11話(健太郎の独り言)
ハナとは幼馴染だ。
ハナは可愛かった。今はもちろん、昔も。
アイツ、知らねぇんだよな。俺が、色々色々、いろいろいろいろいろいろいろいろいろ、我慢しているの!!!
俺の受難は、高2の時だ。
それまでお互いに色気なんて全くない、兄妹みたいなもんだった。
たまたまアイツが熱出した時、イトさんに頼まれて部屋にお粥を持ってったんだ。
もうすぐ受験だって時期に熱出しやがって。
心配してたんだけどよ、クークー寝てんだ。アイツ。39℃だか出てたらしいから、当たり前なんだけどよ。
それがよ、その。
パ、パジャマがちょっとはだけてたんだよな。
見ようと思ったわけじゃねぇ。そんなことは断じてない。空手の神様に誓ってもいい。
で、直してやろうと思って手を伸ばした瞬間、妙に色っぽい声でうなったんだよ。
そこにだ、様子を見に来たイトさんだ。
テンプレすぎて、笑うだろ?
もちろん、やましい気持ちはなかったし、後からイトさんの誤解は解けた。
それからなんとなく、一番近くて一番遠くなっちまってよ。ハナが。
自分の気持ちに気づいたときには、手を出しにくくなってて。
田中と付き合い始めたときには、ハラワタ煮えくりかえるような辛い日々だった。
じゃぁ、素直にハナを捕まえときゃよかったんだが、ハナから目を逸らすために遊んでたこともあって、えらそうなことは何もいえなかった。
田中と別れたときは、正直嬉しかった。
ハナは泣いてたし、可哀想だったけどな。
同じ頃、俺はイトさんにとんでもない事を聞かされた。
イトさんがやり手なのは知ってたが、そんな金残してどうすんだよ?
しかも、なんで俺に話すんだ?
「あら、健ちゃんはハナに惚れてるもの。食いつぶしてハナが泣くようなことはしないでしょー?」ってよー。
イトさんの信頼は嬉しいが、俺、そんな自信ねぇよ。
「ねぇ、健ちゃん。いつまでハナを遊ばせておくつもり?」
今日のハナを見て、そうイトさんに言われた気がした。
アイツちゃんと鍵閉めたかな?時々抜けてるから。
あーぁ、どうすんだよ。俺。
って、いったい誰に向かって、ボヤいてんだろうな、俺。
はじめまして、藤本金巳です。
タグをつけずに細々と描き始めたのですが、お気に入りにして下さる方がいることに感謝します。楽しんでくださると嬉しいです。
これまで毎日更新してきましたが、これからは時々お休みが入ります。
こんなに長く二人の生活を描く予定じゃなかったので、二人がどうするのか作者にも分かりませんが、二人の生きたいように生かしてあげたいので、今しばらくお付き合いください。