鬼畜(162)
「絵里子ぉっっ!」
それを黙らせたのは低く響くこの声。
そして、その行動。
「―――えっ??」
泣き叫ぶ絵里子さんを。
投げつけるために掴み持ってる手を。
オーナーは抱きしめていた。
「俺が居るから。」
その言葉は
低い声だけど優しく響く。
「カイなんて嫌い―――・・っっ」
消え入るような声でそう発した言葉とは裏腹に絵里子さんの腕はきつくオーナーの首に巻きついていた。
え・・?なになに??この2人って・・なんなの??
カイってオーナーさんの名前??
目の前で起こってることにパニ喰ってると、リクさんがすかさず
「出るぞタコ。」と言って私の腕を掴んだ。
なっ、なぬ~~~~~~~~~~~~~~~(怒
なんか文句を言ってやろうとしたけど、すぐにあの地のリクさんの眼光で言葉を失った。
弱いっ・・弱すぎるぞ、私っ。
わけわかんなかったけど、取りあえずココにはもう居ない方がいいかなと思った私はリクさんの後を追って部屋を後にした。
車まで戻ると、チャラ男さんとコワモテさんがすぐに後部座席に空を乗り込ませ、
私は、空の頭が来るほうへと回り込み、その頭を膝の上に乗せる。
リクさんは2人と何かはなしをしてから助手席に乗り込むと、待機していた運転手さんに
また「出せ。」とだけ告げた。
私が窓越しにチャラ男さんとコワモテさんにペコリと頭を下げると、2人もニッコリと笑って(チャラ男さんは手まで振って)見送ってくれた。
結局のところ、あの人たちが誰なのかはわからず仕舞いだったけど、
今、私の膝の上には空の顔があって
手を伸ばせば、触れられる距離で。
「っぅ・・」
今更だけど、安堵で泣けてくる。
「・・ん」
「えっ?」
ピクッと微かに動いた体に顔を空に向けると、
そこには
あの瞳が見開かれていた。
空の・・キレイで鋭い・・まるで鬼のような瞳。
「れ・・?美未・・」
言葉がたどたどしい。
「そっ・・らぁぁぁ!!」
思いっきりその顔に抱きつくと、
「わっ!ばか!くるし・・っ!」ともがく空。
でも、そんなの無理!絶対離さないんだから!!
「薬で眠らせられてたから、いきなり騒がすと後で苦しむぞ?」
「ええっっ!!!」
リクさんの一言で、すぐに前言撤回!
すぐに空から離れ、「ごめん大丈夫?」
と聞きなおすと、
「だいじょ・・ぶじゃねぇぇっ!!痛ってぇ!なんだ??コレっ!!」
頭を両手で押さえて苦しみだしたもんだから、私までテンパって
「わぁぁぁ!ごめんごめんっ!!」と叫び出し
「てめぇーら!うるせぇぇぇ!!!」リクさんまでもが怒鳴りちらす始末で・・
車ん中は大騒動になって走って行った。