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100日後、巨大隕石落下  作者: 橘靖竜
第一章 隕石発見

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Day97 報告禁止

《日本・JAXA/ISAS 相模原キャンパス(軌道計算・惑星防衛)》


モニターが青白く光る。

観測ログのグラフが、わずかに歪んでいた。

その波形を見て、城ヶ崎悠真は思わず息を止めた。


「……誤差じゃない。」


隣のデータ一覧に、AIが自動解析した結果が表示される。

Impact Probability:9.2%。

昨日より倍近い値だ。


「主任……!」

振り向いたが、白鳥レイナの席は空だった。

会議に出ているらしい。


モニターの隅でアラートが点滅する。

「NASA観測データ同期完了」。

アメリカでも、同じ値を出していることを意味していた。


――もう、“偶然”ではない。



《JAXA管理棟 会議室》


白鳥は、上層部の幹部たちを前に冷静に説明していた。

「NASAとの照合結果。オメガの衝突確率は―約10%―に上昇しています。

これは統計的に無視できない数値です。」


部長が腕を組む。

「まだ確定ではない。外部発表は控えろ。」


「しかし、数値がこれ以上上がれば“接近確定”と判断するべきです。」


「“判断する”のは我々だ、白鳥君。」


白鳥は唇をかみしめた。

「では、少なくとも内閣には早期報告を――」


「やめておけ。」別の上司が遮る。

「“万が一”違っていたら誰が責任を取る? 君か? 政府か?」


沈黙。白鳥は何も言わず、会議室を出た。

その表情には、冷静さと怒りが入り混じっていた。



《JAXA解析室》


白鳥が戻ると、城ヶ崎が立っていた。

顔は青ざめ、手にはメモリデバイス。


「主任……これ、見てください。」


画面に映る軌道グラフは、まっすぐ地球に伸びていた。

「この角度、誤差ゼロ。計算上、“衝突確定”です。」


白鳥は目を見開く。

「このデータ、どこから?」


「NASAとの同期データです。

AIの補正値も一致しました。」


白鳥は震える声で言った。

「……これを公式報告に回した?」


「はい。でも、さっき上司から“提出禁止”のメールが。」


画面にはその文面が残っていた。


“社外持ち出し禁止。データ削除のこと。”


「削除……?」白鳥の声が低くなる。

「このデータは命に関わる。隠すなんて……。」


「主任。もし、このまま上が黙殺したら、僕たちはどうしますか。」


白鳥はしばらく沈黙し、ゆっくりと言った。

「……私は科学者として正しい手順を踏む。

でも、あなたが“別の手段”を取るなら――止めない。」


城ヶ崎の目が揺れる。

「それって……。」


「ただし、誰かを傷つけるなら、それは正義じゃない。」


白鳥は背を向けたまま、静かに言った。

「――今夜のことは、何も見ていない。」


城ヶ崎は拳を握った。

真実を出すか、黙って従うか。

その選択を迫られていた。



《日本・総理官邸》


夜。鷹岡サクラは官邸の執務室で報告を受けていた。

「オメガの確率が上がっています。」と藤原。


「どの程度?」


「10%前後。まだ“正式報告”ではありませんが。」


サクラは書類を置いた。

「つまり、JAXAの中でも意見が割れてるってことね。」


「はい。公表すればパニック。黙れば責任問題です。」


広報官の中園が口を開く。

「総理、SNSではもう“NASAが隠してる”という噂が拡散中です。

“オメガ”という単語も出ています。」


「情報封鎖が逆に“火”をつけたのね。」


サクラは考え込みながら言った。

「真実は隠せば爆発する。でも、出せば恐怖になる。

――どちらも地獄ね。」


藤原が冷静に言う。

「その“間”で耐えるのが、政治家の仕事です。」


「そうね。けど、国民がパニックになる前に、信じる言葉を準備しておかないと。」


サクラは静かにメモに書いた。


“隠すのではなく、守るために遅らせる。”


その言葉が、果たして正しいのか。彼女自身にも、まだ分からなかった。



《日本・JAXA/ISAS 相模原キャンパス 観測棟屋上》


深夜2時。

城ヶ崎は一人、夜空を見上げていた。

月のそばに、ほんの一瞬、流れる光。

“あれがオメガかもしれない”と想像して、背筋が震える。


スマートフォンの画面が光った。

SNSアカウント作成ページ。

指が、ゆっくりと名前欄に打ち込む。


ユーザー名:@truth_is_light(真実は光)


投稿欄に、まだ何も書かれていない。

だが、城ヶ崎の胸にはもう決意があった。


「国民には、知る権利がある。」


風が吹いた。

夜空の向こう、見えないオメガが地球へ近づいている。

そして、ひとりの青年の“沈黙”が、崩れ始めた。



本作はフィクションであり、実在の団体・施設名は物語上の演出として登場します。実在の団体等が本作を推奨・保証するものではありません。

This is a work of fiction. Names of real organizations and facilities are used for realism only and do not imply endorsement.


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