鬼畜(142)
次の日の朝
いつも通り、空は迎えに来てくれていつも通り学校へと向かう。
いつもよりは、言葉が少ないのが気になったけど、
それはこれからのコトを考えるとしょうがない事だと察しはついたから
あえてそのことには触れなかった。
時間ばかり気になる。
1時間目・・
2時間目
3時間目
だんだんその時が近づいてくる。
そして
キーンコーン~♪
お昼になった。
私たちは何も言い合わせてないのに自然と玄関へ足を向け、そこで
空だけ下履きに履き替える。
私は後ろでその姿を見続けた。
なんかおかし・・
これが最後じゃないのに。
終わればすぐに会えるのに。
なんだか、これじゃ、今生の別れみたいじゃん?
そんなことを思っていると
スッと空が後ろを向いて
「じゃ、行ってくる。」と笑顔を見せた。
空じゃなくて、相馬くんの格好でのその笑顔は、あまり見慣れてないせいか少し笑えた。
「なに笑ってやがる。」
「はぅ!」 しまった中身は鬼畜のままだったっ!!
「帰ったらおぼえとけよ。」
そんな捨て台詞を言って空は校舎から出て行ってしまった。
いつもだったらそんな言葉も怖くて固まっちゃうのに、今日は違う。
帰ったら・・って言葉が嬉しかった。
そん時は好きにしていいよっ!って思いながらも内心少しヒヤヒヤしている。
マジ、フルボッコにされたらたまんねぇ
そんな事を思いながら、教室に戻ると、珍しくお弁当を持ってきてるりかちゃんと目が合った。
「あれ?美未香、ダ~リンは?一緒じゃないの?」
「あー・・うん、今日はちょっとね。」
「ふ~ん」
「それより、りかちゃんがお弁当なんて久しぶりに見たよ、もう食べたの?」
「うん♪今日はシェフの手作り~♪まだこれから食べるんだけど美未香は?」
「私もまだ♪一緒に食べよっか♪」
「うん♪裏庭行く?それともここで食べる?」
「んー」 あまり動く気力がでない
から
「ここで食べよ♪」
そう言うと、りかちゃんはにっこり笑って椅子に座りなおした。
教室での昼食を食べ始めたとき
ふいにりかちゃんから「何かあった?」と聞かれたが、
ううんと首を横に振ってなんとかごまかす。
でも、わかりやすい私の表情をりかちゃんは見逃すハズがない。
それ以上聞いてこないのはりかちゃんの優しさだ。
その証拠に、お弁当を食べ終えてたわいない話の後、
「なんかあったらいつでも相談して。」 とだけ言って自分の席に戻っていったから。
ありがとね・・りかちゃん
すべてが終わったら、笑顔に戻るから。
ああ・・それにしても時間が長い・・
空が出て行ってからまだ1時間もたってないのに・・
もう何日も待ってる気がする。
それは少し大げさだと思うかもしれないけど、その時は本当にそう感じた。
早く
早く帰ってきて。
無事に帰ってきて。
祈る気持ちでいた