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第35話『初めての戦闘』

前回、初めての戦闘シーンに入るよ~。

と言ったので、予想外になかなか戦闘まで進まないのを、どうにか戦闘の所まで進めたら、そこそこ長めになりました。

ちょっと予定投稿時間ギリギリになったよ。

一応予約投稿にするけど、完成したのが残り数分だった、ヤバかったです。


 一歩踏み込んだ森の中は道らしき道は無く、良くて獣道の様な所はあるが大抵が道無き道と言った感じで、キリエは軽快に進んで行くものの、他3人は悪戦苦闘しながらで警戒なんてする余裕も無い。


 3人だと1人足りないが、紅葉ちゃんだけは足取り軽くキリエの後を追ってるから、3人で間違ってない。



 俺達3人の様子を見ながら、時折立ち止まって先導しているみたいだから見失う事は無かったけど、木の根に何度と無く足を取られつつ後を追っていると、キリエがこちらに手を向けて来た。



「その場で足を止めて静かに、この先に湖があるのですが、そこに複数の気配を感じます……ゴブリンが居る可能性があるので、まずは対象に気付かれぬ様に確認します」


 足音を立てない様に、ゆっくりと木の陰に身を隠しながら奥に進んで行くキリエ……そして後ろから同じ様にこっそり付いて行く紅葉ちゃん。

 おい、紅葉ちゃんアグレッシブ過ぎじゃないか? 歩き慣れてそうな上、物音1つ立てずに進んでるから問題は無さそうだけど。



 しばらく見守っていたが、徐々に姿を見失いそうだったので、見失わない程度に後を追う。


 慎重に進んでいるのか、先程までとは違い進むペースはゆっくりだったので、俺達も出来るだけ物音を立てない様に気を使いつつ追っていると。



 木の陰に隠れつつ手招きをして、奥の方を指差して来た。

 木の陰から陰へ移動しながら指差す方向を伺うと。






 河童が居た。

 緑色の皮膚で2メートルはありそうな大きさだが、頭部には皿の物が付いていて、どう見ても河童にしか見えない。

 5匹居て、その内3匹は皮袋の様な物で水を汲んでいて、残り2匹は手で水を掬っては頭の皿に掛けている。


 うん、河童だよな。


「ゴブリンが5匹ですか……巣へ持ち帰ろうとしている水の量が少々多い事から、どうやら捕まった女性が居る様ですね」


 一瞬耳を疑った。

 女性が捕まっている可能性があると言う情報より、アレがゴブリンだと言う事実の方に驚きを隠せない。

 河童やん、何処からどう見ても河童以外の何者でも無いやん。


 ちなみに、皮袋は1匹で2、3個は持っている……多いのか少ないのか今一分からん。



「水汲みに来ている数が5匹もいるとは、情報よりも数が多いかも知れませんね……ハイゴブリン以上の上位種が、巣を作ろうとしている可能性も視野に入れた方が良さそうです」



