6話
幼馴染が初恋なんて、テンプレすぎて考えたくもない。
しかも、かれこれ30年近くってどうなの?
35年の人生の中で、それなりに好きになった人はいる。
でも、一番やわらかいところに健ちゃんが居座っていて、他の人の入る隙間がない。
あの田中と付き合ったのは、健ちゃんを彷彿とさせる間合いだったから。
この人だったら、健ちゃんの壁を破って中へ入り込んでくれるかもしれない期待も大きかった。
それで最後まで許したけれど、ホントに最後の最後でダメだった。
どうにも受け入れられなかった。
だから同期の子と結婚するといわれても、それほどショックは受けなかった。
結局、いまどき35年経ってもバージンのまま。
健ちゃんと付き合う見込み、ゼロ。
健ちゃん以外の人とお付き合いする見込みも、ゼロ。
結婚するもなにも、そこからだもんな、私の場合。
結婚なんかハードル高すぎるっちゅーの。
健ちゃんこそ、さっさとすればいいのに。
そうすれば、この街から出て行ける。
一人のゴハンは美味しくないね、おばあちゃん。
ずっと、このままなのかな。私。
美味しく出来たはずなのに、味がしない里芋を口の中で転がした。