第18話『5人目の異世界人』
俺達は最初に女王のミリスティアと対面した謁見室らしき所に居る。
俺が見た時と同じ様に女王は王座に座り両隣にギュンターとキリエが立って居る。
ちなみに俺達は壁際に立っている、何か兵士が立ってる感じの場所で微妙な気になるが、相手が俺達と同じ異世界人だけとは言え、こんな場面で王座の側に立つ様な立ち位置にされても困るから良かった様な、本当に微妙な気分だ。
そんな事を考えてる間に、扉が開いてサヴァンが入ってきた。
その後ろから入ってきたのは……。
腰が曲がり杖をついたヨボヨボで禿げた爺さんだった。
『マジか……』と呆気に取られている内に、サヴァンが片膝を付き頭を下げて喋りだした。
「こちらの呼び掛けに応え異世界より新たに召喚された、最後の異界の者を連れて参りました」
「お疲れ様でした、最後と言う事は召喚の儀の為に込められた魔力は尽きたのですね」
「はい、魔方陣からはもう、魔力の輝きは失われました」
あのお爺さんで最後みたいだ、最後の最後で外れを引いた感がある様に感じるのは、気のせいだろうか?
「長い間休まずに御苦労様でした、余り睡眠も取れていないでしょう、貴方は一足先に休んで下さい」
「お気遣い頂き申し訳ありません、お言葉に甘えさせて頂きます」
サヴァンは立ち上がり、一礼して去って行った。
いつ来るか分からない相手に備え不眠で待っていた様だ、見た目は寝不足に見えなかったが、何日寝てないんだろうか?。
「こちらの呼び掛けに応えご来訪頂き感謝致します。私は魔導国家アーカイブの女王ミリスティアと申します。貴方のお名前を聞かせて頂けますか?」
「儂は菊次郎、唐竹 菊次郎じゃよ、この老いぼれでも力になれるのなら、喜んで力を貸すぞい」
少し目を離した隙に微妙に話が進んでいた。
それにしても、何か不安だ……女王が説明に入ったが、一度聞いてるので聞き流して観察してみた。
菊次郎爺さんは、背が低く全体的に細い、腰が曲がってる性で更に小さく見える。
頭は髪の毛一本生えてない、どう見ても戦えそうな気がしないが、大丈夫なんだろうか?。
爺さんが印象的過ぎて見過ごしていたが、後ろに妙齢の女性が居る。
恐らくフィーアの様なアンドロイド何だろうが、何故か着物を着崩している。
凄く色っぽい、と言うかエロい。
「彼等が菊次郎様より先に来られた方達です」
ビクッ! とした、いつの間にか話は終わっていたらしい。
慌てて頭を下げるが、よく考えたら軽く下げる程度で良かった気がする。
「お主の様な幼い子供までおるとは、関心するべきか、それとも悲しむべきか、悩ましいの」
「いや、魔装具とやらの性でこんな姿になっただけで、こう見えて二十歳過ぎです」
反射的に言葉が漏れた、目の前の爺さんを除けば、一応異世界組の中では最年長だから、割と気にしてる性で咄嗟に出てしまったみたいだ。
爺さんは目を開いて驚いていた。
普通驚くよな……まぁ、それよりも気になる事を言っておく。
「所で、菊次郎さんには先に魔装具を渡して置いた方がいいんじゃないか? 確か、戦うのに適した姿になるんだよな? 今のままだと、練習する場所に行くのも一苦労そうな感じなんだけど」
杖をついたヨボヨボの爺さんなら、流石に城の外にある魔法練習の場所までは、時間が掛かりそうな気がする。
「む? そうじゃのぅ、確かに体も随分と衰えておる様じゃし、ただでさえ遅い時間じゃから、戻るのが深夜になってしまいそうじゃな」
そう、既に夜ご飯を食べた後なのである、明日にするのならまだしも、行くのなら余りゆっくりとは出来ない。
「女王様、菊次郎殿にはこの場で渡してもよろしいですかな?」
「か弱き御老人をこのまま歩き回らせるのは失礼でしょうね、この場での変身は許可出来ませんが、渡して着けるだけなら構いません」
女王の許可を受けて、ギュンターが首飾りを菊次郎爺さんに渡した。
菊次郎爺さんは首を傾げていたが、ギュンターから軽く説明を受けると、首飾りを着けた。
「ぉぉ……おぉぉぉっ! 漲ってくるぞいっ!!」
菊次郎爺さんが、そう叫んだ瞬間、光を放ちながら服が弾け飛んだ。
えぇ……光の性で何かよく見えないけど、シルエットが明らかに数倍に大きくなっている、と言うか服が弾け飛ぶとか、どんな変化してんだよ。
光が収まり、そこには……
褌一丁の二メートルを超える程、大きな巨漢の男性が居た。
「この漲る力は若い頃を思い出すわい」
いや、アンタの若い頃って、どんだけだよ。
頭が禿げているのはそのままだが、丸太の様に太い腕、更に太い脚、胸板は分厚く腹筋は遠くから見てもはっきり割れているのが分かりそうな程だ。
元の老人の姿から考えると、顔まで若々しく変わっている。
別人過ぎるやろ。
8月8日から3日間程時間が全く取れないので、一応少し早めに更新。
この話が完成したのは割と早めなので、それまでに筆が進めば9日の日曜辺りにもう1つ予約投稿しておくかも知れません。
ちなみにこの爺さんは、色物担当、はっきり言って主人公よりこの爺さんの方が特殊な変身になってます。