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第25話『ギルド=冒険者とは限らない』

完成が今日の数時間前。

ギリギリだったわ……。


 大きな建物が見えて来た。

 他の建物とは違い、何倍も大きくデパートレベルで、イメージよりも規模がでかい。


「あの大きな所がギルドです」


 指し示された辺りを見ると、入り口が幾つもあり、それぞれで出入りしている人の種類が異なっている気がする。


「何であんなに何個も入り口があるんだ?」


「あっ、椿様は知らないんでしたね、ギルドと言うのは色々と依頼受付があって、それを分けているんですよ」


 『ほら看板に書いてあります』と指差された先に【雑用】と書かれた看板が……雑用って雑だなオイ。


 他の入り口を見ると、討伐・調査・採取・護衛・運搬・納品・力仕事・精密作業等々と様々な事が書かれている。

 何やらイメージと違い日雇い版の職安や派遣みたいな印象を受ける。


「雑用は条件や制限が無いので、主に子供達がお小遣い稼ぎに受けたりしてます」


 色々気になって聞いた所。


 ・登録すれば依頼を受けられるが、雑用以外は最初に講習を受けないと殆どの依頼が受けられない。


 ・討伐や護衛等は定番のランクがあり、下はFからSまで、Fはマトモに受けられる依頼が無く、講習を受けるとEに上がる。


 ・それ以外は素人から始まり、下級・中級・上級・皆伝とランクがあって、同じく講習を受けると下級に上がる。


 ・講習は銀貨5枚、つまりは500Gで受けられるが、最後に試験があり合格しないとランクは上がらない。


 ・更にランクを上げるには、依頼達成数が一定数ある上で昇格試験を合格する必要がある。


 ・大抵の場合、下のランクはちょっとした知識や力があれば出来る内容なのでCや中級までは見習い扱いで、そこまで上がれば見習い卒業。


 ・長い事見習いから卒業出来ないと、他を進められる……と言うか今までに受けた依頼の評価によっては降格もありえるらしい。


 ・依頼先で雇ってくれるか判断して貰ったり、たまに依頼先から今後も働かないか打診されたりするらしい。


「何か色々あるんだな~特に最後、完全に人材集めに活用されてるじゃん」


「街の人も仕事を探すならまずギルド、と言う感じですね、私も色々経験して自分に合った仕事を探す為の所って印象ですから」


 この世界ではギルド=職安的な部分があるみたいだ、それに加えて職業訓練とか資格習得の為の所でもあるんじゃないだろうか。


 それにしても、あんなにあるんじゃ何処に入ればいいやら……とりあえず討伐とかだろうか?。


「まずは総合受付に行きましょう」


 腕を掴まれて引っ張られた。


 総合受付とやらは反対側にあるらしく、ギルドの大きな建物の外側に沿って長い事歩く羽目になった。


 見えて来たのは、最初に見た入り口とは違いかなり大きな入り口で、イメージ的にはこっちが正門で、反対側は裏口と感じる程に大きさや作りが違う。


 トラックが2、3台は通れそうな大きさの入り口で、真ん中にデカイ柱が立っていて上部にはデカデカと【ギルド総合受付】と書いてある。


「総合受付は依頼を頼みたい人や、ギルドに登録したい人をメインにしていますが、案内所の役割も兼ねているので椿様の知りたい事も聞ける筈ですよ」


 あぁ、うん……ヤバい、とりあえず見てみたかっただけで、聞きたい事とか全く考えて無かったとは言い難い。


 手を引かれて中に入るが、ギルドの中を見る余裕等無く、聞きたい内容を考えていると受付らしき所の1つに座らされていた。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


 カウンターの向こうから受付の人らしきエルフっぽい人が声を掛けて来た。

 この街の店で働く人エルフっぽい人多いな。


 そんな事を考えていると。


「ご用件はなんでしょうか?」


 首を傾げて困惑の表情で再度尋ねられた。


 『やべっ、まだ考えが纏まって無い!?』


 そう内心慌てつつも、とりあえず何か喋らないと、と考え思い付いた切り出し方から口に出し始めた。


「ぎ、ギルドが無い所から来たのでギルドの事を全く知らず、少しはこちらのホミュさんから教えて貰ったんですが、どうせなら職員の方からギルドの事を教えて貰おうと思って来たんですよ!」


