第四章
走り終えた選手たちは、それぞれの会社の応援団の人たちの出迎えを受けた。
わたしは、菊田くんのチームの応援団が集まる場所へと向かった。
選手たちや監督のあいさつの後、集まりの輪が解けると、同級生たちが菊田くんに近寄って行った。
わたしは、隠れるように立っていた。
「金子さんが来てるぞ」
同級生の言葉の後、菊田くんはわたしを見つけたようだったが、
「こ…こんにちは」
と言ってから、体を反らしてしまった。
わたしが来ても、全然喜んでなさそう。
優勝できなかったし、不機嫌なのも仕方ないかな……。
などと思っていたら、同級生の一人が、菊田くんに言う。
「緊張してるんだろうけど、もっと明るく応対しないか? ここから、新しいラブストーリーが始まるかもよ!」
「なにが新しいラブストーリーだ。そんな言い方、金子さんに悪いだろう」
「オマエは、走ることにはどん欲に突き進むのに、恋には臆病なんだよな。ずっと好きだった金子さんが目の前にいながら、何もできないなんて」
『ずっと好きだった金子さん』
本人の口から直接出た言葉ではないから、なかなか信じられない。
思い切って、尋ねてみる。
「ずっと好きだったって、本当なの?」
「そうだよ」
菊田くんは、うつむいて、地面にささやくように言った。
「わたしも、ずっと好き。少し離れたところから、ずっと見ていたの」
菊田くんのチームメートや、応援に来た会社の人たちまで、わたしたちに視線を注いできて、かなり恥ずかしくなった。
「今度、メールしてもいい?」
うつむき加減だった菊田くんが、顔を上げて言った。
わたしの大好きな、柔らかな笑顔を見せながら。
「いいよ」
お互いのアドレスも知らなかったから、まずは連絡先を交換した。




