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死神、巫女の看病をする 後編

ゆっくり、誰にも見つからないよう竹林の入り口まで来た。

この状態の霊夢を見られるのは、少しまずい。


「妹紅、居るか?案内を頼みたいんだが」

「うぅ、なんだよ…今日は勘弁してくれよ…」

「…慧音に頭突きされたんだろ。事情は知ってる」

「ああ、虚空か。そういや朝珍しい奴に会ったって慧音が言ってたな…」


頭をさすりながら妹紅が竹林から出てきた。


「…ん?霊夢どうしたんだ!?」

「うるさいわね…大声出さないでよ」

「霊夢がこの状態だから永琳さんに診てもらおうと思ってね。…博麗の巫女が倒れたってなると大騒ぎになるから騒ぎにならないうちにね」

「ああ、わかった…こっちだよ」


会話もなく、時々霊夢が咳をするのが響くくらいに、竹林は静かだった。

十数分ほどすると、建物が見えてくる。


「…見えてきたな。私はもう失礼するよ。今日は輝夜と喧嘩する元気もないしなぁ…」

「霊夢、着いたぞ。…霊夢?」

「…すぅ…」

「寝ちゃってるな…」

「まぁ、それはそれでいいか。ありがとう妹紅」

「うん、じゃあな」


永遠亭の中に入っていく。

戸を叩いて、中に居るであろう人たちに呼びかけた。


「すいませーん、誰か居ませんか?」

「はーい…あれ、虚空さんじゃないですか」

「む、うどんげか」

「その呼び方はやめて下さい…」

「冗談だ。永琳さんは居るか?」

「ええ、居ますけど…って霊夢さん?どうしたんですか?」

「霊夢が体調を崩して自分じゃ動けない状態だったから連れて来たんだ。診察を頼みたい」

「分かりました。こっちです」


案内されて、ベッドのある部屋に通された。

…ちなみに、ずっと昔に虚空もここに寝かされたことがあった。


「ここに寝かせてあげて下さい。師匠を呼んできますね」

「うん、分かった」


ゆっくりと霊夢をベッドに寝かせる。


「…寝顔を見るのは久しぶり、かな」

「んぅ…あれ、ここは?」

「永遠亭だよ。今から永琳さんが診てくれるから」

「うー、また変な薬飲まされないかしら…」

「あら、新薬の実験はウドンゲでしかしないわよ。失礼ね」


部屋の入り口の所に永琳さんが居た。


「じゃあいろいろ検査とかしておくわね。あっちの部屋で待っててくれるかしら?」

「分かりました。…霊夢、また後でね」

「うぅ…検査怖いー…」


部屋で待機しながら、林檎を切り、兎の形にする。


「さてと…食べるかな」

「…ご一緒してもよろしいかしら、虚空?」

「おや、姫様じゃないですか」

「輝夜でいいわよ。林檎、いただくわね」


輝夜は林檎の一つを手に取って口に運ぶ。


「うん、美味しいわね。…というか、切るの上手いわね」

「家にいっぱいありますからね。何時の間にか身についてましたよ」

「ふーん…ところで、なんでまたここに?」

「病気の霊夢を担いで来ました」

「成る程、だから永琳が点滴だとか用意してたのね」


虚空と輝夜は同時に林檎を齧る。


「待ってる間暇でしょう?何かして遊ぶ?こんな物があるんだけど」

「トランプですか。…まあ、待ってる間だけなら」

「でも二人だけじゃちょっと物足りないわね。てゐ、居るかしら?」

「何ですか姫様ー?って珍しいね、林檎の死神さん」

「よう、因幡。元気だったか?」

「それなりにねー」


その後、三人で時間を潰す。

輝夜とてゐに負かされっぱなしではあったけど。


「はい、私はこれであがりー!虚空弱いねー」

「…場数の違いってのが顕著に出るな、こういうのは」

「そうねー…ん、終わったみたいよ」

「虚空さん、師匠が呼んでますよー」


戸が開いて、鈴仙が顔だけ出して呼びかけてきた。


「ん、分かった。…いい暇潰しになりました、姫様」

「輝夜でいいって言ったでしょ。…また今度ね」

「ええ、では失礼します」


虚空は立ち上がって部屋を出た。


「んー、何というか、相変わらずね」

「そうですねー」


部屋に入ると、霊夢が寝ているベッドの横に永琳さんが座っていた。


「ただの風邪ね。少し脱水症状も出てたから点滴をしておいたわ。じきに良くなると思う」

「ありがとうございます」

「それと、悪化する前に医者にかかるように霊夢に言っておきなさい。…霊夢が起きるまでは、ベッドは貸しておいてあげるわ」

「すいません、永琳さん」

「いいのよ。ま、ちゃんと言っておいてね」


永琳さんは部屋を出ていった。


「ん…あれ、虚空…」

「起きたか、霊夢。身体の調子はどうだ?」

「少し楽になったわ。その…ありがとう」

「いえいえ」


そこで、霊夢のお腹が鳴った。


「う…」

「…はい、林檎。すりおろした方が良いかな?」

「このままでいいわ。…あーもう、ちゃんと面倒くさがらずに掛け布団も干すべきだったわね…」

「やっぱり朝晩の冷え込みで体調崩してたのか」

「そうよ…後悔先に立たず、ね」

「次は注意しなよ?」

「うん、わかってるわよ」

「食べ終わったら、神社に戻るか?」

「…うん、そうする」


帰り際に、永琳さん達にお礼を言って、鈴仙の案内で竹林から出る道を行く。


「くしゅん!…寒気が」

「…鈴仙、少し止まってくれるか?」

「え?良いですけど…」


虚空は羽織っていたコートを脱ぎ、霊夢に羽織らせて、また霊夢を抱えた。


「これで少しはマシか?」

「うん…」

「…ちょっと羨ましいです」

「ん、鈴仙何か言ったか?」

「な、何でも無いです!行きますよ!」


案内のおかげで、迷うこともなく竹林を出た。


「じゃあ私はここまでで失礼しますね。霊夢さんお大事に」

「ありがとう鈴仙。気をつけてね」


竹林に消える鈴仙に手を振って、別れる。


「さて、俺たちも帰りますか」

「そうね、帰って早く布団に潜りたいわ」

「…夕食はお粥を作ってやるから、ちゃんと食べるんだぞ?」

「…ありがと」


夕日が落ちていく空を、虚空は霊夢を抱えて飛ぶ。

とりあえず、今日は霊夢がちゃんと布団で眠るまで見ておいてやろう。




「…成る程、ちゃんと霊夢は医者に診せたんですね。ありがとうございます虚空」

「まぁぐったりしてて抵抗もしなかったですからね」

「…虚空、貴方もあまり働き過ぎて倒れないようにして下さいね?」

「う…分かってますよ。というか、今回のも俺の息抜きをさせるためのものだったんでしょう?」

「…そうですよ。最近また貴方は休みを取ろうとしていなかったのでね」

「小町がちゃんと働いてくれれば俺も休みますよ」

「はぁ…何時になることやら。今日もサボっているようですし…探してくれませんか?」

「了解です、映姫様。…映姫様も、あまり働きすぎないように気をつけてくださいね。まぁ倒れたら俺が看病してあげます、いたっ!」

「人の心配よりも自分の心配をして下さい。…まぁそう言ってくれるのは有難いですが」

「あれ、映姫様照れてます?」

「て、照れてないです!さっさと行きなさい!」

「…ふふっ、分かりました。…さてと、サボリ魔を探しに行きますかね」


虚空の今日の仕事も、大変になりそうだ。

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