 やっぱり元の情報とは違う依頼になりそうな感じらしいが、未だにアレがゴブリンだと言う事が受け入れられず、他の3人の顔を見回す。


 桜は困惑した表情を浮かべているが、残りの2人は真剣な表情で河童もといゴブリンを観察している。



 マジか……アレに違和感を感じてるのは俺と桜だけなのか。




 観察していると、ゴブリン達が地面に転がった太い木の枝の様な棍棒を手に集まり、森の中へ入って行った。


「移動するみたいですね、恐らく巣へ戻る筈なので、まだ手を出さずに跡を付け情報収集を行い、まずは捕まった者が居るかどうか確かめます」


 見失わない為か、言い終わると同時にキリエはゴブリンの進む方へ、早足気味に駆けて行った。



 紅葉ちゃんは、すぐにキリエの後を追って行ったが、残った俺達3人は顔を見合わせて。


「アタシ達は少し離れて付いていった方がいいわね、邪魔になっちゃいそうだわ」

「紅葉さんみたいに出来る自信が無いので、私もその方がいいと思います」


「むしろ、森を歩き慣れてそうな上に物音立てずにあそこまで速く動ける紅葉ちゃんがおかしい」


 満場一致だったので、キリエと紅葉ちゃんが見える位置から後を追う事にした。





  しばらく2人を見失わない様に後を追っていると、止まって居たので少し距離を置いて俺達も止まる。

 2人を見ていると、またキリエから手招きされたので、慎重に近付いて行く。


「見付からない様に注意して下さい。

 仕留めるだけなら私だけでも問題ありませんが、予想以上に大きな規模の巣を作ろうとしている様です」


 途中でキリエから言われた内容から、更にゆっくりと慎重に動いて2人の側まで行くと。




 河童村と言いたい程の数なゴブリンが目に飛び込んで来た。

 木の生えて無い広場の様な所に、雑な作りの木で出来た小屋が4つ立てられ、中心には他より大きめな小屋が立っている。

 小屋の中は分からないが、見える範囲でも二十匹以上は居る。


「まだ小規模ですが、作られて日が浅い事を考えればキングが居る可能性もありますね、最低でもジェネラルは居るでしょう」



 そんなん言われても、どの程度違いがあるのか分からん。

 如何にも河童と言う姿の奴以外に、赤いの河童が居るのが見えるので、多分アレがハイゴブリンで、その上にジェネラルとキングが居るんだろう。


 Bにキングがあったので、Cがジェネラルだろうか? 流石にこんな状態では聞くに聞けない。


「それで、これからどうするのかしら? 女性が捕まっている可能性があるって言ってたけど、何処に居るかどうやって調べるの?」


 桜の言葉にキリエは目を瞑ってしばらく考え込み、目を開くと同時に言葉を発した。


「恐らく、あの大きな小屋に群れのボスが居るでしょう、一番可能性が高いのはそこです。

 しかし他の小屋に居る可能性も否定出来ません。

 そこまで強い訳ではありませんが、初陣の貴方達には少々荷が重いので、ボスの居る小屋は私が担当します。」


 初めての戦闘で、こんな数を相手に突入作戦とか少々不安だが、人助けに呼ばれて初めての人助けだ。

 居ない可能性もあるけど、不謹慎にも若干高揚して口元に笑みが浮かぶ。


 他の3人も落ち着かない様子だが、不安がっている様には見えない。


「私が見付けた場合は壁を破壊して脱出後、貴方達との合流を優先しますが、見付からなかった場合、脱出後はその場で敵を引き付けます。

 貴方達は見付からなかった場合に、私が敵を引き付けている間に他の小屋を探って下さい」



 ん? そもそも居るかどうかも不明だが、捕まってる人が複数居て、他の小屋にも居た場合もあるんじゃないだろうか?。


「大きな小屋に居た時だけど、捕まった人が他の小屋にも分散して居る可能性は無いのかしら?」


「ゴブリンは、捕まえた女性に手を付ける場合、最初に群れのボスに献上します。

 他の小屋にも居る場合は、恐らく手遅れか、手酷く負傷しているので動けないでしょう。

 キングやジェネラル以外のゴブリンに人質に使う程の知能は無いので、ボスを抑えれば終わるまで放置した方が安全です。

 手を付ける前であれば、突入後に動き回られる可能性があるので、貴方達は万が一の時に、群れのボスに近付かない様に捕まった人がいた場合は確保して置いて下さい」


 俺達の役割は捕まった人が居ても邪魔にならない様にする役らしい。

 まぁ戦うのも初めてなのに、守りながら颯爽と敵を倒すなんて真似出来る訳無いから、納得である。


「小屋調べた後はどうすればいいのー? あのゴブリンがどの位強いのか分かんないけど、キリエの側に行くのは流石にボスと戦ってるキリエの邪魔だよね?」


「群れのボスを倒すとゴブリンは統率を無くし逃げ惑う事になり、この数のゴブリンに逃げられるのはまずいですから、私は殲滅するまで数を減らしつつボスを引き付け続けます。

 ジェネラルなら4人共、どうにか相手出来るでしょうが、キングだった場合は経験不足な貴方達では危ないので、出来る限り数を減らす事を優先して下さい」


 初っ端から、個人で対複数の救出&殲滅ミッションとか少し難易度高い気がするが、幾ら丁度小屋が1人1つ分あるとは言え難しい内容なら、もう少し何か言うだろう。

 多分、危ないなら一思いにキリエ1人だけでやるだろうし。


「捕まった人が居て、尚且つ動けそうなら私以外の誰かと合流して下さい。

 流石に1人で守りながら、何匹もゴブリンを相手するのは貴方達にはまだ早いですから」


「何かよく分からないけど、僕一番奥にするね」


 待ちきれなかったのか、紅葉ちゃんはそう言うと回り込む為に森の奥に走って行った。


「んじゃあ、木の陰から一番近いのが桜か? 俺は軽い棒しか持ってないし、楓ちゃんは剣持ってるけど脚力は3人の中じゃ一番早くなってるだろうし」


「そうね~、瞬発力に自信がある訳じゃ無いから楓ちゃんの方が、速く小屋まで行けるでしょうし、椿ちゃんは魔力弾が使えるからアタシより道中のゴブリンを足止め出来るから、結局アタシが一番遅くなりそうね」


