Day77 総理の声
《総理官邸・控室/午後6時23分》
鷹岡サクラは鏡の前に立ち、手に持つ原稿を見つめていた。
手が、少し震えている。
天野秘書官補
「……総理。もうすぐお時間です。」
サクラ
「……驚いた?私も、怖がることあるのよ。」
天野
「いえ……人間ですから。」
サクラは小さく笑った。
その笑顔は、どこか痛々しい。
(国を守るなんて、
本当は誰にもできない“無理難題”なんだ……
それでも、やらなくちゃいけない。)
深呼吸ひとつ。胸の奥の不安を押し込む。
《首相官邸 記者会見室/午後7時ちょうど》
ライトが一斉に照らされ、
サクラがゆっくりと壇上に立つ。
会見室は、普段より静かだった。
誰もが“総理が何を言うのか”を固唾をのんで見ている。
サクラ
「こんばんは。内閣総理大臣の鷹岡サクラです。」
一秒置いて、彼女は国民へと語り始めた。
<サクラ 緊急会見(全文・要約>
「今、多くの方が、
“いつもの日常が崩れていく”ような怖さを感じていると思います。
その気持ちは、当然のものです。恐れを抱くことは、弱さではありません。」
「私自身も、母として、
そして一人の日本人として、恐怖を感じています。」
「SNSで“VIPだけ避難している”
“落下地点を知っている人がいる”という情報が拡散していますが、
これらはすべて事実ではありません。
現在、どこにも“確定した落下地点”はありません。」
「政府は、皆さん一人ひとりを決して見捨てません。
科学者は昼夜を問わず観測と解析を続け、
国際社会とも緊密に連絡を取っています。」
「この危機を乗り越えるために必要なのは、
正しい情報と、互いを思いやる心です。」
「どうか、ひとりで恐れないでください。
私たちは必ず、皆さんと共に立ち向かいます。」
最後に、ほんの少し声が震えた。
「この国を……守り抜きます。」
会見室は静まり返ったまま、記者たちは言葉を失ってサクラを見ていた。
《日本国内・リアルタイム反応》
◆ 都内の家族
母「……なんか、ちょっと落ち着いた気がする。」
父「いや、怖いのは怖いよ。でも……あの人が言うなら。」
小学生の娘「ねぇ、お母さん。 隕石って本当に落ちるの?」
母「わからないよ。でも……一緒にいれば大丈夫。」
◆ スーパー店員・若者
「総理……泣きそうだったな……」
「うん、なんか……“人間”だったな。」
レジの前で泣き出す女性客もいた。
「怖かった……ずっと誰も助けてくれないと思ってた……!」
「SNS上の反応(肯定/中立/否定が混在)」
「サクラ総理の会見、久々に“心で聞いた”感じ」
「母親としての言葉、刺さった……」
「でもデマは止まらんよ。結局何もわかってないじゃん」
「“落下地点は未確定”←それが一番怖い」
「政府は信用できない派と信じたい派で完全に割れたな」
「#鷹岡サクラ #会見」
「#オメガは終わりじゃない」
SNSは“希望”と“怒り”で真っ二つに割れた。
《海外メディア・世界の反応》
BBC
「日本の首相、感情に踏み込んだ異例の会見。国民の不安は依然として大きい」
CNN
「日本は冷静さを保とうとしているが、国際社会では“情報の遅さ”を懸念する声も」
中国SNS
「日本政府は落下地点を知ってるはずだ」
「オメガは太平洋側に来る。間違いない」
アメリカ
「ルース大統領はまだ沈黙。なぜ?」
「この状況、日本だけじゃなく世界中の問題だろ」
世界は、サクラの言葉に“希望”を感じつつも、不安と疑念を完全には拭えなかった。
《総理官邸・廊下》
会見後、サクラはふらりと壁にもたれた。
天野
「総理、大丈夫ですか……?」
サクラ
「……もう、嘘をつく余裕なんてないわ。
本当のことだけで勝負するしかない。」
藤原危機管理監
「総理……国民の心は、確実に動きました。
でも、これでデマが消えるわけではありません。」
サクラは小さくうなずく。
(まだ“嵐”はこれからだ……
でも、この一言で誰かが救われたなら……
それだけで十分。)
本作はフィクションであり、実在の団体・施設名は物語上の演出として登場します。実在の団体等が本作を推奨・保証するものではありません。
This is a work of fiction. Names of real organizations and facilities are used for realism only and do not imply endorsement.




