第28話『ギルド登録者の呼称』
格好の理由は分かった、だがしかし、気になる事がある。
それは……。
「その格好普段着じゃないよな?」
そう、ギルの言ってる事を真っ直ぐに受け止めた場合、寝間着の様に余り人目に触れない時に使う為の格好では無い筈なんだ。
何せ男らしさや誇り高い男としての象徴なんだから。
「これは我輩の仕事着である」
「ちょっとマテ、マジか、マジで仕事着なのか」
あり得ん、誰がどうみても怪しさ爆発な人物じゃねぇか、誰がこんな奴に仕事頼むんだよ。
「我輩これでも討伐者ランクAなのである、討伐する時にこの姿で行くと、気合いの入り方が全然違うのである」
防具は無しか! 気合いとか言う理由で褌一丁で戦うとか、バーバリアンかよ。
「他にも守護者上級でもあるのである、しかしSや皆伝の試験を合格しても何故か昇格させて貰えないのである」
こんな変態的な格好してるからじゃないだろうか、と思いつつも多少は原因が気になるが。
先程から出てきている、討伐者だとか守護者等と言う単語の方が、更に気になる。
やっぱり言葉通りに、討伐や護衛の登録者の呼び方なんだろうか。
「昇格試験を受ける度に、各支部のギルドマスターから『せめて依頼人と会う時位は服を着ないと昇格させられない』と怒られるのである」
当たり前だ。
依頼を回す側としても、褌一丁で仮面被った怪しい人物を最高ランクの登録者として紹介するのは、普通に避けたいだろう。
と言うより、幾ら腕が良くても仮面に褌一丁の大男が依頼を受けて来た、と訪ねてきても依頼人も困るだろ。
「ギルさんは他の方が着られる様な服で、依頼人の方に会う様にしなかったんですか?」
「我輩の正装であり戦装束である、この姿でなければ相手に失礼なのである」
その格好は失礼以外の何物でもない。
ほら、尋ねたホミュも呆れて……呆れ……あれ? 何か感心してね?。
何やら満足気に頷いてるんだけど、どこら辺に関心する要素があった!?。
「人から言われても自分を曲げずに貫くなんて凄いです」
言葉にするとカッコいい感じだけど、そこは曲げようぜ。
郷に入っては郷に従えって言うだろ、拘り的なレベルの部分は従っとけよ。
「最高ランクには試験合格以外にギルドマスターからの承認が必要なのであるが、どこのギルドに行っても、ギルドマスターの承認が得られずに不合格になるのである」
「きっと、ギルさんの事を認めてくれるギルドマスターも居ますよ、諦めずに頑張って下さい」
居ねぇよ。
細かい事は知らないけど、一部門で、とは言え最高ランクの登録者がこんな奇抜で変態っぽい格好の奴とか、通す訳無いじゃん。
実際はどうなのか分からないけど、Sや皆伝の合格を承認したギルドマスターの名前が付いて回る場合とか、更に承認したくないわ。
って、何かギルが号泣し始めた!?。
「我輩を応援してくれたのは、ホミュ殿が初めてで、感動したのである!」
「いえ、私だけでなく椿様も応援してますよ」
うぉっ! 勢い良く顔をこっち向けんな、肩を掴んで顔近付けんな。
って言うか、肩を掴む手の力強いっての、肩が痛いわ!。
「本当なのであるか椿殿!」
「いや、ギルが思うがままに頑張れば、認められる日が来る事もあるんじゃないかなーって程度だよ」
投げやり気味に答える。
流石に否定的な事を正直には言えない、と言うか言ったら力加減間違えて肩砕かれたりしそうな威圧感があって、否定するとか絶対無理。
「我輩の理解者と2人も会えるとは……今宵は祝いである! 2人の分も我輩が奢るのである! どんどん頼むといいのである!!」
「そ、そんなっ! 自分達の分は自分で払いますよ」
「気分良く払ってくれるならいいんじゃないかな」
ホミュは慌てた様子で言うが、うん別にいいんじゃね。
料理の値段とか見た目や味とか気になってたけど、このおっさんの性であんまり頭に入ってこないし。
