1話
桜が病室の窓から見える。
その病室の主である少年は今日、17歳の誕生日を迎えた。
そして、延々の眠りについた。
永遠の眠りを知らせる機械音が部屋中に響き渡るなか誰もが唖然とベッドに横たわる少年を見る。
「………○月○日○時○○分 スズキ ハルさんご臨終です」
少年の主治医だった男の人は目に手を当てながら呟いた。
もう動かない少年の手を力強く握りながら衝撃のあまり唖然とする母親は小さく呟く。
「………ハル?」
その声に少年は答えることなく微動だにしない。
「ハ……ル………ぅ」
泣きじゃくる母親の声はもう一生少年に届くことはない。
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あれ……?
もう見ることは無いと思っていた光がまぶたの裏から感じられる。
そして、呼吸をしていることに唖然とする。
なんだ……天国か?
そんなこと思う俺はそうとうイカれてるのかもしれない。まぁもう逝かれてはいるけど。
しかし、光がまぶしい。
なんなんだ。もしかして俺は死んでないのか?
なんて、ちょっと心が踊る考えをしてみる。
しかし記憶を探ると明らかに死んだはず。
ていうか眠気がすごい。
まぁよくわからないがまずは寝よう。
頭の整理がつかなくて面倒になったのでまどろみの中に意識を手放した。
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「あらあら……本当にかわいいんだから!私の坊や」
そんな声が聞こえて目を開けると真上に女の人がいた。
え?!だれ??
金色のまぶしい髪にやさしい海のような澄んだ碧眼。そしてなんといっても美女。明らかに日本人ではない女の人は俺を見下ろしていた。
………ま、まさか巨人?!
そう思いあわてて起き上がろうとしたら体が動かないことに気づく。
な、まさか金縛りか?!
焦りに焦って手をバダバタと力一杯伸ばすとあることに気づく。
………は?
そこには紅葉のようなかわいい染みひとつない白い手があった。
ど、どういうことだ?!
混乱する頭を整理するために深呼吸をする。
落ち着きを取り戻し現状を整理すると俺は赤ちゃんになったらしい。てことは転生?
まさか俺があ、赤ちゃんになってしまうとは……
ていうか記憶があるんだが………
まじまじと自分の手を見て考えを巡らしていると女の人は何を勘違いしたのか俺をだきあげる。
うおっ!
「そんなに慌てなくても私は逃げないわよ
本当にあなたはかわいいんだから!」
にこにこ太陽のような笑顔を向けてくるこの人はもしかしたら俺の母さんなのか……。
美人すぎるだろ!!
前世の母親を思い出す。
………うん。比べ物にならん。
失礼なことを考えていると母親は窓の近くの椅子に座り何やら話を始める。
ていうか明らかに言語が違う筈なのにわかる。
なぜだろう。
まぁ、わかるに越したことはない。
話の内容なんてわからないと思っているのか永遠と話してくるがその話の内容はなんというか……イタズラが成功した話だった。
なんなんだ俺の母さんは。
でも、楽しそうに話すので心が和み、母さんの温もりが気持ちよすぎるのもあっていつの間にか俺はまた眠っていた。
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また目をさますと母さんはもういなくなっていた。
何一つ物音がしないので周りを見渡す。
といっても体が動かないので目をキョロキョロ動かす。
観察してわかったこと。
まず一つ目は部屋は西洋風で前世に比べると明らかに豪華すぎる。というか広い。
そして二つ目は電気だ。それを見たとき唖然とした。なぜなら光がふわふわと浮いていたからだ。部屋中を照らしているサッカーボールくらいの光が生きているかのように部屋の真ん中で浮いているのである。
どういう原理だ?と思ったときフッとあることが頭をよぎる。
いや、まさか。でも、そのまさかか?
じっと発光体を見る。
もしかして、魔法なのでは?
なんて厨二病まがいのことを考える俺はやっぱりイカれてるのかもしれない。
けどそれしかないだろ!
なんてちょっと心に不安と期待が入り混じる。
病室で寝込んでいたとき暇だったので本を読み漁っていた。
そのなかには異世界転生ものもありとてつもなく面白くてはまったものである。
魔法があるのでなんとなく言語が違うのにわかると言うことをすんなり受け止めることができた。
言語のことより魔法のほうが俺にとったら怪奇現象であると判断した。
それにしても魔法かぁ……
そういえば俺って生まれ変わったんだよな?
てことはこれってチャンスじゃね?
だってさ魔法があんだぜ?魔法!!
これは最強にはならなくても魔法を使ってあんなことやこんなことを………
なんて妄想しているうちにまた眠りについたのであった。