 何か微妙な事に、桜は頬に手を当て首を傾げながら俺の案に納得した様である。

 少なくとも女の子がやればまだしも、男がやっても可愛くない。


「では、ちょっと赤いゴブリンが多そうですから、私は右側にしますね? 椿さんは左側をお願いします」


 ペコリ、と頭を下げ右側へ森の中を駆けていった。

 反論を許さぬ即断即決だ、何故か走って行ったのに紅葉ちゃんと比べても遜色ない位、物音を立てずに静かな走りだった。


「もう少し注意事項を詰めてから実行したかったですが、行ってしまったので仕方ありません。

 少し間を空けて突入するので、椿殿も何時でも突入出来る場所まで移動して下さい」


 おっと、余り動く必要が無い桜を除けば、一番動き出しが遅くなってしまった。

 手をヒラヒラと振る桜を横目に、俺も森の中をゴブリンに気付かれない様に注意しつつ、左側の小屋に近い所へ足早に移動した。






 左側の小屋から近い木々の陰に隠れ、小屋の周囲を観察しつつキリエが突入するのを待っている。


 小屋はボロい作りではあるが、高さ3~4メートル、幅は縦横10メートルあるかどうかって位の大きさがある、小屋の周囲には、赤いゴブリンが一匹に緑のゴブリンが3匹居る。


 適当に付けたと思わしき大きな襤褸切れが取り付けられた所が入口みたいだ、微妙に地面に届いておらず下から内部の葉っぱが敷かれた地面が見える。

 入口は丁度、こちらから見える位置にあるものの、入口まで俺の居る木からは4~50メートルはある。


 赤いゴブリンは入口の脇で座って、緑のゴブリンは何をしているのか、小屋の周りを歩いて回っている。



 合図と言える、大きな小屋の方から破壊音がする前に、俺なりに先制攻撃の準備として、木の陰で見えない所に魔力弾をゴブリンの反応を見つつ、1つずつ浮かべて数を増やして行く。




 浮かべた魔力弾が7個になった時、木材を吹き飛ばした様な音がして、小屋の周りに居たゴブリンが慌てた様に音がした方へ目が行き、大きな小屋の方に注意が向いた。



 ゴブリンが動き出す前に飛び出し、入口の赤いゴブリンに向かって走りながら、浮かべた魔力弾を緑のゴブリンに一匹2つの飛ばし、残り1つを赤いゴブリンの顔を狙って先行させる。


 残り10メートル辺りで気付かれたが、緑のゴブリンの方に飛ばした魔力弾が先に命中した。

 命中した魔力弾は、予想以上の威力で3匹のゴブリンの肩や腰辺りを抉り、緑色の血飛沫を飛ばした。

 緑のゴブリンは『クェー!?』と鳴き声を上げ、転げ回る。



 まさかの先制攻撃で、大きなダメージを与えたのを横目に、目の前に先行させた魔力弾が赤いゴブリンの頭部に当たると同時に、手に持った短棍で頭へ殴り掛かった。


 赤いゴブリンは棍棒を手にして構えたが、間に合わず魔力弾を受け仰け反った所に、短棍の打撃を受け倒れた。



 赤いゴブリンには魔力弾の効きが弱めで、肉は抉れず鼻血を出した程度だったが、追撃の短棍による打撃で仕留められたらしい。

 殴った頭部の皿が割れ、茶色っぽい血が吹き出しているので、多分仕留められたんだろう。


 つか、同じゴブリンなのに緑と赤で血の色まで違うのかよ。



 一応小屋端から、近くに他のゴブリンが居ないか確認して、中にゴブリンが居る事も考え入口の横に立ち短棍で入口の襤褸切れ捲って中を覗き込むと。







 何か、木の枝で出来た鳥籠にちっさな羽の生えた妖精っぽいのが居た。


 うん、このパターンは予想してなかった。

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