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第四王子の奇行物語  作者: 秋鐘 要
少年編
20/31

19話

さてあの豪邸にも少しなれた頃(まだ迷子になる)ついに入学式を迎えた。


真新しい制服を着てなんか高そうな鞄を背負い綺麗な革靴を履き丁寧に髪をセットされ家を出た。


過保護なアルナイルさんは注意事項を永遠と語っていた。それをほどほどに聞き流しながら馬車が止まるのを待つ。


ちなみに制服なんだがブレザーである。黒を基調としたデザインで金糸の刺繍が所々に入っている。青いネクタイを締めて薄い青みがかったシャツをきている。なかなか俺的には好きな制服だ。


馬車がとまった。

アルナイルさんが扉を開け出るのを手伝ってくれる。意外と馬車の乗り降りって難しいんだよね。


顔をあげて周りを見る。

東〇ドーム何個分だろう敷地にあるでかでかと建つ学園。茶色い校舎は漫画でしか見たことがない創りになっている。

周りには同じような制服を来ている人がたくさんいた。そんな学生たちは俺らの方をこっそり見ていた。なぜそんなひそひそ見るのであろうか。


「ユアルス様!お気をつけていってらっしゃいませ」


「あ、うん……行ってくるよ」


緊張で引きつった笑顔をしながら挨拶をする俺。

あぁなんか、緊張する。

俺は早足にその場を立ち去った。

きっと周りはアルナイルさんのイケメンさに惚れ惚れして見ていたんだ。


中に入り地図を見る。

ここを左に……と地図にしたがって歩いていく。

そしてなん十分かたったあとやっとついた。

たぶん扉でかいしあってると思う。


このとき俺はなぜ周りに人がいないことを気づけなかったのか不思議でならない。そしてここが今までと違う雰囲気を醸し出していたことにめきづけなかったのである。




───────────────────




「エネ。エネミーレ。そろそろ起きろ。」


頭上から私を起こす声が聞こえてうっすらと目を開ける。

サリアが私を見下ろしていた。


「入学式始まるぞ」


ふわぁと欠伸をして周りを見る。

私はソファで寝ていたようだ。

昨日の仕事が大変だったから生徒会室で寝ていた。


「うん待って」


私なりに急いで支度をする。

支度が終わった頃にはもう眠気なんかは吹っ飛んでいた。


「さぁんじゃあ今年度のでかい初仕事といきま……」


しょうかとサリアが続けようとした瞬間。

ノックもなしに扉が開いた。


誰だ?と疑問に思い扉の方を見るとそこには輝くような銀髪の少年がいた。

少年は無表情で私たちを見ている。銀髪のさらさらとした髪は光の当たり具合によって虹色のような色に変わる。そして宝石のような紫色の目。真っ白い肌は雪のようでまだ幼さが残る少年。

ついその綺麗な容姿に見とれてしまった。


誰?