 焦りが出た性で息継ぎ無しに言い切った、大丈夫だよな? と思いつつも冷や汗が止まらない。


「ギルドが無い所ですか? こんな時期にそんな方が来られるなんて……もしかして王宮が何処かから呼ばれたと言う援軍の方でしょうか?」


 一瞬固まった、もしかして別に普通に異世界から呼ばれたとか言っても、何の問題も無かったんだろうか。


「何処かから現れた侵略者から襲撃を受けた後、王宮が秘伝の魔法を使い援軍を呼んでいる、と発表しているので国民の大半は知っていますよ」


 今まで一応言い訳を考えていた苦労は何だったんだろうか。


「ですが、流石に何処から来られるのかは分かっていませんよ、そこまで公表はされていませんから」


「え~っと……とりあえず、その援軍として呼ばれたのでこの国にあるモノは殆ど知らないから、気になったギルドの事を教えて貰いに来たんですが」


 脱力感に襲われつつ再度用件を切り出した。


「では、まずは新人登録者への説明と同じ所からさせて頂きます」




 ・ギルドに登録するのに費用は必要無い、しかし登録しただけでは雑用やちょっとした手伝いレベルの依頼しか出来ず、依頼を一定期間受けない状況が続くと登録取り消しの上、再登録には審査があり、審査を通らなければならない。


 ・ギルドに登録しても義務や制約は発生しないが、問題を起こした際にはギルドからも何らかのペナルティがあり、悪質な場合には登録抹消の上で無期限の再登録資格剥奪の処分が下される。

 勿論、問題を起こした際の国から処分とは別であり、犯罪を犯せばギルドから上記の処分の他、国からの処罰を受ける事になる。


 ・ギルドに登録すると依頼として様々な仕事が行えるが、正規の仕事の場合は直接雇われる場合と比べて報酬から何割か仲介料として引かれる。

 代わりにギルドを通した依頼は必要なランクさえ満たせば誰でも受ける事が可能。


 ・最低ランクの依頼以外は基本報酬+成果報酬と言う報酬形体になっており成果報酬は仲介料の対象から外れている為、成果報酬の方が報酬がいい。

 そして依頼の大半がノルマを達成すれば最低限の基本報酬を貰えるが、ノルマ以上の何らかの成果を出さなければ依頼者からの評価も下がる。


 評価が高ければ成果報酬以外に追加報酬が出される場合や、再度依頼を受ける際に報酬が割増される優遇指名が出される場合もあり、稀に正規雇用の誘いがある場合もある。

 勿論、評価が低ければ報酬が下がったり、再度依頼を受ける際に報酬が下がる冷遇指名をされる場合もあり、稀に依頼を受理出来なくなる禁止指定を受ける場合もある。


 ・登録取り消しまでの期間は一月、何らかの長期依頼を受けている場合や、依頼を受ける事が出来ない状態等の理由での申請があった場合を除き、一月依頼を受けていない状況になった際に登録取り消しになる。


 ・ランク以下の依頼を受ける事は可能だが、余りにランクに見合わぬ依頼を受ける事が多い場合、ギルドから特定種の一定ランク以下の禁止を出される事がある。

 勿論、特定種以外であれば一定ランク以下の依頼を受ける事は可能。


 ・同ランクの依頼を20以上達成していれば昇格試験を受ける事が可能。

 昇格試験を受けるにはEが1000G、それ以降は1つ上がる度に倍の費用が掛かり、下級は2000G掛かり1つ上がる度に3倍の費用が掛かる。

 3倍の60以上を越すと依頼者の評価がいい場合のみ、昇格試験を強制的に受ける様にギルド指定依頼が出される。

 昇格試験へのギルド強制依頼は、新規に依頼を受けられなくなるが、ギルドからの依頼になるので費用が無料で、逆に報酬が出る。

 ギルド強制依頼の報酬は成功報酬で受けるランクの費用と同額、落ちた場合は半額出される、しかし同ランクで2度目のギルド強制依頼の場合は成功報酬のみとなる。


 ・ギルド強制依頼は昇格試験を受けずに依頼を受け続ける、ランクに見合わぬ成果を出している登録者を適したランクにする為のもの。

 同時に他の登録者を配慮したものであって、昇格試験以外へのギルド強制依頼や、他者からの強制依頼が出される事は無い。



「以上になりますが、何かご質問は御座いますか?」


 そう受付の人から聞かれるも、割と長かったので全く思い付かない。

 別に混乱はしないが、そこまで記憶力がいい訳じゃないから、今他に聞くとさっきの説明を所々忘れそうな気がする。


「今は特に思い付かないので、聞きたい事が出来た時にまた聞きに来てもいいですか?」


「はい、構いませんよ、今回のご用件は以上でしょうか?」


 質問は特に無いから退散しようと席を立ったが、途中で思い付いた事があったので振り返り。


「登録してなくても、どの様な依頼があるのか見に行くと言うのは大丈夫ですか?」


「依頼を受ける事は出来ませんが、それでよろしければ直接見に行かれる分には問題ありません」


 思い付いた事を確認した所で、軽く頭を下げて建物を出た。

 さぁ、見に行こ……反対側だから遠いな。

 ちょっと憂鬱になった。

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