鬼畜(157)
そんな緊張の空間からやっと開放されたのは30分後で、
私達の乗った車がキッと停まった場所は、白くて高いマンションの前。
この空間から早く脱出したかった私は真っ先に車から飛び降りると、その建物を見上げた。
・・・もしかして
「・・ここ?」
「ああ・・あの女の住んでるマンションだ。」
「っ!」
や、やっぱり・・
そこに立ちつくしている私を軽くスルーしてリクさんはそのマンションの中へ進んでいく。
「待ってるか?」
太く低い声のわりに、そんな気遣いと見れるような言葉をかけてくれたのは、
ゆっくりと後部部座席から降り立つオーナー様からで。
「空は絵里子と一緒いるぜ?その場所へ行けれるか?」
「ぅ・・っ」
頭ではわかってたけど、ソレをそういう風に言葉に出されるとかなりショックをうける。
元カノと一緒に・・居る・・空。
もしかしたら・・ヨリ戻したんじゃ・・
私が行っても「なんで来たんだ?」って顔されるんじゃ・・
心が乱れる。
見ると、いつの間にか私の前まで来ているオーナー
私の答えを待っててくれてる?
「・・あ・・のっ・・」
「空になんて言われた。」
「え?」
空に・・なんてって・・
その、いっぱいありすぎてわかんねぇよっ!!
いっぱいいっぱい・・
あ、
・・信じろ・・って。ぜってぇ裏切らねぇからって。
クッと上を向いた私の顔を、目の前に居るオーナーは優しく微笑むと
「行けそうか?」
と聞いてきた。
「はい!」
力強くそう答える私の背中をまたオーナーは軽く押した。
それはパワーをくれてる感がして、また私に力を与えてくれる。