4話
「エルザ。ユアルスの調子はどうだい?」
そう話しかけてきた人はこのトスカ王国の国王エスパーダ・ディ・トスカである。
広い肩幅に威厳のある雰囲気。見た目は燃えるような赤毛の髪にこちらも燃えるような赤い目。国王の名にふさわしいお方であり私の旦那様でもある。
まぁ私は側室だけど。
「とても元気でいい子ですよ」
「そうか……そろそろユアルスが生まれてから一年がたつ。それでなんだがエルザよ。そろそろユアルスに第一従者をつけようと思う。」
このトスカ王国の王子王女には代々従者をつけることが定例である。
従者……。
「それではユアルスの従者は私がしっかりこの目で見て決めますわ!」
そう高く宣言する。
だって私の唯一の息子なんだもの。
トスカ国王であるエスパーダには王妃と側室が私を合わせて三人いる。
そしてその他の方々はみんな二人以上は子供を産んでおり唯一私だけが一人しか産んでいない。
そして大事な大事な私の子供であるユアルスはこの国の第四王子である。
「そういうと思ったよ。だから今日来てもらったんだよ従者候補である人を」
苦笑交じりにいうエスパーダ。
なるほど……まずは見てみないとわからないわね。
「はいってくれ。」
その掛け声がかかると扉がゆっくりと開いた。
入ってきたのは二人の男。
一人はこのトスカ大国の強大権力を誇るレストニア公爵家当主ユーノス・スタディ・レストニア。ちなみにエスパーダの幼馴染みのような関係である。
そしてゆっくりとこちらに歩いてくる青年は綺麗な水色の髪に強い意志がわかる髪と同じ空のような水色の目をしていた。
「この度第一従者として任命されたアルナイル・リース・レストニアです。」
名前を言い終わると優雅に頭を下げる。
なるほどね。
レストニア公爵家の次男をユアルスの第一従者に……か。
ありね。
「座りなさい。」
私たちの向かえに座るアルナイルはまっすぐ私たちを見ている。
「どうだ?エルザ」
そう聞いてくるエスパーダ微かに不安の色が混じっている。
そんな表情は明らかに国王としての威厳が無い。
「ありなのではありませんか?
ユーノスの息子なのなら信じられるわ。
まぁ様子見ですけど」
私がそう言ってカップに口をつけるとあからさまにホッとした顔をする。
「それはそれは安心しました。もしかしたら従者に受け入れてもらえないのかとこちらもひやひやしましたよ」
ニッコリとそういうユーノス。
つくづくくえない男だわ。
「私は様子見と言ったわ。たとえユーノスの息子だからといって私の大事なユアルスの第一従者にするとはまだ言った覚えはないわよ」
ユーノスを見てそう言うと隣にいたエスパーダの溜め息が聞こえた。
「悪いなユーノス。それと、アルナイルよ。」
「いえ……」
ニッコリ笑って言うアルナイルはユーノスに似ている。親子揃ってこんなんなのか。
まぁいいわ。
たとえユーノスの息子だろうと私のユアルスの従者候補だもの。しかとこの目で見極めてやるわ。
「エルザ。アルナイルをユアルスのところへ案内してあげなさい。あそこは“複雑”だからな」
「わかってるわよ」
私は立ち上がりアルナイルを見る。
アルナイルも立ち上がり私たちは部屋をあとにした。
「アルナイル殿。従者を名乗り出ていただき誠に感謝しております。」
私は部屋を出てすぐさま頭を下げた。
私がこうする理由。
それは私にとったら欠けがえのない息子であるユアルス。しかしこの城でユアルスは出来損ないだの気持ち悪いだの言われており誰も従者を名乗り出るものがいなかったのである。
まぁ従者なんてもの要らないと最近は思ってたけど……。
「頭をおあげください!」
顔をあげるとなぜ私が頭を下げているのかわからない様子。
もしかして知らないの?
「もしかしてあなた………ユアルスのこと知らないの?」
「え、?」
明らかに困惑している顔。
そう、知らないのね……
わざわざ言う必要性はないかもしれないが私はユアルスの部屋に向かう間ユアルスについての話を始めた。
さてさて、この従者様はどう思うだろうか。
次回からアルナイルの葛藤が始まります
アルナイルのことを暖かく見守ってあげてください