実は席に付いて少しした辺りで、店員が注文を聞きに来たり、ちょっと前に料理が来たりしてたけど、このおっさんの性で殆ど記憶に残ってない。
「椿殿の言う様に、気にせず奢らせて欲しいのである、何か聞きたい事は無いのであるか? 2人が聞きたい事なら我輩何でも教えるのである」
テンション上がり過ぎじゃなかろうか、表情は仮面で見えないけど、こんな場所じゃなければ踊りだしそうな位にご機嫌なんだが。
まぁ、ギルドで高ランクの登録者から話が聞けるんだから色々聞くけど。
「じゃあ、さっきの話で出てた、討伐者とか守護者って何なんですか?」
「ギルドに登録した者が考えた呼び名であるな、ギルドでは討伐Aや護衛上級等と呼ぶのである」
やっぱり割とそのままだったらしい。
「私、そんな風に呼んでるの初めて聞きました」
「ギルド登録者同士が呼ぶ位しか使われてないのである、ギルドに登録してない者には馴染みが無いのであるな」
仲間内で使う名称と言う事なんだろう、他にはどんなのがあるんだろうか?。
「それ以外はどんな呼び方があるんですか?」
「うむ、討伐の討伐者や護衛の守護者以外にも、調査は探索者、採取は収穫者、運搬は運び人と呼ばれているのである」
割とそのままな呼び方が多いみたいだ。
「納品は何を専門にしているかで、呼び方が変えているらしいのである、魔道具等を専門にしている者は魔具士、消耗品を専門にしていると錬金術士と名乗っているのである、変わり者で武具を専門に納品している者は鍛冶師と名乗る者もいるのである」
色々居るんだな。
名称だけ聞くと、高ランクだと普通に自分の店を持っていてもおかしくない気がする。
「力仕事は高ランクになると、勝手に二つ名が付くのであるが、二つ名持ち以外は他の者からは力自慢と呼ばれているのである」
「二つ名は聞いた事があります! 小さな巨人とか謎の空間使いって人がいるって」
あ~、小さな巨人は何となくイメージ出来るけど、謎の空間使いってなんだ。
ソイツ普通に新種の魔法使いじゃね? 何となく二つ名だけ聞くと空間魔法とか使ってそうな感じなんだが。
「その2人は有名であるな、力仕事の皆伝である2人は小さな体でまるで巨人の様な力を発揮したり、魔法の様に大きな物を一瞬で運ぶ事から同業者は、そう呼んでいるのである」
力仕事の皆伝は半端ねぇな、何でギルドで日雇いみたいな力仕事やってんだよ。
「精密作業は大半が専門にしている業種の職人と名乗っているのである、例外は業種を問わずに依頼をこなす、器用貧乏と呼ばれる上級1人に細かい作業ばかりの依頼を受ける、細工師と呼ばれる者位なのである」
「細工師は知ってますよ、城でも細かい仕上げが必要な時に呼ばれてました」
本当に何で日雇いみたいなギルドで働いてるんだろう。
どう考えても細工師とか、割と引き取り手多数だと思うんだが。
「雑用は、普通は何でも屋と呼ばれているのである、今は何でも達人と呼ばれる皆伝の登録者がいるのである」
「何でも達人って言われてる人は城で仕事が忙しい時は呼ばれてるみたいですね、ギルドから来た人だって聞いた時は、何で城で働かないんだろう? って思う位に頼られてました」
ギルド頼り過ぎじゃなかろうか、何で城から頼む程の奴がそんなに多いんだよ。
「二つ名持ちは他にも居るのであるが、呼び方はその位なのである、他に何か聞きたい事はあるのであるか?」
あぁ、えっと。
「ちょっと待って下さい、今考えてます」
聞きたい事まだあるけど、予想外な事が混じってる性で考えが纏まらない。
「ギルさんと仲がいいギルドの方の話が聞いてみたいです!」
元気良く聞くのはいいけど、ギルはその言葉を聞いた途端固まって、次の瞬間には目に見えて落ち込んでる。
あぁ、このおっさん友達居ないんだな。
何か最近主人公の心の声主体で、その場の状況の描写的な部分がどんどん薄くなって来てます。
どうすればいいんだろう。