表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/60

59 暑いんだから泳がなくっちゃ(3)

「いただきま〜す」

 海は、なかなか楽しいところだった。

 尚とも、遊べたし。


 まあ、目の前の状況を見るに、一人置いていかれたあたしが不憫だった、というだけなんだろうけど。

 きっと今でも、友達でいてくれるつもりなんだし。


 広げたレジャーシートの上で、それぞれが買ってきた焼きそばやらおにぎりやらを囲む。


 目の前では、ラブコメが繰り広げられている。

 尚の隣に、アンナちゃんが座っている。

 アンナちゃんは、尚と手が触れれば照れた顔を見せ、目が合えば困ったように笑う。

 やっぱり、微妙な空気になっちゃってるのは、この集まりにあたしがいるからだろう。

 そりゃあきっと、“カレシ”が別の女の子誘って遊んでたら、複雑な気分にもなるよ。それくらいは、あたしにだって想像できる。


 あたしはいたたまれなくなって、

「焼きそばおいしー」

 なんて、どうでもいいことを呟く。


 それに反応したのは、隣にいた拓真だった。

「ちょーだい」

 拓真は意外と食べるのが好きだ。

「はい」

 そして、適当にあげるわけだけど、こういう時はちょっと自分が優位に立っているような気分になって、正直それほど悪くはない。

 とはいえ、焼きそばをあーんさせるわけにはいかないから、そのまま焼きそばを預けてしまう。


「あ、ねぇ、あれ、何の鳥かしら」

「カモメかなぁ?」

「鳴いてるの鳥の声だよね」

 隣にいた綾と海を眺めていると、隣から、ずぞぞぞぞと焼きそばをすする音がした。

「えっ」

 慌てて拓真を見ると、焼きそばをかきこんだまま、純粋無垢な目であたしを見た。

「……一口でしょ」

「一口だよ」

「それが!?」

 思わず半泣きになる。


「そっちのもちょうだい」

 口を尖らせて拓真の持っていたたこ焼きを一つ奪ったけれど、満足は出来なかった。


「わかったわかった」

 拓真が呆れた顔で立ち上がる。

「なんか奢ってやるから、来いよ」

「はぁい」


 そこで声を上げたのが尚だ。

「僕も行くよ」


 一瞬、心臓が飛び跳ねる。

 こんなの、ご飯を一緒に買いに行くなんて、深い理由なんてあるわけないのに。

 そりゃあ、兄がご飯買いに行くなんていったら、弟がついていったって、何の不思議もないのだ。


 けど、拓真はなぜだか好戦的だった。

「尚人、来んの?」

 それはもう、来ない方がいい、みたいな空気を帯びて。


「うん」


 あらら?

 尚の返事も、なんだかトゲのある声だった。

 まあ、『来んの?』なんて言われたら、トゲトゲしくなるのも仕方ない。


「行こ」

 尚が、あたしの右手を掴む。

「尚……!」


 ……またこんなことをして誤解されたら、困るのは尚なのに。


 引き剥がそうとしたところで、

「は?」

 声を上げたのは拓真だ。

「じゃあ俺も」

 そして拓真があたしの手を取って、左側に並ぶ。


 さ、三人ならセーフだろうか……?


「ふっ……ふふふふふふ」

 あたしはそんな二人のやり取りに笑いながら、久しぶりに並ぶ三人の居心地の良さを愛しく思ったんだ。

嫉妬しつつも莉子ちゃんから見るとほのぼのらしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