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第四王子の奇行物語  作者: 秋鐘 要
少年編
22/31

21話

最近一人で屋上に行ってサボってる。

前世の漫画で主人公がサボっていたのに憧れを持っていた。そんなことに憧れをもつ俺は変なやつなのかも知れないけどそれでもいいと思った。

前世で出来なかったことをできるだけやってみたいのだ。

マルクルは時々来るけど俺みたいに五歳から勉強していた訳じゃないから授業を出ないと試験なかんかで大変だろう。


そういえば家庭教師のフォーマルさんだが休日に剣の稽古に付き合ってもらっている。

自分一人じゃわからないことが多いから。

前にアルナイルさんに相手を頼んだんだが残念ながら断られた。

主人に剣を向けるなんて……と悲痛そうな顔で言っていた。アルナイルさんってすごい強そうだから相手を頼みたかった。

もうちょっと大きくなって上達したら再度頼もう。


ふぅと息をついて空を見上げる。

何分もそうやって空を黙って見上げていたらゴーンゴーンとお昼を告げる鐘が鳴った。


「もうお昼か……」


俺はこののんびりとした時間が好きだ。でも、このままじゃいけない。そろそろなにか新しい生き甲斐を見つけないと落ちぶれていく。

新しい人生が落ちぶれていくなんてことしたくない。そろそろ将来の夢を見つけないといけない。

タダで生きている人生なんてつまらない。

無料ほど高いものはないって言うし何かを見つけないと。


「ユアルス~昼だぞ」


マルクルの声が聞こえて悶々と考えていた思考を中断する。

木の影から顔を出したマルクル。

ふとマルクルの将来の夢はなんなのだろう、と考えた。


「ん?どうした?食堂行こうぜ!」


「うん」


俺はそういえばまだ九歳だ。

焦ることはない。前世の受験のようにパッパと決めなきゃいけないわけでもないしそれに前世で九歳と言えばまだ小学四・五年生なわけで俺なんてこの時期はのほほんとゲームしたりして遊んでいた歳だ。

焦ることはない……焦ることはないんだ。


自分に言い聞かせるようにしながら食堂に向かった。


───────────────────


「ちょっとあんた!自分がこの国の王子だからってねそれを笠に着て最低ね!!」


目の前には勝ち気そうな少女がいた。

俺とさほど身長が変わらない女の子である。

そしてなんとも珍しい部類に入る子である。


なぜか周りは俺に話しかけてこない。

王子だからか何なのかは不明だが。

こうやって面と向かって文句を言ってくる人は珍しい。そういうこともありまじまじと少女を見た。

金髪をポニーテールに結っていてちょっとつり目勝ちの大きな目は緑色だ。

かわいい部類だと思う。


「ちょっとあんた聞いてんの!?」


となりにいるマルクルは我関せずとばかりに俺の肩を叩いた後席をとりに行った。


そういえばこの子の将来の夢はなんだろう。

意外と人の意見を参考にするのもありかもしれない。

「うん……君の将来の夢はなに?」


「はぁ?!あんななにいってるの!それは今関係ないでしょ!」


仁王立ちで俺の前を塞ぐ少女。

不機嫌そうに顔を歪めている。


「君はどうしてそんな風に怒っているの?」


俺の切実なる疑問である。

この少女はどうして俺の質問に答えられないくらい激怒しているのであろう。

疑問である。確か今日初めてあったはずだけど……もしかして俺が忘れてるだけでなにか迷惑をかけてしまったとかだろうか。


「あんたわかんないの?!愚かな奴ね!あんたが王子という特権を活用して授業サボったりするのが腹立つのよ!何が王子よ、最低」


そうとう軽蔑している眼差しを俺に向けてくる。

そうか、俺が自分勝手な行動をしているのが腹立つのか。そりゃあそうか。誰だってそうだろう。集団行動とは難しいんだったな。


「ごめん僕が悪かった。もうサボるのはやめるよ」


さらりと謝る俺を見てふんっと言った後少女は去っていった。

俺は既に昼食を食べていたマルクルの隣に座って出てくる昼食を食べる。


「ユアルスに絡んできたやつは確か隣のクラスのネイティア・ハーツ・フラインだったはず。フライン男爵家の次女。フライン男爵家といえば厳格な家で悪いやつは許さないみたいな家だよ。ドンマイだなお前」


なるほど。正義溢れる格式高い家ってことか。

めんどくさいやつに目をつけられたな。

まぁもうそろそろやめようとは思ってたからいい機会だ。


「マルクル。マルクルの夢ってなに?」


「なんだよいきなり……」


不審そうな目で俺を見てくる。

やめろよなその目。


「いや、何だろうなぁって思ってさ」


「俺の夢はもちろん騎士になることさ。」


「騎士?」


「あぁ騎士。街の警備や魔物の退治とかいろいろするんだ。もちろん誰もがなれる訳じゃねぇ。剣とかの腕前もすごくないとダメなんだ。」


「へぇ……騎士かぁ」


でも俺的には騎士には興味ない。

かっこいいけど俺にはきっと向いてない。

それ相応の訓練とか大変だろう。

あと、誰かを護るとか誰かに縛られるとかそんなことはやりたいとはなんか思えない。

単独でいきたい。俺の苦手なことは集団行動だ。


「ユアルスの夢は?」


「僕はまだ考え中。よくわかんないんだ。職業とか」


「ふーん……まぁもうすぐ職業体験みたいなのくるだろうからそんときに体験してみて決めるのもありかもな」


職業体験?そんなのあるのか………

なるほどなぁ。なんかいい感じの職業あるといいな。

この世界にはどんな職業があるのか楽しみになってきた。



──────────────────



家に帰った後俺の為に紅茶を淹れてくれているアルナイルさんに聞いてみた。


「アルナイルさんってどんな仕事してるの?」


いつも俺のそばにいて仕事をしているようには見えないけど実際は沢山の書類と戦っているのを知っている。


「私ですか?私はユアルス様の第一従者ですけと?」


え?従者?従者って従者?

そうなの?!アルナイルさんって………道理でなんか近くにいるなぁって思った。

子供を育てる社会勉強かなんかなのかと思ってた。


「前の仕事は騎士に所属していました」


でました騎士。

アルナイルさんが騎士ってすごく似合うと思う。


「そうなんだ……」


アルナイルさんが淹れてくれた紅茶を飲む。

ふぅ……アルナイルさんが騎士って最高だね。

なんでこんな職に転職しちゃったんだろ。

疑問である。


「どうして急にそのようなことを?」


「僕将来の夢がまだなくって……なにかいい職はないかなぁって」


「そんな焦らずとも大丈夫ですよ。まだ人生は長いです」


まぁそうなんだけどさ。

やたらめったら強くなった体だからなにか無い限りはそう易々と死なないとは思うけど。

易々と死んだ体だった前世とは大違いだ。


「うん………気長に考えてみるよ」


ふぅと息をついてからまた紅茶を口にした。



将来の夢を見つけるって意外と大変なことですよね。なにかきっかけがないと決まらないっていう。

さて、ユアルスはどんな夢を見つけるのでしょうか!

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