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第一章

冬は、マラソンや駅伝の季節だ。



わたしの好きな人は、高校の同級生だったが、片思いのままで卒業してしまい、今も忘れられずにいる。


久々に片思いの彼――菊田くんの名前を聞いたのは、高校を卒業して1年近く経った、年末だった。

何気なく、テレビのニュース番組を見ていたら、お正月の駅伝の大会に出場するチームの、期待の1年目の選手として、菊田くんが取り上げられ、インタビューを受けていた。


お正月の駅伝、というと、たいていの人は、大学生が出場する箱根駅伝を、真っ先に浮かべるのだろう。

菊田くんが出るのは、1月1日に行われる、実業団の駅伝。


このインタビューを見るまで、菊田くんの進路は知らなかった。高校3年の時に同じクラス。出席番号が前後だったためもあり、多少言葉を交わすことはあったが、『仲がいい』とまでは言えなかったのだ。


菊田くんが陸上部だったことは知っていた。

ただ、大会での菊田くんの成績などは、全くわからなかった。


わたしが知っているのは、教室での、おっとりした姿。

いつもニコニコしていて、クラスのみんなに可愛がられるような存在だった。

見ているだけでも、癒やしを与える人だなと思っているうちに、いつしか恋心が湧いていた。



1月1日の実業団の駅伝は、群馬県で行われる。

群馬県庁の庁舎の前が、スタートとゴールの地点になっている。


ひと目でも、菊田くんの姿を見たい。わたしは、群馬に行くことを決意した。 

周りには、箱根駅伝をテレビで観戦する人はいても、駅伝を生で見るほどの人はいない。

テレビで全国放送されるような大きな駅伝大会が行われる場所は、わたしたちの住んでいる町からは離れているのだ。


高校時代から付き合いのある、女友達の中に、マラソンをテレビで見るのが大好きな子がいる。

文化系の部活動が一緒で、3年生の時はクラスも同じだった雪奈ちゃん。

同級生の菊田くんが駅伝に出るから、見に行きたいんだと言ったら、一緒に群馬に行くことになった。


雪奈ちゃんには、わたしが菊田くんを好きであることを打ち明けていない。クラスでおとなしい方のグループにいたわたしたちは、恋の話はしたことがないのだ。


まず、駅伝のコースをインターネットで調べてみる。

それぞれの選手が、どこの区間を走るのかは、大会の直前に発表されるのだが、確実に菊田くんを見ることができるのは、ゴール地点ではないかと考えた。

駅伝のテレビ中継では、優勝チームの選手たちが全員揃ってインタビューを受けることを、ふと思い出したのだった。

優勝チームではなくても、ゴール地点には選手がみんな集まるはず……。

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