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第六話

ちらちらちらちら。

本人は盗み見のつもりなんだろうが、全く隠れていない。

硬派なコイツならいっそガン見しそうなものだが、わりと繊細な質なのか。

どんどん余裕が無くしてきたらしく、様子を窺うのが精一杯なんだろう。

演技のはずの剣の手入れ、その手はさっきから止まっている。

物言いたげに見つめる視線は何とも切ない。


「ジナム、何見てんのー?」


聞かなくても知っているが敢えて質問。

悪趣味ながら青年の戸惑いを堪能した所で真後ろから声をかける。

相当びっくりしたらしく、ジナムの体が大きく跳ねた。

弱点である女の子を前にした時よりも激しい反応。

どんだけあの一点に集中してたんだ、コイツ。


「ゲイル、足音消して近づくのは止めろ……!」

「いつもは気付くじゃん……で、何見てたの?」

「……言わなくとも気付いているだろう」

「どうだろうねー。いやあおっさん、さっぱりわからんわー」

「……とぼけるな」


コイツが得意とする剣みたく切りつけるような眼差し。

おー怖い怖い。どうしてうちの野郎共はこう真面目揃いなのか。

もうちょっと力抜かねーとしんどいぞ。

ジナムの場合、機嫌悪いのも手伝ってるだろうけど。

その原因は明白だ。奴の視線の先の二人。

仲睦まじく話すツェリとリヒト。それが答えだ。


「いいじゃないのー。

 かわいこちゃんがきゃっきゃうふふ。

 眼福だぞ、癒し癒し」

「黙れ」


睨み付けてくるその目に殺意じみたものが宿る。

嬉しくはないけど、おっさんに向けて気済むなら良い。

たぶん大丈夫だとは思うけど、ツェリに向けられたらたまったもんじゃない。


最近ツェリとリヒトが急に仲良くなった。それがこいつは気に入らないらしい。

気持ちはわからんでもないけどね。恋人が他の奴と良い雰囲気だったら。

しかもそれがお似合いっぽく見えたら余計に。

なんかおっさんもちょっと妬けてきたかも。


「そんなに気になるなら話しかければ?」

「……できるか」


リヒトと絡む前からジナムはツェリが苦手だ。

元々の女嫌いだが、その中でも気の強いタイプが特に苦手らしい。

ツェリは基本がツンだからなあ、俺も最初は手をやいた。


ただジナムはツェリを一仲間として認めているから余計複雑なんだろう。

そうじゃなかったら、さっさとリヒトを横から掻っ攫っている。

普段抑圧してる分、ふとしたきっかけで弾けるタイプだもんコイツ。

間違い無くムッツリだと思うんだよねー、俺的に。


「……ゲイル、お前、何か変な事を考えているだろ」


疑惑を帯びた瞳は鋭さを増していた。

ポーカーフェイスには自信があったんだけど。

こいつの勘を舐めていたかもしれない。

だからといって狼狽えるほどヤワじゃないんだよね、おっさん。


「別にージナムって×××××好きで××で×××っぽいと思ってただけー」


ここはその純情利用しちまうよー、ケッケッケ。

俺の放送禁止用語連発に対し、ジナムは言葉を失っていた。

ただぷるぷると小動物のように震えている。

原因は羞恥と怒りだろうねえ、つーか半分は図星も含んでると予測する。

顔どころか首筋まで朱色。頭からは湯気が出そうな勢いだ。

綺麗に磨かれた得物を俺に向かって構え、ギッと睨みを利かせる。


「ッ叩き切る!!」

「きゃーらんぼうものぉー」


わざとおちょくるような声色。

存分に神経を逆撫でされたジナムは強烈な一撃を。

だが所詮は怒り任せ、軽々躱し、次の一手、その次もひょいひょい逃げていく。

苛立っていくジナムは二人がこちらを見ている事に全く気付いていなかった。

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