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第四王子の奇行物語  作者: 秋鐘 要
少年編
29/31

28話



この温かくて包まれているような感じ。


とても安心できるこの感じは“外”にいる人のお陰だろう。


この中は真っ白でなにもない。

ただ“外”にいるものたちの影や明るくなったり暗くなったりするのを毎日繰り返してるのを見ているだけ。

はっきり言うと飽きた。

しかし、“外”のものたちは面白い。

“外”のものたちの会話も必然的に覚えることができた。

毎日話しかけてくれて抱き締めてくれてそしてなにか温かいものを流してくれる。

誰がそんなことをしているのかは全くわからない。

産んでくれたものかもしれない。


よくわからないことが多いけどわかることはただひとつ。

“外”にいる誰かが呼んでいるということ。

産まれてくることを望んでいて、きっと“外”の世界はとても楽しいのだろうと思わせた。


けど、出たくても出れない。

どうしてだろうか


こんなにこんなに出たいと“外”にいる君に会いたいと望んでいるというのに……



_______________



ある日のことだった。


今日もまたなにか温かいものを流してくれる。

いつも思うのだがこれはなんなのだろうか。

安心できるのには変わりないが興味がある。


するとふと流れが止まった。

誰かに呼ばれたようだ。

まだあの感じに浸っていたかった。




どのくらいたったであろうか。


また帰ってくると撫でながら話しかけてくる。

なんの話かなんてわかりもしないが気持ちいい。


じんわり流れてくる温かいもの。

それを感じているとふと直感的に思った。



あと少しだ



そう思うのとほぼ同時にあの温かい流れが急激に流れてくる。

すると今まで真っ白だったはずの壁がいろいろな見たこともないような色に輝き出す。


あぁ、あと少しだあと少し。


パリッと割れた瞬間……


待ち焦がれていた“外”の光が自分を照らすのを感じた。



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