表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

7話

指定された場所は健ちゃんところの物件で、おじさんが送ってくれた。


かなり改装が進んでいる。オシャレな内装だ。


壁は漆喰のようなものが塗られていて、コテで盛り上げた部分が波のように見える。


テーブルは使い込まれた木の風合いがワックスで光り、それにあわせた椅子も表情がある。


すごく居心地がいい。長居したくなる。経営側には迷惑だけど。



「こんにちは、猪瀬さん?」

「はい。河合さんですか?」

「うん。今日はわざわざありがとう」

「いえ、こちらこそ。あの、言われたポトフ作ってきました。」

「お、可愛い鍋だね。ル・クルーゼだ」

「この鍋、祖母の形見なんです」

「へぇ、おばあ様も料理が好きだったの?」


じゃぁ、こっちへと言いながら厨房に案内された。


こじんまりしているけど、使いやすそうな感じに好感がもてた。


オレンジを暖める。


「前は銀行員だったんでしょ?なんで辞めたの?」

「ケンカです。」

「ケンカ?」

「元カレが上司になって嫌がらせするもんですから、最後にブチギレ。」

「ふぅん。イジメるほど、君に惚れてたんだ。」

「えっ!」

「気づかなかったの!」

「・・・はい」

「そりゃ、相手が気の毒だ」


河合さんが蓋をあけ匂いを嗅ぐ。レードルでスープを掬う。

ポトフは好きで時々作るけど、人に評価してもらうのに作ったことはない。

なんだかドキドキする。


「ん。おいしい。」


詰めていた息を吐く。


「ハナちゃん、他にどんなもの作れるの?」

「えっと、どんなものを作りましょうか?」


カフェでは河合さんの作ったスイーツを出すけれど、ちょっとお腹に溜まるものも出したいらしい。

二人でメニューを考えるのは時間を忘れるほど楽しかった。


「河合さーん」


今行くーと声をかけ、河合さんは私に手を差し出した。


「よろしく、ハナちゃん。僕と一緒にこのカフェを育ててください。」

「こちらこそ!」

「じゃ、また連絡します。」

「はい!」


いやー、こんなにトントン拍子に話が決まって怖いわー。


オレンジを小脇に抱えて自宅へ向かう。


猪瀬ハナ。35歳。独身。職業、カフェのシェフ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