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地雷狙い

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 むう……サブカル系、ぴえん系、地雷系……なんかまた〇〇系っていうカテゴリーが増えたねえ。

 ひと昔前の熱血系とか清楚系とかは想像しやすいんだがなあ。文化の移り変わりとかはかくも目まぐるしいものだな。

 ふむふむ、そして地雷系というのは端的にいうと、触れたくないとか関わるとやばそうな雰囲気をかもすタイプだと。なるほど……素人目にも黒やピンクがメインで、危ないチョコレートのような香りが漂ってくるな。

 地雷もチョコレートも、触れたら最後、多大な影響を受けて病みがちになってしまう。病的な要素をかくも小悪魔的要素と絡め、アピールに落とし込んできたファッション……という印象かな。


 しかし、〇〇系ってあくまで傾向というのがミソだね。

 〇〇、とはっきり言わないあたりに、多少の差異は認めてほしい、承認欲求が見え隠れしている気がする。

 〇〇というはっきりした型で派生も認めないなら、求められるものがはっきりする分、弱点もまた鮮明になる。いっときの覇者にはなれども、いずれは研究されて攻略される。

 再び注目を集めるには、当時を知る者とともに攻略が忘れ去られるのを待つか、あるいはその根っこ部分のみを保ちながら、枝葉を適切なものへ変えていくかとなるだろう。

 先に地雷の話をしたが、これらもまた本来のあり方から離れて独自の道を探し出しているのかもしれない。

 少し前に友達から聞いた話なのだが、耳に入れてみないか?


 友達は仕事柄、よく革靴を履いて出勤するという。

 靴にこだわりはなく、ただ仕事で必要だから用意しているだけ。手入れなども、目立つダメージが発生してから間に合わせでどうにかしていく、という不精ぐあい。愛好家の目からすれば文句のひとつやふたつ、つけられてもおかしくないスタイルだったという。

 その日は、少し表面の汚れた革靴へ黒クリームを塗りなおし、せっせと外回りにはげんでいた。しかし、いざ仕事を終えて帰ろうとしたおり、ふと足裏の一部へ妙に食い込む感触が。

 石だった。

 この靴も長く履いており、裏側のみぞが削れて平らな部分が増えてきている。そこへ小石が食い込んで、土を踏むたびにずいずいと足の裏を圧していたんだ。ぽろりとこぼすと、わずかなへこみが靴裏にできあがっている。

 めんどくせえな……とぼやきながら家路を急ぐも、いったんへこんでしまった部分は、新たな石をまねく呼び水ともなってしまう。


 家に帰りつくまでの30分あまりの徒歩で、友達は新たに3個の石を得て、そのたびに引きはがした。

 玄関で靴を脱いでいると、石の集中した個所は明らかな陥没を見せる。大きさそのものは小指の先にも到底及ばない、小さなもの。しかし周囲の靴裏たちに比べれば、明らかなクレーターだ。

 手入れ嫌いな友達でも、明確なダメージ用グッズは持っている。使っているのは小さいシートタイプの補修材で、傷の大小で柔軟に対応できるタイプだ。それほど消費はなく痕を埋めたものの、悩みはまたやってくる。


 今度は靴の内側。中敷きの部分だ。そこが日を追うごとに、傷むようになっていった。

 具体的にいうと、数キロほど歩くと靴に石が入り込んだような違和感を覚え、脱いで確かめてみると、かけらが入っている。

 けれどもそれは石にあらず、クッション部分を含んだ中敷きの破片であるとわかるんだ。

 中敷きとなると、自分以外はなかなか見ない。ならば、自分が我慢さえすればいいと、当初友達は手をくわえずにいたそうなんだ。

 靴は三足のローテーション。例の靴に足を入れるのは三度に一度といったところで、我慢できないこともない。まだ履けるのに、新たに靴を買うのは面倒だと、そのまま友達は仕事へ取り組んでいく。


 そこから二か月あまりが過ぎた。

 いよいよ暑さ強まる夏場を迎えるころ。例の靴を履いていた友達は、またしても帰り際。自宅を目前にして、にわかにズキンと強い痛みが足に走るのを感じた。

 つい止まってかがみこみ、じっと痛みに耐えねばならないほど。幸い、暮らしているアパートの敷地内ということもあり、ほとんど人の目がなかった。靴を脱ぎ、けんけんする要領で部屋へと戻る。

 戸を閉め、あらためて靴の中をのぞいてみた。ちょうど、補修したところの裏側の中敷きが完全にはがれているばかりか、小さいとげのようなものが張り出しているのが見えたのだとか。

 補修する際、ごみなどはしっかり取り除いてきれいにしたはず。このようなものが入り込んでいる隙などないはずだ。なのになぜ……。


 無精な友達も、気味悪さには勝てなかった。

 即刻、その靴たちを燃せるゴミの袋へ突っ込んでしまう。幸いにも次の日はゴミの回収日。この得体のしれないものと即おさらば……といけばよかったのですが。

 アパートのすぐそばにあったゴミ捨て場。友達の近くのはネットをかぶせるタイプだったのですが、一晩のうちに他のゴミもろとも、ネットの内側から這い出るように植物の根らしきものがびっしり張り巡らされていたようです。

 収集に支障が出るし、通行人にも多く見られてやじうまも集まる騒ぎになってね。友達ものぞいてみたらしい。

 どんどん取り除かれた根の大元にあったもの。それは友達の出したゴミ袋で、穴だらけになったそれからは、入っていたはずの生ごみはほとんど消え失せていた。

 代わりにぶっくりと膨れたあの革靴からは、無数の根が飛び出していたという。


 石が引っ付きにかかったときから、すでに根たちの計画は始まっていたのかもしれない。その石こそ友達にとっての地雷だったのだろうな。

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