8話
あの怪奇現象の場所を慌てて探す。
たぶん外だから……てことは庭か?
ここらに庭なんてあったか?
そう思った矢先に庭に繋がるであろう扉を発見した。
ここか?
期待を込めて扉をあけて外に出る。そこは草が茂っていて手つがずになった庭だった。
周りを見渡すと近くにあるベンチに人影を見つけた。その後ろ姿を俺は知っていた。
毎日のように見ているあの人だ。
急いで近づき目の前に立つ。
そこにはすやすやと眠る金色の髪の綺麗な女性と俺が探し求めていた主、銀髪の髪の赤ん坊がこちらも気持ち良さそうにすやすやと寝ていた。
見つけた………
その瞬間ぶわっと感情が高ぶる。
「ユアルス様!」
エルザの腕の中に眠る主を抱き上げて力一杯抱き締める。
いきなり抱き上げられたユアルスは驚き宝石のように輝く目を見開く。
それがアルナイルにとって初めて表情の変化を感じた瞬間だった。
「ユアルス様心配したんですよ!」
離すまいと力強く抱き締められているユアルスがぐふっと声をあげたのであわてて力を緩める。
なんだかよくわからないといった表情のユアルスを見る。
あぁ、無事でよかった……。
「さぁお部屋へ戻りましょうユアルス様」
そしてユアルスを連れ去った犯人であるエルザを見る。今だにすやすやと夢の中。
この人は……ほんとに!
肩を強めに揺すって起こす。
「エルザ様!起きてください!」
「むぅ……」
ゆっくり開かれる目。そして俺を見るとキョトンとした顔になる。
「エルザ様!ご自分が何をやったかお分かりですか!」
「え、なぜここにあの忌まわしいアルナイルが……」
忌まわしいとはなんだ忌まわしいとは!!
失礼きわまりないお方だ!
「エルザ様!こんなとこにユアルス様を連れてきて!風邪でも引いたらどうするおつもりか!」
そう言われてハッとした顔になる。
「ご、ごめんなさい……あら私ったら」
ほんとにこの人ったら。
ふぅと息を吐くと同時に引き返そうと思い扉の方を見ると唖然とした顔のカストルとエルが立っていた。
あぁ、こいつらもいたか。
「ユアルス様。こちらはあなた様の兄上にあらせられるカストル様ですよ。」
くりっとした紫色の目をカストルにむけるユアルス。そして、隣にいるエルに向けた。
「そちらはエルヴィスです。さぁここは冷えますお部屋に戻りましょう」
大事にユアルスを抱いて部屋に戻った。
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部屋につき、ベッドに寝かせるとまたぼんやりと俺を見る。
ほんとによかった……。
ふぅと息をつき椅子に座る。
すると部屋に他の三人が入ってくる。
「これが、私の弟か」
早速ユアルスに近づくカストル。
「綺麗な銀髪ですね」
エルは興味深そうな顔でユアルスを見ている。
「そうでしょう?エルヴィス殿!」
さっきのしょんぼりとした表情が嘘のように嬉々とした表情でいうエルザ。
「こんな綺麗な髪は見たことがありません」
惚れ惚れするかのような顔で見る三人。
それからカストルとエルは暇さえあれば来るようになった。
アルナイルは過保護だけどいいお父さんになりそうですね。
ユアルスの魅力にとりつかれてしまったカストルとエルヴィスでした。