背中
君は礼儀正しい人だから
パジャマを着る
襟のついたパジャマを
そして君は堅苦しい人だから
私に背を向ける
大きく硬い背中を
閉ざされた空間が
二人をきっちり一人と一人に分けるので
私は君の背中をじっと見ている
意地っ張りだと思う
ちっとも優しくないと思う
君の背中は何も語らない
時計の秒針が
せせこましく音を立てる
睡魔は器用にいつも
私を避けるので
私は君の背中をじっと見ている
さようなら、と告げたくなる
行かないで、と縋りたくなる
君の背中はとても寡黙だから
一人は随分騒がしくなる
こっち向いて、と呟く
ピクリと揺れる肩が
一人と一人の温度を冷やかす