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死神、諍いを止めに行く 前編

虚空は、朝から来ていた突然の客人に茶を差し出した。


「さて、椛…慌てているようだがどうしたんだ?」

「いきなり押しかけてすいませんでした…あちっ」

「狼なのに、猫舌なのは相変わらずか」

「笑わないでくださいよ、もう」

「ああ、すまない」

「…守矢の神、二柱がなにやら喧嘩をしているようで。二柱の力が膨れ上がってて妖怪の山の生態系に影響が出そうなんですよ」

「…林檎の味が少し変わったと思ったら…そういう事か」


呆れ顔になる虚空。


「…ったく、相変わらずあそこは騒がしいな。ま、いいか。少し行ってくるとしよう」

「すいません、お休みだったのに」

「…いや、別に構わない。たまにはこういう休日もいいものだよ」


わしゃわしゃと椛の頭を撫でてやる。

うっとりした顔をしていた椛だったが…。


「もう、いつまでも子供扱いしないでください!」

「ああ、悪かったよ。じゃ、行こうか」

「はーい…」



飛んで直行しても良かったのだが、それだと椛を抱きかかえる事になる。

椛も恥ずかしいということだったので、一度参道の入り口へと向かったが…


「…階段の修繕作業、ねぇ」

「早苗さんがこれを立てたようです。今の状況だとご利益も何もあったものではないと」

「…ま、判断は正しいか。でも、俺らが通るのもやめておいた方がいいな。川沿いに登るか」

「そうですね」


川沿いを歩いて進む。と、川の中から見知った顔が虚空と椛を覗いていた。


「…にとり、そこで何をしてるんだ?」

「ひゅい!?…いやー、ちょっと通りかかっただけで…」

「虚空さん、にとりは私から川の生態系の調査を頼んでいたんですよ」

「なるほどな」


にとりは川から出て、こちらに寄ってくる。服はすぐに乾いていた。


「とりあえず川の生態系は大丈夫。だけど、かなり怯えちゃってるねー…」

「そっか、ありがとねにとり」

「椛の頼みだからねー。それより…助っ人を連れてくるって言ってたけど…虚空が来るとは思わなかったよ」

「…ちょうど休みだったんでな」


にとりに林檎を渡し、さらに上流へと進んでいく。


「…む、この先は道が無いか…」

「こちらから参道の方へ向かいましょう。もう麓から来る参拝者の心配も無いでしょうから」

「ああ、そうだな…」


川から離れていくと、くるくると回転する赤と緑が飛び出してきた。


「うわっ」

「ひゅい!?」

「…あらあら、驚かせてごめんなさいね」

「雛か。厄集めにせいが出るな」

「ええ、神社の方から流れてくるもの。上質でいいわー…」

「やっぱりそれが原因か…」

「でも、なんというか…一人分?っぽいのよね。質が一緒というか」

「…恐らく早苗だろうな。巻き込まれて溜まってるんだろう。今から解決しに行くから、今のうちに厄を収集しておくといい」

「ふふ、ありがとうねー…」


またくるくると回りながら、消えていった。


「彼女も相変わらずだったなぁ…」

「とりあえず、先に進みましょう…」


更に分け入って進むと、畑のような場所へと出た。


「…秋姉妹の畑か、だいぶ登っていたようだな。…挨拶だけはしておくか」

「私たちは、先に進んでおきますね」

「ああ、そうしてくれ」


椛とにとりを先に行かせ、秋姉妹の住む家の戸をノックする。


「はいはーい…って、あら」

「久しぶりだな。元気にしていたか?」

「ええ、大丈夫よー…今の所は」

「やはり、少し影響が?」

「ええ…」


…とりあえず、妖怪の山への影響を考えると早く止めなければいけない。

そう思いながら、彼女達に林檎を渡すのであった。


妖怪の山編は、大きくお話を変えました。

モバスペで書いた方に出てきた子を元にした彼女は、まだ黄明譚での出番はずっと先になりますからね。

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