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第四王子の奇行物語  作者: 秋鐘 要
幼少編
14/31

13話

この庭にいるとなんでかいつまでこのままなのだ思うようになった。まだ五歳だけどたとえ王子だろうとなんだろうとそのうち働かなきゃいけなくなるわけでそれを思うとこんな風にのほほんと暮らしててもいいのかどうかと不安になってくる。

それに気づいたんだ。

俺ってこの世界のこと何にも知らないことに。

しかも第四王子ってどうせ跡を継ぐわけじゃないから何かをしなきゃいけない。何がしたいかなんてまだわからないけどでもこのままではいけないとは感じているのは確かである。


それに折角の新しい人生を無駄に過ごすなんてこと出来ない。しちゃいけない。

なら、何をしたらいいだろうか。やっぱり冒険者とかかな。


そう思うようになった今日このごろ。

新しく習得した雲でつくったシャワーで花たちに水をやりながら考えていた。


ちなみに雲は赤ちゃんのころに雨雲を散らしたことをふと思い出して雨の日にもう一度やったらできた。

それで母様に“天候を操れる魔法がもしあったらどうなると思う?”って聞いたら“それは世界が崩壊するかもしれないわ”って言われたから滅多に使わないことにした。けど小さい雲くらいなら大丈夫だろうと前々からジョウロが無くて困ってたからミニ雨雲を替わりとして使うことにしたのだ。


あぁこんなことはどうでもよくて。

将来だ。救いはまだ五歳ってことでこれからいろいろと学べばまだ間に合うということだ。

アルナイルさんに頼んでみる必要があるだろうか……


なんて複雑そうな顔で悩んでいたときだった。

勢いよくこの庭に続く扉が開いて誰かが入ってきた。

びっくりして反射的に雨雲を散らす。


「あ、カストル兄様」


勢いよく入ってきたのは久しぶりに見るカストル兄様で後ろからアルナイルさんとエルヴィスさんが入ってきた。


三人は呆然と庭を見る。


どうしたのかと三人に近づくといきなりカストル兄様に肩を捕まれ心臓が止まるかと思った。


「これはお前がやったのか?!」


すごい形相で聞いてくる。


あれ……悪いことだったかな。

なかなかの権力をもつらしいカストル兄様にそう言われると不安になってくる。


「ぼ、僕だけど……ダメ…だったかな?」


「ダメ?!なわけないだろう!素晴らしすぎる!!」


満面の笑みでそう褒めるカストル兄様についつい嬉しくなってくる。


よかった……怒られるかと思った……。


「ユアルス様素晴らしいです。綺麗なお庭になりましたね」


アルナイルさんも満面の笑みで褒めてくるので俺も微笑みながら大きく頷く。

隣にいたエルヴィスさんも微笑んでいて嬉しくなった。


その日はずっと庭について話していた。



───────────────



その日の夜。

庭について褒めてくれた三人のおやかげで終始笑顔の俺。

さぞや気持ち悪かっただろうが止まらなかった。


ソファに座ってただぼーっと天井を眺めていた。


「ユアルス様」


アルナイルさんに声を掛けられ椅子に座っていたアルナイルさんを見た。


今日もやっぱりかっこいいアルナイルさんは立ち上がり俺に近づくといきなり膝をついて俺を見上げた。


なんだなんだ?!

どうしたんっすかアルナイルさん!!


いきなりのことで驚いていると


「ユアルス様。ユアルス様は甘えるということを知らないのではないでしょうか。ですのでもっと私を頼ってもいいのですよ」


なんてことを言ってきた。


いやいや、ものすごく甘やかされて育ってきているのですがアルナイルさんよ。

引きニートまっしぐらのこの人生ルート誰が甘えてないなんて言えるだろうか。

前世で言えばもう勉強してもいい年なのにのほほんと生きてる俺のどこが甘えてないなんて言えるだろうか。


「アルナイルさん。僕はもう充分ですよ」


そう言うとアルナイルさんは驚愕したらしく目が真ん丸になった。


「何を言っているんですか!!!それに私のようなものに“さん”なんて……ユアルス様!貴方は欲求というものがおありません!!もっとやりたいことなど言ってきてもいいんです!いえ、言ってください!!」


凄い剣幕で捲し立てるアルナイルさん。

唖然とアルナイルさんのことを見ていた俺の顔はさぞや可笑しかっただろう。


「えっと……」


困った。やりたいことは考え中だった。

明らかになにかやりたいこととか言わないとダメな雰囲気にうーんと必死に考える。


やりたいことなんてあったか?やりたいことねぇ……


「あ……」


思い出した。

俺が声を漏らすとアルナイルさんの顔は輝いた。さぁなんでもいいなさいとでも言うかのような顔だ。


「あの、その……勉強を…したいのですが」


俺は俯き加減に呟いた。


「勉強……ですか?」


俺は恐る恐る頷く。

やっぱり図々しかったかな……


「出来れば……なにか剣か何かも…出来れば嬉しいです」


そうなのだ。俺は他の人に比べて魔力量が少ないらしいのでこの城を出ていったことを考えると少しでも剣か何かを出来てたら便利だなぁと思ったのだ。

この部屋にあった本を読む限りでもやっぱり魔物はいるようだし。

この世界で生きていくんならそれ相応の技を身に付けなければならない。


「剣……勉強…ですか」


さっきまでの勢いが嘘のように放心状態のアルナイルさん。

やっぱりダメなのかな…五歳じゃまだ早いとかかな


「ダメならいいんだ……他のを考えるよ」


しょぼんとして思考を変えようとしたら


「まさか!ダメなわけがありません!!」


とまた勢いをつけて今度は俺の手をとって熱弁をする。


「ですがそんなことでいいのですか?もっと……こう…遊び道具が欲しいとか」


なんつー欲求だよ。そんなものより勉強道具か掃除道具が欲しいよ。

俺はぶんぶんと首を横にふる。


「そ、そうですか。では…他になにかあったらいつでも頼って下さい。私の存在はユアルス様のためにあるようなものなのですから」


大袈裟だよアルナイルくん。

でも、ほんとに頼りにしてるぜ。



俺は将来のための一歩を踏み出した気がしてそのうち始まるであろう久しぶりの勉強と剣の稽古に胸を踊らせるのだった。

なんか毎回毎回長かったり短かったりしてすいません!

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