第2話『フィーア』
気が付くと締め切られた空間なのに明るい場所の中心に佇んでいた、真っ先に目に入ったのは石造りで出来た壁、足元に目を向けると石畳に彫られた魔方陣らしき模様の溝があった。
周囲を見渡すとランプの様な火は勿論、電灯の様な明かりとも違う不思議な明かりが灯っている。
見上げると今居る所がドーム状の建物である事が分かった。
「何も無いし誰も居ないな……」
(……こう言う場合って召喚した人が居たりするんじゃないのか?)
真後ろに木造の扉があるのは分かったが周囲には何も無く人っ子1人見当たらない。
何か聞こえないかと、耳を澄ませても物音一つ聞こえない。
(あの扉から出てみるしか無いか)
近付くと思ったよりも大きく4、5メートルはありそうな扉で金属部分も合わせてかなり重そうな印象を抱かせた。
「鍵とかは掛かって無さそうだけど……開けられるのか? コレ? 無茶苦茶重そうだぞ」
扉に手を掛け軽く押してみると少し扉が開いた。
(あ……割と軽い)
そのまま押して開けると窓も扉も無い狭い部屋の中央で静かに佇むメイド服らしき服装の女性が目に飛び込んで来た。
(え? ……メイド? って言うか微動だにしてないんだけど、目を閉じてる訳じゃないし見えてる筈だよな?)
「あの~聞こえてる? 人形……じゃないよな? 多分……もしも~し」
声を上げて近付いても反応は無く目の前で手を振っても瞬き一つせず動かない。
他に何かないかと部屋の中を見渡しても壁掛かった謎の灯り以外は何も見当たらなかった。
(出入口無しでこのメイドさんだけ? どうしろと……)
しばし途方に暮れて立ち尽くしていると、再度メイド服姿の女性が目に入った。
未だに微動だにせず佇んでいる。
(このメイドさんをどうにかしろって事か? エロい事とか? ……流石にそれはねぇか)
メイド服姿の女性に近寄り頬を指で軽くつついてみた・・・その瞬間。
「異質魔力所有者の接触を感知しました」
「うぉっ!?」
唐突に無機質な声を発したメイド服姿の女性に驚き飛び退いて離れた。
更に続けて喋るメイド服姿の女性の感情の無い無機質な声が聞こえてくる。
「──異世界人召喚術式の転移による魔力残留痕を確認──対極魔装具補助用アンドロイドコードα04フィーア起動します」
言い終わるとメイド服姿の女性がゆっくりお辞儀をして、先程とは違う感情を感じさせる声で話し始めた。
「初めまして、私は対極魔装具【対極の首飾り】の補助兼異世界人の魔法世界での生活等をサポートをさせて頂くアンドロイドのフィーアと申します」
フィーアの言葉を聞き椿は呆けた様に固まっていたが、気を取り直すと話し掛けた。
「え~っと……何から聞けばいいんだ? とりあえずフィーアさんって呼べばいいのかな? アンドロイドって事は人間……と言うか生物? じゃないの?」
「お好きな様にお呼び下さい。 私は魔法炉を動力に魔力を使用して動く機械人形に分類されます」
椿が悩みながら聞いた内容を言い終わったと同時に間髪入れずフィーアは返答してきた。
フィーアの言葉に首を傾げる。
「機械人形? さっき頬を触った時に柔らかかったし冷たい感じはしなかったんだけど?」
「私達の様なアンドロイドは魔力伝達性の高い金属製の骨格に最も人の皮膚に近く魔力浸透率の高い魔獣の表皮を使い魔法炉からの魔力を浸透させる事により人に近い質感を持たせています。
なので分類上は機械人形に属しますが通常の機械人形と区別する為、私達はアンドロイドと名称付けられています」
先程同様すぐさま返答が返ってきた、しかも割と長々と。
椿が今まで読んできた小説から何となくイメージは出来るけどよく分からない単語混じりの内容に『魔獣とか居るんだ……しかも魔力浸透率とか言う言葉があるなら何となく魔獣も魔法使えそう』と色々と考え込んでいると
「私達アンドロイドは人を人工的に再現する事を目的に作られたので性行為を行える生殖器も再現していますが……使用されますか?」
椿は一瞬固まると勢いよく首を横に振って慌てて言葉を発した。
「いやいやいや!使わないから!?いやしたくない訳じゃなくてむしろしてみたいけど……って言うか唐突に何言ってんだ!?」
(無表情なのに笑われてる気が……ってよく見るとホントに微かに笑ってる!? さっきまでの無表情は何処に行った!?)
「それは残念です」
フィーアが微笑みを浮かべたまま短く返した言葉には何処か棒読みっぽさを感じさせる。
「そ、それより何でココって出入口が無いんだよ、この部屋も向こうの部屋も窓1つ無いぞ」
フィーアの視線に気まずさを感じ周囲を見渡しながら疑問に感じていた部屋の事を聞いてみた。
「召喚を行うこのフロアは侵略者や魔獣等の干渉を受けない様に地下深くに作成され壁面には魔法による対物処理がされ外側に魔力伝達性の低い金属で覆う事で他者からの干渉を最小限にする為の対策が施されています」
聞いた内容に対して『割と徹底してるな』と感心していたが、途中である事に思い当たると固まり、ゆっくりフィーアの方へ顔を向けた。
「ち、地下深くで、魔法妨害しそうな金属で覆われてるんなら……どうやってココから出るんだ?」
「出られません」
「冗談です。
1ヶ所だけ小さな穴が作られてるので、そこに転移を補助する対の魔道具を使い穴からケーブルを通す事で転移する事が出来ます」
時が止まったり動いたりする様な感覚を味わった気分を感じつつフィーアに視線を向けると。
(あっ……絶対からかわれてるな、さっきより口元緩んでるし、ちょっと見ただけで笑ってるって分かる位に緩んでるよ)
「とりあえず出られるんだな」
「はい、私は女王ミリスティア様の元へご案内する為にココに配置されています」
その言葉を聞いて内心『最初に言えよ』と思ったが自分から他の事を色々と聞いたので口には出せなかった。
「ならさっさと案内してくれ……」
「では転移を開始します」
急に床に魔方陣らしき模様が浮かぶと同時に勢いよく天井まで上がると部屋から2人の姿が消えた。
最初の内は投稿した後もちょこちょこ修正を加えながらやりたいと思います
ちなみにフィーアの容姿自体に全く触れてないのはワザと
基本登場予定の他のアンドロイドも言葉から感じる性格的に要素や【女性・男性・少女・少年】等の様な見た目の印象から感じる年齢層や身長
そして主人公の椿が感じた雰囲気等しか描写する予定はありません
他の登場人物はある程度容姿の描写を書く予定