第二章
1月1日を迎えた。
区間エントリーで、菊田くんは、アンカー(最終走者)になった。
何もアクシデントがなければ、ゴール地点で、菊田くんの姿を見ることができるというわけで、胸は高鳴っていった。
群馬県庁の庁舎がある前橋までは、電車をいくつか乗り継いで、結構な長旅になった。
そしてついに、群馬県庁の前に到着。
ゴール地点の周辺に、観客席と大きなモニター画面が設けられているけれど、人影はまだ少ない。
「金子さん? 金子さんじゃない?」
雪奈ちゃんと一緒に観客席に座ると、しばらくして、誰かがわたしの名を呼んだ。
近くに、わたしと同じ苗字の人がいるのかとも思いつつ、声のする方を見ると、高校3年の時にクラスメートだった男の子3人。菊田くんといつも一緒にいた人たちだった。
「菊田から誘われて来たの?」
「駅伝に出ることをテレビで知って、勝手に見に来ただけよ。連絡も取ってないし」
「きっと、アイツ喜ぶよなあ」
「絶対、喜ぶよ」
口々に言われても、わたしは戸惑うばかり。
「わたしが見に来ても、別に、嬉しくないでしょう?」
男の子3人は、笑いながら顔を見合わせる。
「金子さんは、菊田のこと、どう思ってるの?」
「どう……って……?」
「好き、とか、嫌い、とか」
「それは……」
うっかり、思いを口に出しそうになった。
すると、さらに質問された。
「別に、どっちでもないのかな」
「どうでもいい存在だったりして」
「どうでもよかったら、見に来るわけないよ」
「ほら、金子さんが困ってるだろ? この話は、やめよう」
残りの1人が言ってくれて、ようやくひと息つけた。
3人のうちの1人は、高校の時、菊田くんと同じ陸上部だった。
「卒業しても、趣味じゃなくて本格的な部で競技を続けるのは、陸上部では菊田が初めてだって。いや、他の運動部でも、あまりいないらしい」
わたしたちが卒業した県立高校は、スポーツが強いわけでもなく、多数の生徒が有名な大学に進学するわけでもなく、かといって風紀が乱れているわけでもない、ごく普通の学校だ。
就職しても競技を続けている菊田くんは、かなり貴重な存在ということになる。さらに、驚かされる話を聞いた。
「菊田は中学の時から、県内ではかなり目立つ選手だったよ。私立の、駅伝が強い高校から誘われたらしいけど、どういうわけか、ぼくらと同じ高校に来たんだ」
陸上部ではなかった子も、言ってきた。
「自分が注目されたいとか、女の子にモテたいとかいうふうには、考えてなかったみたい」
もう一人の男の子の、
「でも、好きな子がいることは高校の時に聞いていたよ。同じクラスだった」
との言葉には、誰なのだろうかと、想像を巡らせた。
クラスで目立つ、中心的な存在だった子だろうか。
目鼻立ちが整っていて、『かわいい』というより『美人』と呼んだほうがいいようなタイプの子だろうか。
わたしは、どちらにも当てはまらない。
目立たないグループに属していた女の子。




