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第32話『武器の練習』

 8日目


 翌朝、訓練場の手前にある休憩室でキリエが3つの棒状の物(1つだけ棒状とは言い辛いが形状だが)を壁に立て掛けていた。

 楓ちゃんと紅葉ちゃんも居るけど、2人とも気になるみたいで、壁に並べられた物を興味津々に見ている。


「ん? 丁度よかった、昨夜頼まれた物を今運び終わった所です」


 キリエがこっちに気付いて近付いて来て、壁に立て掛けられた棒を指差している。


「とりあえず、基本的な物を用意しました、右から新兵が使う棍に鉄棍、双重棍です」


 棍と鉄棍は普通に木製の棒と鉄製の棒みたいだが、双重棍と言う物だけは見た目からして違う。


 中心部分は片手で握れる程度に細いが鉄で覆われていて、先端に近付く程太くなっている。

 はっきり言って、無茶苦茶重そうだ。


「頼まれた物とは少々違いますが、双重棍は中心から半分にした場合棍棒としても使えるので持って来ました」


 確かに、棍棒が2つくっ付いている感じだ。

 でも、別に棍棒が欲しかった訳じゃないんだが。


「長さの調節もし易いだろうし、普通の棍でいいです」


「え? そうですか……強度的には鉄棍がオススメだったんですが……」


 犬耳を伏せて残念そうに木製の棍を手渡して来た。

 珍しく顔にも残念そうな表情が出ているので、ちょっと申し訳ない気持ちになる。


「最初は軽い木製の方が扱い易そうなので……使いなれたら金属製にしますよ」


 背を向けて残りの2つを手に出ていった、が割と嬉しかったのか後ろ姿は尻尾を振っていて、そこそこ機嫌が良さそうに見えた。



 その後、キリエが戻って来る前に桜が入ってきた。


「あら? ちょっと遅れたと思ったんだけど、キリエちゃんはまだなのかしら?」


「いや、俺用に持って来てくれた物を戻しに行っただけだから、すぐに戻って来るんじゃないかな?」


 ちょっと遅いけど。

 何処まで行ったんだろうか? まさか元々あった所まで行ったとか?。


「……ソレちょっと長過ぎじゃない? 椿ちゃんの頭2つ分は長いわよ」


「あ~、子供の身長じゃ長過ぎるから、最低でも半分位にする予定だよ」


 多分長さ的には普通の身長の人と同じ位の長さだが、子供の姿になっている俺には長過ぎである。

 ちなみに双重棍は更に長かったので、確実に扱い切れないし、半分にしても両手持ちになりそうな程度にデカかった。



「桜殿も来ましたか、何を使うか、もう決まりましたか?」


 キリエが戻って来て早々に、桜に話し掛けた。


「鞭と悩んだけど、盾を使いながら扱うのは難しそうだし、やっぱり盾をそのまま使うわ」


 絵面的にも安心だよ、オネエな桜が鞭とか、精神的に慣れるまで時間が掛かってしまいそうだ。


「分かりました、それでは桜殿には盾を幾つか用意させて頂きます」


「そう言えば僕達には無いのー?」


 紅葉ちゃんが手を上げる。

 確かに、幾つか用意するなら楓ちゃんや紅葉ちゃんにも選ばせていい気がするけど。


「紅葉殿は自分で近距離用の武器を用意しましたし、弓も魔装具と同じ種類がいいですから選ぶまでもありません」


 キリエの言葉に、紅葉ちゃんは大袈裟に驚いては落ち込む動作をしている。

 何か凄くわざとらしい。



「楓殿は言うまでも無く、魔装具と同じ長さの剣を使い慣れて貰う為に、今まで練習の時に使っていた物を使用して頂きます」


「そうなんですか……他の物も少し見てみたかったですけど、仕方ないですよね」


 楓ちゃんは少し残念そうな表情だが、余り気にしてはいないらしい。


「私は今から桜殿に渡す盾を見繕って来ますので、先に始めていて下さい」


 1度頭を下げて、また出て行った。

 行ったり来たりと、忙しないな。



 それぞれが魔力制御の練習をして、昼になる直前に、キリエが何やら色々な盾を抱えて戻って来た。

 何か山盛りで凄く重そうに見える。


「すみません、少々遅くなりました」


 重かったのか、割と雑に盾を地面に下ろして頭を下げてきた。


「アタシの為の物を持って来て貰ってるんだから、少し位遅くなっても構わないわよ」


「おぉ~、何か色々あるね~、おっきいのからちっさいのまで一杯だよ」

「椿さんのと比べると倍以上ありますよ、盾ってこんなに種類あるんですね」


 地面に置かれた盾は、軽く見ただけで10個近くの数がある。

 ほんと、数が多いな~。


「一応一通り持って来ました、お好きな物を選んで頂いて構いませんよ」


 キリエは若干、自慢気に胸を張っている様に見える。

 なにせ、犬耳が忙しなく動き、前から見て尻尾を左右に振っているのが見えるし、何より少し胸を張っただけでも、只でさえ大きな胸が更に強調されて見える。


「こんなにあると迷うわね……幾つか試してみてもいいかしら?」


「試すなら昼飯の後がいいんじゃないか? 流石に今からすると昼過ぎるだろうし」


 もう昼なので、キリエが返答を返す前に割り込む。

 武器の練習は午後かららしいし、多分午後にしっかりやった方がじっくり選べるだろ。


「あぁ……すみません、もうこんな時間何ですね、戻すのは練習が終わった後にするので、実際に試すのは昼御飯を済ませてからにしましょう」


 地面に置かれた盾をそのままに、全員で昼飯を食べに、城の方に戻った。







「まずはどれから試してみようかしら」


 昼飯を済ませて戻ると、早速桜が地面に置かれた盾を物色している。


 盾は、四角や三角に丸等様々な形の物が小さな物と中位の物の最低2種類はある。

 一部全身を覆う程大きな物が2つ程あるが、凄く重そうだ。


 2人共気になるのか、楓ちゃんは剣を取って来てすぐに、紅葉ちゃんはガントレットを着けた状態で弓を片手に持ち矢筒を肩に掛けて、遠巻きに桜を見ている。


 ちなみに俺は、キリエに頼んで棍を半分に切って貰った。

 まぁ、割と大雑把な剣で叩っ斬ると言う、若干雑な方法で半分に切った後、形を整える為に鑢で削りながら見てる訳だが。



 桜は幾つか実際に盾を持って振り回したりしながら、結局小さな丸い盾にした。

 本人が言うには『大きいのはちょっと重くて使い辛いし、武器代わりに使うには小さい方が使い易そうなのよね、それに丸いのが1番可愛いじゃない?』だそうだ。


 その日の練習は、俺だけキリエとみっちり練習して残りの3人は交代で戦って終わった。


 俺だけキリエとマンツーマンだったのは、今まで近接戦闘の練習も経験も無いのは俺だけだったからだそうだ。


 いや、こう見えて格闘技自体は少ししてたから、全くの素人じゃないんだが。





 まぁ、だからと言って短い棒持って戦う事そのものは全く経験無い上、キリエと楓ちゃんがやってた様な超人戦みたいなのが出来る訳も無く、普通にズタボロにされたんだけどね。

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