鬼畜(91)
え・・
「――ぇっ??」
予想だにしないその言葉につい声が出てしまった!空は、やっぱりって顔をして目を伏せる。
「ぅ!」
咄嗟に口を手で塞ぎ、体をちぢこませ空をじっと見た。
「・・いいよ、驚くよな。」
ふっ・・と笑う空に、
「どー・・ゆう事かわかんない。」 力なくそう言う。
笑えない。 こ、殺したって・・?・・・ガキ・・って子どものことだよね?
「・・・・
・・彼女だった女ハラマせて、・・ガキ・・堕ろさせたって事。」
「え・・」 っ・・ 口を押さえた手に力が入る。
お・・堕ろした
・・・ってことは・・
・・・・・
・・「ち・・中絶・・・・?」
「・・・ああ」 空の声も力がない・・。
「!!」
そ・・
・・っか・・
やっぱり・・・ち・・中絶・・・したんだ・・彼女さん。
ドキ ドキ ドキ ドキ
なんだろ・・心臓の動きが早い・・っ
聞いたことはある・・
まだ、赤ちゃんになる前に・・そういう手術があるって事。
でも
・・・
「殺した・・なんて・・」
「?!」 その言葉に、空の目つきは変わった!
「――・・ っ、あん時も。」
「?!」
「あん時っ、だって
――っっ! まだ、早い時期だから、人じゃねぇって。生命として、扱ってもらえねーって。
だから、っ
中絶は、人殺しなんかじゃねぇってっ、仲間も、医師もそう言うけど!
んなワケあっかよ!心音鳴ってたろ!なんで、それで人扱いされねーんだ?!
――っ!!マジ、あんなの人殺しだっ!」
「!!!」
空・・っ・・
叫びにも似たその言葉を、空は、拳を握り締め、体を震わせ、瞳を曇らせながら・・言う・・っ。
そんなに、そんなに苦しんで
そんなに自分追い込んで、・・
「 空は、その子に・・
産まれてきてほしかったんだね。」
その姿を見て確信した私の口から、自然とその言葉が出てしまってた。
「!!」
「え・・」
空・・? え・・??
「あ・・」
その鬼畜の瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。
たぶん、自分でも気付かなかったんだろう。
・・・その涙に、一番驚いているのは彼本人だったから。
「おれ・・」
涙を指で拭き取りながら、バツの悪そうな顔をして向こうを向く空。