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9話

しかして、プロというのは、いやはや。


鏡の中にいるのがもはや自分ではなく、見知らぬ異星人のようで、私は言葉を失った。


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。


「どう?似合うと思うけど。」

「私、生きてますよね。」

「はい?」

「いや、あまりの変貌ぶりに、ここは天国かと・・・」

「あなた、面白いわね。」


面白がらせる気は、さらさらないんだけど。


「歳、いくつだっけ?」

「35歳」

「え、年上!?犯罪だわ、その女の捨てっぷり。そのうえ、色白で肌がモチモチなんて、死刑ものね。」

「・・・・ハッキリいいますね。」

「当たり前じゃない、美容師なんてキレイにしてナンボの商売よ、チャラチャラお世辞言ったところで、キレイになってなきゃ明日から客が来ないもの。」

「そうですね。」

「決めた。服も見立てちゃろ。この後予約入ってないし、出かけるわよ。」

「えっ?」

「せっかくそこまでキレイに仕立てたのに、そんな野暮ったい服着てられたんじゃ、あたしの腕が泣く。どうせ似たり寄ったりでしょあなたの服。」

「はぃ・・・」


彼女は、店長ーあたしもう上がるからーと、よく通る声で早退を宣言。奥に引っ込んだかと思うと素敵なジャケットを羽織って戻ってきた。


「何ボーっとしてるのよ。行くわよ。」


私、翔君のお姉さんに会ってから、「はい」とか「ええ」とか一語文以上の会話が成立していないきがする。

そのくらいパワフルで、嵐に巻き込まれたみたいにヨロヨロと彼女に着いていくのが精一杯。


容赦なく近くのセレクトショップに連れ込まれ、これまで試したこともないような服を着せられた。


いやいやムリムリムリムリそんな可愛らしい服なんてと拒否すると、ツベコベ言わずにさっさと着ろ!と恫喝された。



本日2回目ですけど。


しかして、プロというのは、いやはや。


「私の目に、狂いはなかったわ。」


お似合いですぅー、という、ショップ店員の言葉にも嘘は感じられない。


第一、またまた異星人光臨かと思うくらいの変貌ぶりで、言葉もでない。


「・・・似合う。」

「でっしょー、これで私の腕も生きるってものよ。」


そこ?そこなんだ、この人。面白い。嵐のように私を連れまわしておいて、結局、自分の腕自慢するんだ。私の周りにはいないタイプだなー。


「なによ。」

「いや、面白いと思って。」

「さっきまで尼っぽかったのに、生意気ね。」

「素材の良さを引き出していただいて、感謝します。」

「当然ね、私、腕がいいもの。」


どこから湧くのか分からない自信は、確かにオーラになってにじみ出ていますよー。

とは言えず、ニッコリ笑うだけにしておいた。


彼女もこれまたニッコリ笑う。あら、可愛い。


「お礼に食事でもいかがですか?」というと、それなら何か作って欲しいといわれ、こんな愉快なお姉さんを紹介してくれた翔君にもお礼をしたいし、自宅でホームパーティーを開くことにした。


そうだ、ついでにオーナーも招待してしまおう。


心のメモパッドに入力して、彼女と別れた。

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