第117話『魔法泳法と言えなくもない』
前回はトチって完全に忘れてました。
筆も大して進まなかったので、2回分でも無く普通に一回分です。
失敗により数メートルの高さはある水上に顔を出した状態で、プカプカと浮いた形になったので、割と元の所まで戻る方法に苦労した。
そんなに泳ぎが得意じゃないのに素潜りで下まで行くのは難易度が高い。
何より、端っこは水が無いので万が一飛び出たら、数メートルの高さから頭を下にして落下する可能性がある。
まぁ、解決策として一思いに浮かんだまま端っこまで移動して、一気に飛び降りると言う荒業で元に戻ったりしたんだけどな。
魔装具で身体能力が上がってるからこそ出来る、ちょっと荒めの脱出方だ。
流石に頭から落ちる形では着地出来るかどうか分からないが、最初から自分で飛び降りる場合は楽勝なのだ。
子供の頃、2メートル前後位の高さから飛び降りると言う、ちょっと危険な遊びをやれてた位だし、今の身体能力なら出来るのは当然だよね?。
さて、水中で呼吸を出来る様な方法に失敗した訳だが、案はまだ尽きていない。
次の案は、口の中に小さな魔方陣を作り【空気】と書く事で酸素ボンベ的な効果を期待した方法だ。
文字魔法単体では使い捨てであり一度限りだが、魔方陣を使えば維持している間は使い回しが出来る。
水中で維持しつつ、酸素が欲しい時に魔力を込めれば口の中で空気が発生する……筈。
今度は失敗した時も考え、頭だけを水の中に入れた状態で実験した。
何度か試した結果は大半が成功。
しかし、何度か流し込む魔力量の調整に失敗して、水中で口から【ゴプァッ!?】と言う感じに生成された空気の量が多過ぎて、大量の気泡を吐き出して死にかけた。
肺が破裂するかと思ったわ。
兎に角、調整を失敗しなければ普通に酸素ボンベと同じ様に使える方法を見つけ、早速水の中に飛び込んだ。
まぁ、ぶっちゃけ水の中に入ってもそんなにやる事がある訳も無く。
特に泳ぐのが好きな訳でも無いので、感想としてはちょっと楽しかったかな~? と言う程度である。
横の壁が無い事以外は深いプールとそんなに違いは無いしね。
違いと言えば、飛び出ない様に注意さえしていれば、側面の何処からでも顔を出せる事と、水面に顔を出せば高い位置から見下ろす事が出来る位だ。
側面はまだしも、高い位置から見下ろせると言うのは、わざわざ水中からやる必要が無いので、そんなに楽しくは無い。
普通に高い所に行けば見れる事を水の中でやっても、楽しいのは最初だけだ。
レンは割と楽しそうに水中を飛び回っていたけど。
飛び回っていると言う言葉通り、何らかの魔法を使っているのか、泳いでるとは思えない速さで動いている。
手は下に真っ直ぐ下ろしているし、脚も真っ直ぐのまま動かしてる様子が無いから、普通の方法で推進力を得ている訳では無いだろう。
動きが速めなので、どんな文字を使っているかまでは分からないが、腰回りと太股辺りに魔方陣らしき円があるのが見える。
腰に大きめの円が、太股辺りには少し小さめの円があり、魔力による線が数本あって2つの円は繋がっているらしい。
よく見るとレンの動きに合わせて徐々に水流が出来始めている。
多分、可能性が高いのは水を吸い込んで吐き出す様な形で推進力を生み出す方法だと思う。
腰回りの魔方陣で水を吸い込み、太股辺りの魔方陣で水を吐き出すと言う形であれば、大きさの違いの理由としては十分であり、何より少ない魔力消費で大きな効果が出そうだ。
まぁ、問題点としては旋回能力が低そうな所か。
実際、レンはかなり外側を大回りに飛び回っていて、今にも水の中から飛び出そ……って、本当に飛び出したっ!?。
「アレはマズいだろっ!?」
飛び出したレンは上に向かって水中から抜けた為、最も危ない一直線に床へ激突する軌道では無いものの、空中を山なりに飛び滞空時間が長くなっただけで、床に向かって落下していく。
レンが自分で何とか出来ない場合、命に関わるレベルでヤバいと思い脚に魔力込めて駆け出した。
ハッキリ言って、飛び出す角度は勿論だが、かなり広い中規模練習場のど真ん中であった為に、かなり壁まで距離があるからいいが、場合によっては床に落下する前に壁に勢い良く激突していたかも知れない。
勿論、今の時点でも危ないが、角度が下向きであったり壁との距離が近ければ、本人に対応する能力があっても対策を取る前に衝突する可能性が高い。
まぁ、駆け出したものの何となくレン自身が対応出来そうなイメージがある為、万が一そのまま落下する場合に助けられる可能性を高める為だけに追い掛け続ける。
水中から飛び出したレンは弧を描きながら落下し始めたが、特に何をするでも無くそのまま落下していくかと焦り始める前に、空中でクルリと回転して地面に足を向けた状態に体勢を変えた。
そして、水中での推進力に使っていた魔方陣が光を放ち……。
ヘリコプターの如く下に向けて強風を噴射させながら、空中でホバリングし始めた。
何かこんな風に飛ぶ奴、見た事あるわ。
バランス取るのが難しそ……と思ったら魔方陣の大きさが変わった。
ゆっくりと太股辺りの円が大きく広がり、広がるにつれて高度が落ちていく。
割と使い慣れてそうだ。
最終的にはホバークラフトの様に、僅かに浮いた状態で滞空している。
魔方陣を消して着地すると、小走りにプール擬きの魔石を確認しに行った。