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死神、地底の底へ 後編

「あれ、虚空じゃん。こんな所で何やってるのさ」

「…それはこっちが聞きたいな、ヤマメ」


旧都と地霊殿のちょうど中間あたりでばったりと出くわす。


「んー、私はちょっとお燐に用があってね。…まぁ、うん」

「なんだ、誰かが足滑らせて落ちてきて…とか、そんな感じか?」

「あー、うん…そんなとこだよ。もう処理はしてあるから」


外界から迷いこんだ人間が、妖怪から逃げているうちに落ちてしまう事故がたまにあるのだった。


「…なるほど」

「いやー…目が合っちゃってさ…」

「あぁ、それは…気の毒に」

「あはは…ま、すぐ忘れられると思うからさ、気にしないで」

「ああ、わかってる」

「で、虚空はどうしてここに?お休みだった?」

「表面上は仕事だがな。…ま、すぐに終わるしほぼ休暇だ」

「そっかー。お空あたりがまだかなーって言ってたよ?」

「…そうか、分かった。じゃあ急ぐかな」

「ふふ、そうしなさいな。じゃ、またねー」

「相変わらず元気だな…」



「…虚空だ、旧地獄の調査に来たんだが」

「…はい、今出ます。…ようこそ」


地霊殿の戸をノックし、出てきたのは主のさとりだった。


「いきなりですね。なにか地上で問題でも…ああ、なるほど」

「言う前に心を読むんじゃない」

「いえいえ、読まなくてもだいたい分かります。こちらに来る時はいつもそういった理由ですから」

「…そうだったか?」

「ええ。…そうだ、これを持っていってもらえます?お空ったら、お弁当を忘れて行っちゃって…」

「…仕方ないな」

「では、調査とお弁当、お願いしますね」

「ああ…分かった」



地の底の底、旧地獄は灼熱地獄。

けれど、虚空の顔には汗一つ無かった。

厚手の黒いコートを羽織っているにもかかわらず、だ。


「…怨霊に関しては問題なし、と。…さて、お空は…あっちか」


その灼熱地獄にあるゴテゴテとした機械類の前に、少女が一人立っていた。


「…おい、お空」

「ん、どうしたの…って、あー!虚空だー!」

「ぐふぉ!?」


腹に向かってダイビングされて、お空が馬乗りになる。


「どうしたの今日は!?」

「あー…ちょっとした仕事。でももう終わったからさ」

「本当!?」

「ああ…あと、これ」

「…!私のお弁当!?」

「忘れてったみたいだから持っていってくれってさ」

「あー…ありがとう」

「どういたしまして」

「…えへへー」

「…じゃ、お空のお仕事が終わるまで…ここにいてやろうかな」

「えへへ、じゃあすぐに食べてお仕事頑張る!」




数時間後、虚空の姿は地霊殿にあった。

お空が、膝枕されて眠っている。


「むぐー、お空ずるいよー」

「…すー…」

「まあまあ…後でお燐にもしてやるから」

「約束だよ?」

「ああ」

「ふふ、相変わらず懐かれますね…」


紅茶を持って、さとりが部屋に入ってくる。


「ああ、なんでだろうな。…俺は死神だってのに」

「…そういう柔らかい表情ですかね?」

「…え、そんな顔してたか?」

「ええ。少なくとも…地霊殿でペットと接しているあなたの顔は、安らいでいるように見えるので」

「…まぁ、否定はせんよ」


お空とお燐の頭を撫でながら、虚空は笑う。

さとりも、その表情を見て納得したような笑みを浮かべていた。


「…ん、そういや…妹はお出かけ中か?」

「…ええ、最近は地上をフラフラしているみたいね」

「……」

「そんな顔しなくても、三日に一回は帰ってきて、元気な顔を見せてくれますから…」

「ん、そうか。なら別にいいんだが…。…さとりは、地上へ遊びに行くのは…」

「……」

「っと、それは自分で決める事だったな。すまない」

「そういう、すぐに心配してしまう所…嫌いではありませんよ」

「そうか?おせっかいだとか言われそうなもんだが」

「それがあなたの強みじゃないですか。ふふ」

「…はは。じゃあそろそろ…帰るとするか」

「えー!お兄さん、膝枕は!?」

「…っと、そうだったな…はは、今日は帰れそうにないか」





「….で、動物達に囲まれて眠っていて、遅刻しそうになったと」

「地獄なのに天国みたいでしたよ…」

「…まったくもう…」

「…もしかして、映姫様ももふもふ天国を味わいたかってぇ!?」

「戯言はそのあたりにしてください」

「すいません。…ところで、小町がまた居ないみたいですけど」

「…小町なら、大怪我してたのでお休みですよ。酔っ払って穴に落ちたとか」

「…まさかなぁ」

「というわけで、お願いしますね」

「…はぁ、わかってますよ。じゃ、行ってきます」

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