12話
「俺さぁ最近ユアルスに会いにいってない」
不貞腐れながらそう呟くカストル。
山積みになった机の上で頬杖をついてむすっとした顔でこっちを見ている。
「アル~ユアルス最近どうよ?」
「最近は……雑草だらけだった庭を開拓してる」
どこか嬉しそうに話すアル。
こういう表情をするようになったのはユアルス様の従者を勤め始めてからだ。
「庭?……あぁあの…なんでユアルスがそんなことを?」
「エルザ様が綺麗にしたら喜ぶからっていっておっしゃってた」
その時のことを思い出してるのか嬉しそうな顔をしている。
「実は初めてユアルス様自分でお願いしてきて感動してしまった」
「初めて?そういえばユアルスって最近は頷いたりするくらいしかしないもんな……もっと我が儘いっていいだろうに」
三人でうんうんと頷く。
ユアルス様は最近口数が増えてきて見ていて嬉しくなってくる。
時々みせる笑顔はエルザ様譲りの太陽のような笑みでついつい見とれてしまう。
五歳にしてはとても大人しく欲求が少ないと言うか………子供らしい感じがしないと思う。
「小さい頃から何かを感じ取ってしたいこともしたいとは言えなくなってるのかもしれない。何か……願いを聞いてやろうか」
カストルが遠い目をしながら呟く。そして不意に頷くと立ち上がり部屋を出ていこうとする。
「おい、どこ行く」
「もちろんユアルスのところさ」
思い立ったらすぐ行動。それがカストルという男である。
当たり前という表情で言う。
アルと俺は一つ溜め息を吐いて部屋をでるのだった。
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コンコン
「ユアルス~!」
返事を待たずに一気に入るカストル。
さすがに待った方がいい気がするのは俺だけだろうか。
「あれ……?」
部屋に入ると誰もいなかった。
いままでいないなんてことはなかったので少し驚いてしまう。
「あぁ…最近ユアルス様はお庭の方にいるようになったんだよ」
「へぇ……そんなに庭が好きなの?」
「俺はまだ完成を見てない」
あのユアルス様が造った庭か……どんなんだろ
カストルも気になったのかまた急いで部屋を出ていった。
今度は俺も黙って続いた。
さて、あのユアルス様が望むモノとはなんだろう。