「貴様何者だ!」


一瞬目を奪われたが我にかえって少年に問うサリア。

「……僕はユアルスです……けど…あれ?」


小さな声はとても澄んでいて鈴のような感じだった。


「なぜここに?」


私が一番疑問に思ったことを問うとユアルスはあの紫色の瞳で私を見た。


「………入学式に出ようと思ったんですが……間違えました」


すいませんと頭を下げてくるユアルス。そして扉を出ようとする。


「ねぇ?」


私が声をかけるとゆったりと振り替えった。


「場所……わかるの?」


そう問うと首を横に降るユアルス。

そのあどけなさが残る行動についつい笑みをこぼしながら私はユアルスに近づいた。


「私の名前はエネミーレ・アッシュ・アストロイよ。ここの学園の生徒長を勤めているのよろしく。あっちは副長のサリア。男同士仲良くしなさいな」


手を出すとほっそりとしたか細い手が出てくる。

その手を握ると女の私でも嫉妬してしまいそうなくらいスベスベでもちもちだった。


「さぁ入学式が始まるわ。急いでいきましょ?」


ずっと触っていたくなる手を離して入学式の会場に向かった。




───────────────────



入学式の会場は全く逆の方向にあった。

エネミーレさんたちに出会わなければ一生あそこらをさ迷っていたであろう。


入学式も無事に終わり教室に移動中である。

長くて広い廊下を歩いていくと中庭なんかやなんかドでかい建物があったりと見ていて飽きない。


同じクラスの生徒は俺を見てひそひそ話に花を咲かせている模様。

まぁどうでもいい。

平和に暮らせればね。HEIWAだよ。


教室についた。

そこは大学のような形とスタイルのようで好きなとこに座っていいらしい。

長い机が階段上になっている。


みんなが次々に座っていくなか俺は窓際の一番後ろをゲットした。

ラッキーだぜ。これで寝れる。


上から見る教室はなかなかの絶景だ。なんてね。普通だよ。生徒は五十人弱。なかなか高級そうな方々だ。俺、田舎者に見えていないか不安だ。


久しぶりの学校とあって教室を見渡していると隣に誰かが座った。


「よぉ!俺マルクル・ローン・ダイタンよろしく!」

なんとも活発そうな少年が声をかけてきた。

なぜか周りが静かになる。

それに疑問に思いながら俺も自己紹介をする。


「僕はユアルスだよ。こちらこそよろしく」


「ユアルスかぁ。お前目立つのなその容姿!!」


やっぱり目立つんだ……やだなぁ。


「そっか……目立つの好きじゃないんだけどなぁ」


「お前苗字ねぇのか?この組にいるってことは相当の貴族な筈だけど」


「あぁ………僕はユアルス…」


「はーい!みなさん席についてくださいね。」


苗字を言おうとしたら先生に遮られた。

まぁ、また今度言えばいいか。


「この一年このクラスを担当することになったアリエル・ハリー・ストロティアです。よろしくお願いします。」

優雅に頭を下げたアリエル先生。

水色の波打つようなウェーブの髪に温かい水色の目。綺麗な女の先生だった。


「さぁではそちらから挨拶してもらいましょうか」


そこから一人一人廊下側から挨拶していった。

そしてマルクルの番になる。


「俺はマルクル・ローン・ダイタン!ダイタン家の三男だからお堅いのは嫌いだ。普通に接してくれるとありがたい」


マルクルっぽい挨拶が終わりついに俺の番だ。

ガタッと席をたつ。

するとなぜか周りが息を飲む。


え?なにかあった?

と思いつつ考えてきた挨拶を思いだしそれを言葉にする。


「僕はユアルス・アストロ・トスカです。」


うそっ王族の方だったの?

綺麗な方だと思ったら

王族が入学するなんて噂全く無かったけど……


え?こんなにざわつくの?

嫌なんだけど……目立ちすぎじゃね?


「お前王族だったのかよ!」


心底驚いた顔をするマルクル。

俺は困った顔をして先生を見た。

その雰囲気を感じとり先生は手を叩く。


「はいみなさん。まだユアルスさん挨拶が終わっておりません。静かにしましょうね」


すると一気に静かになった。

さすが先生。


「えっと、まだ世間知らずなのでいろいろ間違ってしまうことはあると思いますがその都度教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします」


ふぅ終わった。

挨拶を終えて椅子に座る。

今だ視線を感じるが気にしないことにした。

まだ気にしないことにはできないけど。


それから学校についてをアリエル先生は話していきそのままお開きになった。


みんな各自立ち上がり思い思いにこのあと過ごすようだ。


「おい!ユアルス……様?」


「やめてよ様なんて。背筋が寒くなる。普通に仲良くしてくれると嬉しいな」


苦笑しながら言うとははっとマルクルは笑う。


「んじゃユアルス!よろしくな!なんか偉い立場のようだけどまぁ頑張れ!」


「うん…マルクルもよろしく。僕には友達いないんだよね。いつか家に遊びにおいでよ」


「まさか…王城か?」


「残念ながら違うけど……行ける日もくるかもね」


アルナイルさんが待っているだろうと思い鞄を背負いながら扉に向かう。


「あ、待てよ!玄関まで一緒に行こうぜ!」


こっちの世界での初めての友達が出来た日だった。



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