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死神、寺の一員として過ごす 後編

虚空は、廊下の雑巾掛けを行っていた。

命蓮寺の日課として、まずは掃除を行っているらしい。

ふと視線を感じて、雑巾掛けを止めて視線を横にやるとそこには…


「…あれ、男の人が普通に修行に来てるなんて珍しい…って、林檎の死神さん!?何やってんの!?」

「ああ、ちょっとな…今日一日匿ってもらう代わりにだな」


事情を説明すると、村紗水蜜は少し呆れた様子で彼を眺めていた。


「大変なんだねぇ、死神ってのも」

「会社で言ったら平社員みたいなものだからな。…しかし、相変わらずここも良く分からん状態だよな…幽霊やら、妖怪やらが寺の中に居るって」

「今は死神が追加されてるじゃん」

「…それもそうだったな。村紗は掃除はしてないのか?」

「ん、私は今日はご飯担当だから台所をやってきたんだよ。掃除は終わって、今はカレーの具材を煮込んでる所」

「ほう、カレーか…野菜カレーなんだよな」

「うん、お肉とかは入れられないからねー」

「虚空さん、お掃除は終わりましたか?」

「あ、いえ…すぐ終わらせますので」

「ふふ、待っていますよ。次はお墓の掃除ですからね」

「了解です」


どうやら聖は、普段手が回らない場所を虚空に掃除させるつもりらしい。


「ごめんね、邪魔しちゃって」

「いやいや、大丈夫だ」

「じゃ、楽しみにしておいてね」

「ああ」


台所の方へ村紗が行ったのを確認した、虚空はすぐに掃除を再開した。





「うらめしやー!」

「……」


掃除用具を持って墓へ向かうと、唐傘の妖怪が飛び出してきた。


「…うう、やっぱり驚いてくれない」

「いや、唐傘が思いっきり見えてたからな?」

「えっ」

「まったく、ちゃんと隠しておけって言ったじゃん」


唐傘の妖怪、多々良小傘がしょんぼりしていると木の影から別の妖怪が姿を現わす。その姿は…


「…六花のように見えたが、別人か」

「げっ、なんで見破られて…」

「あいつの性格を考えるとな…確実に違うって分かるんだよ」


六花ならば、姿を確認した瞬間に飛び込んでくるだろう。こんな回りくどい方法はとらない。


「ちぇー、つまんないの…」


封獣ぬえは、変装を解いて近づいてきた。


「小傘、私が教えたの全然できてないじゃん」

「…うう…」

「とりあえず、墓掃除しなきゃならんから退いててくれるか?」

「「はーい」」


割と素直に従う小傘とぬえだった。





昼食は、村紗が作ったカレー…ではなく精進料理だった。


「私のカレーはゆっくり煮込むからねー。夕食まで我慢だよ」

「なるほどな…」

「昼以降は、読経などをした後は自由時間ですが…」

「ふむ…どうするか…」

「あの、虚空さんでしたよね?」


虚空に話しかけてきたのは、雲居一輪だった。


「よろしければ、私の弾幕勝負の練習に付き合ってほしいのですが…」

「…分かった。ただし俺は避けるだけしかしないが、それでもいいか?」

「はい、よろしくお願いします!」





「はぁぁぁっ…!」

「……」


雲山の拳とともに放たれる弾幕を、軽く避ける虚空。接近戦で、体術も入れた戦いになっているのだが…当たりそうにない。


「やたら、避けるのが上手いですね…!」

「霊夢にも似たような練習に付き合わされたんでな。まぁ、霊夢が小さい頃の事だが」


今だったら数秒経たずにボコボコにされるだろうな、と苦笑しつつ一輪の攻撃を捌きつづけていく。

頃合いを見計らって、受け流しつつ力の流れを変えて一輪の体勢を崩してやる。


「あうっ…!?」

「すこし雲山のパワーに頼りすぎだな。…少し休憩にしよう」

「分かりました…」


縁側に座ると、星がお茶を用意して待っていた。


「ありがとう…」

「いえいえ。…しかし、虚空さん強いんですね…」

「死神として、稀に戦う事もあるからな…面倒なんだが、このくらいは出来るようになっておかなければならないから」

「「大変なんですねー…」」

「よく言われるよ」





流石に夕食まで世話になる事は出来ないと思って、早めに帰ろうとしたのだが…小さな鍋を持たされた。


「私が作ったカレーの内容を知っておきながら食べないなんてそんな勿体無いことはさせないよー」

「…すまんな」

「鍋は今度来た時に返してね」

「ああ、分かった」

「ふふ、また何かあったら命蓮寺に来てください。歓迎しますよ」


命蓮寺のメンバーからの見送りを受けて、虚空は自宅に帰ったのだが…


「う、あぅ…ご飯…」

「…お前、まさかずっと俺を探してたのか?」

「…うん。ご飯も食べないで探したよ…ん、なんかいい匂いする…」

「…命蓮寺のカレーだ。一緒に、」

「食べる!」


ガバッと起きて、目の輝きを取り戻した六花を見て、苦笑を浮かべてしまう虚空だった。





「たまには寺に行くのもいいものですね」

「今回は有意義に休日を過ごせたようですね。いいことです」

「…で、小町はどうしてます?」

「えぇ…貴方と同じように昨日休みを取っていたのですが…」

「まさか、六花に付き合わされてたとか?」

「その通りなんですよね…そのせいで、疲労困憊してて今日は動けそうにないです」

「…六花ぁぁぁ!!」


その後、六花が説教を受けたのは言うまでもなかった。虚空と映姫のダブル説教で八時間コースだった。

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