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第五話

出て行ったツェリさんを見送り一息吐く。

ばれた時はどうなるかと思ったけれど……

まさかあんな好意的に受け入れてくれるとは。

安心したせいか、大きなあくびが。


「……そろそろ寝よう」


話し込んでしまったとは言え、まだ夜明けは遠い。

ベッドに移動して横たわろうとした時、響くノックの音。

ツェリさん、忘れ物でもしたんだろうか。

どうぞと促す、入ってきたのは意外な人物だった。


「……ジナムさん、どうしたんですか?」


こんな時間に珍しい。何か急な依頼でも入ったんだろうか。

部屋の入り口で立ち止まる彼へ近づく。

ジナムさんは僕とは逆に魔術に極端に弱い。

だからこの魔具だらけの部屋へこれ以上足を踏みれられないのだ。


「夜風に当たろうとしたら、

 部屋の明かりが付いていたからな……眠れないのか」

「そうだったんですね。

 すみません、心配かけたみたいで……大丈夫ですよ。

 さっきまでツェリさんと話していただけなので」

「……こんな夜更けにか?」

「はい、そうですが……?」

「…………そうか」


途切れる会話。でも彼はこの場を離れない。

まだ何かあったんだろうか。

考え込む僕の頬へ彼の左手が添えられた。

尋ねようと上向く。何故か彼の顔が間近にあった。

視線が合う、世界が止まった気がした。


「……早く休め」

「……はい、おやすみ……なさい……」


ぱたん。静かに扉が閉じられる。

すぐ背を向けられたせいで一瞬しか見えなかったが、

彼の顔も今の僕と同じように熱を帯びていたようだった。

座り込む事こそなかったが、足取りは覚束ない。

ふらふらと寝台へ向かって倒れこむ。


「……ジナムさん」


つい口から出てしまった彼の名、その響きはなんとも甘い。

枕に顔を埋め、身もだえる。思い出してまたぎゅうと目を瞑った。

初めて与えられた唇はひどくあっさりしたもの。

けれど僕を眠らせてくれそうもなかった。

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