第111話『第8属性の検証』
完成が若干遅れました。
と言うか、細かい部分のネタが尽きてきたとも言う。
「ふむ……どうしてその結論に至ったのか、教えてくれんかね?」
俺の言葉に、興味深そうにギュンターが尋ねてきた。
まぁ、別に確証がある訳では無いが、順序立てて疑問に感じた所を上げてみた。
まず第一に、第8属性の魔力弾が例の魔法が効かない物質に当たった際には魔力弾そのものが消えただけに終わったが、普通の物質は綺麗さっぱり物質が消えた所。
魔法が効かない物質は物理的な効果はあるみたいだが、魔法的な部分は全て無効化されてる様だった。
つまり、物質そのものに魔法を無効化する魔法効果があると言う事で無ければ、魔力を完全に受け付けない物質だと言う事である。
恐らく魔力を遮断した容器に使えるのであれば、魔法を無効化する効果自体は無いと考えるのが自然だ。
何しろ、魔法を無効化する効果がある物質に囲まれた状態であれば、徐々に内部に封じた魔力が減衰していってもおかしくない。
流石に魔力に干渉する要素があれば、保存容器には使えないだろう。
同時に保存にありがちな、時間を止めたり空間的に隔離等の線も無い。
魔法を無効化する物質を使う必要性が無いし、そんな特殊な魔法効果の中では普通の魔力でも何かしらの影響が発生し兼ねない。
そして、魔装具で土や森を破壊した際に魔力が手に入った事から、この世界の物質は少なからず魔力が宿っている可能性が高いと考えた。
勿論、木や土の中に居る微生物が一応僅かでも魔力を持った生命体、と判断されている可能性もあるが、現時点ではどちらも可能性の域を出ない為、断言出来なくても構わない。
何せ、今俺が言ってる予想も『そう言う可能性がある』と言うだけなんだから。
そして、物質に魔力が宿るのであれば予想自体は簡単だ。
魔力の宿る物質は、第8属性により魔力を打ち消され、形状を維持出来ずに消えた。
何なら物質を構成する要素の中で魔力と言う要素が消され、原子結合自体に支障が出た、と考えれば第8属性により物質は原子レベルで結合が崩壊し、原子に分解されたと言う事かも知れない。
逆に魔法を無効化する物質は魔力が無い、もしくは魔力自体を受け付けない程の何かがあって魔素を遮断している為に、第8属性の魔力の効果が及ばない。
まぁ、現時点では想定出来る範囲で比較的可能性が高そうな予想、と言うだけだ。
単純に実験を行う際に可能性の1つとして考え、裏付けが取れそうな実験内容を行い、その理論が間違っていないか検証してみる。
と言った所から始めると、手探り状態から分析するよりは時間が掛からない筈だ。
「では1つ、簡単に出来る実験をしてみようかの」
俺の話を聞いたギュンターは、幾つかの欠片を取り出して来た。
違う種類の小さな石が2つ、小さな木片が1つ、金属の欠片が1つ、骨っぽいのが1つ、そして小さい宝石らしき欠片が1つだ。
「コレを中に入れてみれば、椿君の推測を裏付ける証拠の1つになるかも知れんのう」
ギュンターが容器を弄ると窪みが出来、その中に欠片を入れて再度弄ると窪みは見えなくなり、続けて弄った瞬間、容器の中に欠片が落ちてきた。
容器の中に落ちた欠片は、容器の底に到達する前に木片と骨の欠片が消えていった。
「ほぅ……物質の種類によっては受ける影響に差が出る様じゃな、普通の石も目に見えて小さくなっておるな」
よく見ると2つある石の内、片方の石はもう1つの石より一回り縮んでいる。
宝石や金属の欠片はハッキリとは言えないが、全ての欠片が同じ大きさであれば、変化の無い方の石と比べると僅かながらに小さくなっている様にも見える。
「…………む? このまま経過観察を行ってもよいが、そのままでは余り大きな変化は無い様じゃな……」
「……まずは変化の確認……軽く振ってみる……」
ギュンターが容器を覗き込んでいる所に、レンが割り込み容器を軽く揺すり始めると。
まず一回り縮んでいた石が、溶ける様に消え宝石や金属の欠片が目に見えて小さくなっていった。
残った石の方は、他の欠片の変化が大きい為分かり辛いが、変化は無い様に見える。
「密度の違いかも知れぬな、もしかすると強度によって違いが出ておる可能性もあるかも知れん」
「……興味深い……老師が入れたこの石……やっぱり……封魔石の欠片?……」
あっ、あの石そんなゴツい名称付いてんだ……初めて聞いたぞ、そんな名前。
「椿君が言っておった、唯一第8属性の影響を受けぬ可能性がある物質じゃからのう、封魔石を比較対象として加えねば実験の意味が半減してしまうわい」
「……あっ……残ってた2つも消えた……残存物は…………少なくとも目に見える範囲では封魔石以外は……目視不可能……」
振っていた容器の中は、封魔石とやらの石ころ1つがカラカラと鳴る以外に、全く音が無くなり他の欠片は消えて無くなった。
レンがカラカラと鳴る容器を顔の側に近付け、底の方を凝視しているが、その言葉からすると目に見える粒子すら存在しないらしい。
「コレで椿君の言っておった推測が、最も有力な候補の1つだと言う証拠になったのう」
「……一気に何段階も飛ばして……研究が進んだ……椿の変態的発想には……脱帽……」
ギュンターの言葉は嬉しいが、レンの言葉は何一つ嬉しくねぇよ。
誰が変態だ、誰が。