13話
「なぁ、金貸してくんね?」
招かざる客が来たと思えば、やっぱりそうか。
みるからにチャラチャラして、私に親しげに話しかけてきたのは、従兄弟の大木光男だ。
こいつの両親も時々おばあちゃんを訪ねては、お金の無心に来ていた。
と、いうか、無心に来るときしか来ないといったほうが正解だ。
そんなわけで、私はコイツが大嫌いだ。
しかもなんだ。ここは、私の職場だ。職場で金の無心か。
そういう恥知らずなところも大嫌いだ。
「お金貸すほど、裕福じゃない。」
「嘘付け。ばぁさんがタンマリ残していった癖」
「キレイさっぱり処分してったわよ。」
「・・・俺、知ってんだぜ。銀行に預けてあるの。」
「だから?」
「なぁ。返すからさー。100万貸してくれない?」
「ちょっと、アンタさ。」と翔君が割り込んできた。
「ウチ今絶賛営業中なわけ。そういう話、他所でしてくんない?」
「あぁ?ガキは引っ込んでろよ!」
「じゃぁ、大人のおじさん。」
「おじ・・、俺はまだ30だ!」
「その割りに、おでこ広いんじゃない?」
いや、それは言わんでやってくれ。彼の悩みの一つだ。
案の定、顔を真っ赤にしてるじゃないか。ぷぷ。
「で、なに。そのお金で植毛すんの?がんばるねー。」
い、痛い。腹痛い。やめろ、やめてくれ。頼む。面白すぎる。
「か、関係ねーだろ!」
「仰るとおり関係ありません。当店の営業妨害になりますので、お引取りください。」
オーナーが後を引き取り、光男は「なんだこの店!」と悪態をつきながら退散した。
「ありがとうございます。オーナー。」
「ハナちゃん。悪いけど家族の揉め事持ち込まないでくれるかな?」
「・・・・すいません。」
「ハナちゃんに事情があることは察するけど、客商売だからさ。」
「はい。」
翔君はオーナー冷てぇとかなんとか言ってたけど、それが常識だ。
しかし、後がやっかいだ。なにせ筋金入りのヒモ体質だ。
これしきのことで諦めるとも思えない。女の一人暮らしだし、防犯には力を入れよう。
お金に困らないのもいいんだか悪いんだか。ありがたいような迷惑なような。
庶民ではもてあますような大金残して死なないで欲しかった。
そのへん、強く抗議したいわ。おばあちゃん。
ごぶさたしております。藤本です。
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