2/3
番外編②兵士たちの寄り道
―門兵リオ視点/本編第三章の裏側―
城門の見張りは退屈な仕事だ。
けれど、最近はちょっとした楽しみができた。
「リオ、今日も行くのか?」
「もちろんだ。香草茶を飲まなきゃ夜番がもたねえ」
そう言って同僚と連れ立ち、城下へ降りる。
向かう先は――雑貨屋リリィ堂。
ここの茶は不思議だ。
ただの香草なのに、飲むと体の芯が軽くなる。
ミナの笑顔を見ると、どんな疲れも吹き飛ぶ。
「……なあ、あの子、なんでこんな店にいるんだろうな」
「おまえ、口説く気か?」
「まさか! 王子殿下が気に入ってるって噂だぞ」
「え、マジかよ!?」
そのとき、店の扉が開いた。
ミナが「どうぞ」と笑って出てくる。
香草の香りと一緒に、胸の奥がふわっと温かくなる。
――ああ、そりゃあ王子も惚れるわけだ。
リオは心の中でそう呟いて、
そっと湯飲みを傾けた。




