛り上がってるし。
別に今日依頼を受けようとは思って無かったけど、2人で長々と話し込みそうな気がするな。
「盛り上がってる所悪いけど、出来た水着持って来てくれないかな?」
「あら? ごめんなさいね、今持って来るから桜ちゃんは向こうに女性服の見本があるから、見ていってよ」
ガルドは桜に奥のスペースを指差してみせた後に、カウンターの先にある扉の中に入って行った。
女性……では無いが、女性の買い物は長いし、桜に付き合ってたら半日は潰れそうだよな。
「今日は余り依頼やる気無いし、別に討伐依頼に行かないなら別行動でも問題無いだろ? 桜はゆっくり見て行ったらどうだ?」
「そう? それならお言葉に甘えて今日はウインドウショッピングを楽しもうかしら?」
桜と話していると、ガルドがカウンターの向こうから出て来た。
「お待たせ~、ほら? とっても可愛い水着でしょ」
そう言って広げたのは、半袖半ズボン位の長さの真っ白な水着。
所々にフリルが付いていて、何故か脇腹部分が空いている。
更にクルッと半回転させると、背中から腰まで大きく空いていて、凄くセクシー……ってちょっとマテヤ。
「全身覆う水着って言ったのに、何でこんなに露出してんだよっ!」
「だってコレってきっと湯浴み着でしょ? 全部覆っちゃたら洗えないじゃない」
うっ、確かに体は洗えないけど、それにしたってコレは……。
「そもそもコレって男性用じゃねぇだろ」
「ちゃんと男の娘用よ?」
何か違う、絶対に違うけど自分から言うと負けた気がする。
もうコレでいいや、スクール水着よりはマシだと考えよう。
「それで、この水着って幾ら何ですか?」
「私の好みでデザインしちゃったし、デザイン料と減らした布の面積分安くして~…………2万Gね」
安くされた割には高い気がするけど、そもそも水着何て自分で買った事無いから基準が分からん。
「湯浴み着にすると思って耐水性だけじゃなく、ある程度耐熱性のある生地を使ったから少し高くなっちゃったのよ。
サービスしても2万は取らないと元が取れないの、ごめんなさい」
そう言えばお風呂で使うんだから、お湯がメインだしサウナとかもあるから耐熱性がそれなりに無いとダメだよな。
頷きながら納得して財布から金板2枚を取り出して渡した。
「2万G丁度ね、何か欲しい物があれば言ってね」
袋に入れた水着を受け取って防具屋を出る。
桜はまたガルドと盛り上がりながら、2人で奥に入って行ったので置いていった。
今日依頼を受ける気は無いけど、訓練になりそうな相手の目星を付ける為にギルドに向かう途中で顔見知りに出会った。