18話
ついになのかなんなのか早くも俺は先日九歳になった。
この年の九歳といえば学校の入学できる歳なのだそうだ。
というわけで今年から王都にあるフェスタニア学園と言う名高いらしい学校に通うことになった。
別に家庭教師を雇っていたので行かなくてもいいとは思うけどでもやはり同じような年の人と交遊を図りたいと言うのもある。
まぁ別にどうしてもって言うわけではなかった。
この話を持ち出されたときは別に行かなくてもいいけどねとは言った。が、意外にもアルナイルさんが友達をつくりにいくと思っていってほしいと言うので行くことにした。
と言ってもだここが王国であるので城から通うかとかいろいろ決めることがあるらしい。
なんか、俺にはさっぱりである。
寮なんかもあるらしいんだけどこれはダメだと言われた。理由は知らない。
俺的には城からでもいいと思う。
だっていちいち家を買ったりするなんて馬鹿げてるし俺はそんなことしてほしいわけでもない。学校に行けるだけでもありがたいと本当に思っている。
と、先日そんな風に言ったらなんともいえない顔をされた。
まぁそれはさておき、制服などもあるらしく着々と準備が進んでいきついに入学式が残り五日に迫った今日、引っ越しをすることになった。
最終的に家を俺なんかのために買ったらしい。
金持ちってほんと考えることわかんない。俺がただ貧乏性なだけなのかな……。
「さぁいきましょうユアルス様」
アルナイルさんに声を掛けられうなずいた。
「ユアルス~寂しくなるなぁ」
涙を流しながらカストル兄様は抱きついてくる。
一生の別れじゃないんだから大袈裟だと思う。
「カストル兄様時々会いに来てもいいですか?」
「もちろんだとも私のかわいいかわいいユアルスよ」
エルヴィスさんに引き剥がされ涙ながらに文句を言うカストル兄様。
愛されてるね俺って。
「さぁ乗ってください」
アルナイルさんの声に従いカストル兄様に手を降ってから馬車に乗った。ちなみにはじめての馬車である。
馬車が出発し城が遠くなっていく。あそこで生まれあそこで育ったこの九年間はほんとに色んなことがあった。俺は今日から色々と変わっていく。期待と不安でで胸が膨らんだ。
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「ユアルス様着きましたよ」
ドアが開きアルナイルさんが顔を出す。
頷いてアルナイルさんに手を貸してもらいながら外に出る。
そして俺は顔をあげ絶句した。
デカすぎる。豪邸だ。
周りの庭は綺麗にしてあり緑いっぱい。
ドアはでかくてキラキラ。
「…………」
「どうしました?行きましょうユアルス様」
普通にしていられるアルナイルさんはすごい。
そそくさとアルナイルさんの後ろを着いていきドアが開いた。
そして中にはいると…………
うげぇ……なんだこれは。こんなとこにすまなきゃいけないのか。
はっきり言う。嫌だ。というか俺には勿体なさ過ぎる。
天井は高くてシャンデリアがある。
下に敷いてある絨毯はふわふわすぎて乗るのが辛い。
階段は手すりとかなんかが大理石かなんかで作られてるらしくスベスベ。
挨拶をしてくる使用人たちは多すぎる。何人いるんだ。そこかしこに芸術品が飾ってあり高そう。綺麗の前に高そう。
他にも言いきれないほど高そうなものが盛りだくさんである。
「ユアルス様こちらですよ」
アルナイルさんの声に我にかえってあわててついていく。
そしてひとつの部屋にたどり着いた。
玄関の扉の次に豪華な扉だ。
それを戸惑いもなくあけるアルナイルさん。
ガチャさえも言わずに開けられるドア。
そしてアルナイルさんは俺から先に入れと言うかのように扉の隣にたった。
そしてついに一歩足を入れる。
これまた絶句した。
俺だけの部屋にしては広すぎる。
真ん中には堂々とソファが二つありその真ん中に透明のきれいな机がある。
真っ正面にはデカデカとあるガラスの窓。
そこからバルコニーに出れるらしい。
右と左に部屋があるらしく扉が二つ。
まずは右からおそるおそる扉を開けた。
そこにはこれまた堂々とデカすぎるベッドがあった。え?これ俺一人で寝るんだよね?って位でかい。
ちょっとした椅子と机もある。
次に左の方の扉へと行く。
そこにはまた二つの扉があった。
一つはトイレだった。トイレだったんだけど……こちらもあり得ないね。トイレにしては豪華すぎるよ。
こんなトイレでは落ち着いてできないではないか。
二つ目はお風呂。これまたでかいお風呂で大浴場である。もう温泉の域だ。これも一人で使うんでしょ?寂しくなるなぁ……
俺は若干目眩をお越しながらフカフカ過ぎるソファに座った。
「お気に召しましたか?」
ニコニコしながら話しかけてくるアルナイルさん。
「………………………………僕には勿体なさ過ぎるくらいだよ」
疲れた顔で呟く俺にアルナイルさんは衝撃をうけた顔をする。
「何をおっしゃいますか!ユアルス様のようなお方にはこれが普通です!!まだ足りないくらいです!」
それを聞いた瞬間倒れるかと思った。
そうだ………俺は仮にもこの国の王子だった。
すっかり忘れていた。
「そうなんだ……でももう十分だよありがとう」
弱々しく笑うとまだ不満そうな顔をするアルナイルさんであった。
このあと他の部屋も見にいったがどれもあり得ないほど豪華すぎだった。
俺はここで暮らして行けるのだろうかと不安になった。