14話
営業妨害も甚だしい従兄弟の無心は続いた。
オーナーに苦情が入っていたのも知ってるし、
いっそのこと言われるがままにお金を出したほうが楽になるなら、
それもやむを得ず・・・と考え始めていた。
その情熱を働くことに向けたら、かなり出世するんじゃない?と思うけど、
この人にとってそういうことではないらしい。
「警察に行こうかしら。」思わず、ハナがこぼすと
「いや、弁護士だね。弁護士。」と翔君が言う。
「え、なんで弁護士?」
「なんだっけ、みんじふかいにゅうーって言うの?人が死んだとかきずついたとかじゃないから、たぶん警察に言ってもダメだよ。」
「ストーカーってことじゃダメ?」
「ストーキングされてるの!?」
「・・・ここに来る嫌がらせだけ。」
「じゃぁ、ダメじゃん。」
「でも、あんな奴のために弁護士費用を払うのヤダー。」
「それもそうだけどさー。」
そんなわけで、従兄弟の対応に決定打が見出せずにいた。
その日もアイツは来ていつものようにグダグダとケチをつけていた。
そこへ珍しく健ちゃんが店に入ってきた。
「おい、表出ろ。」
「あぁ?」
「お前、ハゲてる上に耳も悪いのか。気の毒だな。」
健太郎、それはストレートすぎる。・・・腹痛い。
案の定、従兄弟の顔が真っ赤に染まった。
「っ、てめー!」従兄弟が健太郎を殴った。
え、健太郎なんで!?あんた、黒帯!
「ちょ、お客さん!止めて下さい!」
止めに入ろうとした翔君を制止すると、なぜか健太郎は殴られ続けた。
「やだ、健ちゃん!!!」
警官が店の中に入ってきて二人を引き離すまで無抵抗だった健太郎は、
「この人、急に殴りかかってきて。傷害罪で訴えます。」と言い出した。
けしかけたのは健太郎だったけど、先に手を出したのはアイツのほう。
間違ってない。
でも、殴られ続けるような人じゃないのに。
意図がわからなかった。