七夕のささやかな願い事
私は魔法使い。
幼馴染の男の魔法使いが二人いて二人とも友達でその中の一人はヒーロー、一人は親友ならぬ心友。
きっと戦いに出るときには、そのヒーローの魔法使いは私たちを置き去りにして戦いに命をかけて挑むけれど、もう一人はきっとどんな時にも頼りになる
ある時には救済し救済され
ある時には励まし励まされ
ある時には教え学び
ある時には戒め戒められ
ある時には慰め慰められる
そんな善き戦友になるんだろうと思う。
私はヒーロー君と同様、悪と戦う強さに長け、一方では彼はあらゆる「物」を操る術に長けていた。
そんな幸せに包まれた私であったが、
毎年私は七夕にある願いごとをしている。
笹の枝に短冊を飾る。
そこに書く願い事は、
「女の子の友達ができますように」
で何年も同じ願い事をしたのだった。
私には女の子の友達がいない。そんな願い事をしてみたところでそんな願いなど叶わなかった。みんな私より違う女の子と話をしたりどこかに行くのが好きなんだ。
それなのに、その年ごとに男の子が一人私のところに寄って来るようになった。
これを四年繰り返してから、私は一切七夕のお祝いにそんな願い事をしなくなった。
寄って来るだけならまだしもどういうわけなのか切っても切れない関係になり、しかもそれが一つで終わらないという始末。
女の子の友達が欲しいというささやかな願いが叶えられないどころか
私の将来を覚束なくさせるような男たちがいっぱい付き纏うという事象に人生が脅かされ始めるのである。
まず一人目である。
この男性は女性がないと生きていけないほど重度の女性依存症だというのに、その甘いマスクとは裏腹女性を愛するということを一切知らない冷徹さを持ち合わせた女性の敵ともいえる男。子供のころはずば抜けた頭脳の持ち主として大人からも子供からももてはやされていたが中学2年生のあたりからエロティシズム以外に興味のないコミュ障の変態男としてクラスメートの全員から一目置かれるようになった。しかし容姿端麗で男性の魅力があふれ彼をほうっておける女など存在しないといっても過言ではない女泣かせな男であった。
私は魔法使いとして彼のどこか内弁慶な性格を開放に導く役割を担ってしまったのであった。
そして二人目。
この男性はとにかく魔法使いフェチで魔法使いに憧れ、魔法使いを題材に漫画を書き、魔法使いを題材にコスプレをするほど魔法使いフェチで、私が魔法使いとしてその願い事を叶えることとなってしまったほど重度の魔法使いフェチによる病気にかかりそうになっていた。お陰で勝手に自分だけの妄想を漫画にしたためそれを何巻も何巻も送り付けてくる始末。更には幼馴染の魔法使いたちにまで私に送り付けたのと同じ内容の漫画を無料でプレゼントしてしまう始末。それを送り返すとどうやらペナルティーとしてカミソリが送られてくるという恐ろしい事態になるから要注意だ。
そして三人目と四人目。
二人とも前世は犬でご主人に冷たく育てられた記憶が残っておりながらも一応彼の老衰による死を悼んでいる。血のつながらない兄弟で、あらゆるストレスを抱えることになったため私が魔法使いとしてそれを少しだけ癒すこととなった。