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僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


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6 どうしてもその顔を思い出す

 僕は、テーブルの上のご馳走を見る。

 デパ地下の惣菜屋かってくらい、大皿に色とりどりの食事が並んでいた。

 一つカナッペを齧ると、

「僕、ちょっと今日は食欲ないや」

 なんて言って、自室へ上がった。


「え、ちょっと」

 なんて母の声が背中を追いかけてくる。

 せっかくのご馳走だけれど、あまり、食事を取る気分ではない。


 4年前のあの日から、打ちのめされてされてきた恋心だった。


 莉子は、あの日からも、週に2、3度は兄貴の部屋に忍び込んでいた。

 時には楽しく話し、時にはまたあの時のようにコソコソとした小さな笑い声だけが聞こえた。


 諦めないと、辛いだけの恋心だった。


 それでも、会話をする度に、触れられる度に、心臓が高鳴った。


 なんだよ、さっきの顔。


 あんな寂しそうな顔で見られると、どうにかなってしまいそうだ。

 触れたくて。

 抱きしめたくて。


 それにもしかしたら、ヤキモチなんて、妬いてくれたんじゃないか、なんて。都合のいいことを考える。

 しかも……、『何かあったか』なんて聞いて……。期待してること、言ってくれるんじゃないか、なんて。


「…………」


 そして、兄貴の部屋の扉を見る度に、あり得ないことを妄想する自分が、たまらなく苦しくなるのだ。




「尚人」

 階段の下から、呼び止められる。

「ん?どうしたの?」


 “面倒を見てくれ”と頼まれた相手、アンナだ。

 キュルンとした瞳でこちらを見上げている。


 コイツの父親自らこの家まで頭を下げに来たくらいだから、面倒を見るのくらい構わない。

 アメリカから来たと言うし、不便なこともあるだろう。


 けど、なんでこんなひっついて来るんだ?文化が違うとでもいうやつだろうか。


 腕を振り解けばところ構わず泣き出すので、面倒になってそのままになっている。

 呼び捨てで呼ぶように言って来たのもアンナからだった。呼び捨てで呼ばないと、コイツは返事もしないのだ。

 ……まあ、彼女だのなんだの、言い訳する相手も居ないしな。莉子を思い描いて、頭から振り払う。

 別に、コイツが嫌いなわけでもないし。


「ご飯食べないと、ぶっ倒れちゃうよ!」

 アンナがニコッと笑う。

 お節介で面倒だが、それをわざわざ顔に出す理由もない。

 今だけの付き合いなのだから、ニコッと笑って、

「ちょっと寝不足でさ。休んだら、食べるよ」

 なんて言っておけば、引き下がるんだから。

「うん、じゃあ、一人分置いておくね」




 頭がグルグルとする。

 莉子のことを考える。さっき会った時の顔が、忘れられずにいた。

 気になって仕方がない。心の中は莉子ばかりだ。

 そして莉子のことを思う度に、兄貴のことも思い出した。

 愛し過ぎる気持ちと嫌悪感で、いつだって、心の中はグチャグチャだった。


 暗い部屋の中、ベッドに横になり天井を見上げた。


 グチャグチャなのに。さっきの莉子の顔を思い出し、反芻した。


 あの顔で、兄貴の名を呼ばれたら、僕は死んでしまうかもしれないと思いながら。

 それでもあの顔を抱きしめて、嬉しそうにする妄想を止めることが出来ない。

両片想いなので、くっつく以外にはない、と思うんですけどね……。かなり拗れちゃってますね……。

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