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僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


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57 暑いんだから泳がなくっちゃ(1)

 結局、みんなで海に行くことになった。

 メンバーは、僕、莉子、兄貴、アンナ、いつも莉子といる橘優香と吉岡綾に、日向だ。

 ……いくらなんでもメンバーが多くないか?


 僕はどうにかして、莉子と二人にならないといけないのに。

 それも、兄貴がなんとか来ないように出来ないかと、兄貴と海について話していると、そこで部屋に入ってきたアンナに聞かれ、アンナまで行くことになってしまっていた。


 早朝、全員で電車に乗る。

 莉子の隣は、橘。その逆は兄貴だ。


 莉子は、兄貴と何やら楽しそうに話している。


 チラチラと気にしていると、少し離れて一人で立っているアンナと目が合った。

 困ったように笑いかけてくる。

 ……こっちはこっちで、なんだか申し訳なく思えてしまう。


 アンナとも、まだ関係はぎこちない。

 まあ、わざわざ友達になりに行こうと思う相手でもないから、それほど気にしたくはないのだけれど。

 あまり触らないようにと突き放したせいで、一人でいるところを見ると、やはり少し申し訳なく思ってしまうところはあった。


「お前、すげぇな」

 隣で、日向がつぶやく。

「何が?」

 問い返すと、日向はメンバーを見渡した。

「この状況で遊ぼうって思うのがだよ」

「え?」


 日向は、莉子の方を眺める。

 教室での宣言を聞いているから、日向は僕が誰を好きなのか知っているのだ。

 日向は、少し悩んだ末、言葉を選びながら言う。

「……二人で、遊べばいいのにさ」


「そりゃあ、僕もその方がいいけど。無理だったんだよ。最近……、避けられてるし」

「確かに、朝から会話してねーもんな」

「うん……」


「このまんまじゃ……」

 と言いながら、日向は莉子と兄貴を見ていた。

 言葉にするのを躊躇っていることが、何なのかがわかってしまう。


 兄貴に取られるんじゃないかと言いたいのだ。

 そりゃあそうだ。あちらはいつだって楽しく話しているのに、こちらはほぼ会話ゼロ。

 どう考えても、僕の方が不利だった。

 絶望的と言いかえてもいいかもしれないくらいに。


「それでも、何もしないまま終わりになんてさせたくないから」


「あー……」

 日向は、呆れた声を出す。

「ま、俺は味方だからさ。手助け出来そうな時は助ける」

「うん」


 莉子は、一緒にいたいとわざわざ言わなくては、一緒にいられない関係になってしまった。


 だから、僕は言わなくちゃいけないんだ。

 莉子と、一緒にいたいって。




 そんな風に、海辺へ向かう電車は、僕たちを乗せてゆったりと進んでいった。

 ガタンゴトンというタイヤの音が、小さく車内に鳴り響く。


 最後には、

「わぁ……」

 と、莉子の声がした。

「綺麗な海……!」


 莉子のそばにいた橘と吉岡の二人が、莉子の声に呼応するように、

「すごいわね……!」

「きれい……!」

 と声をあげる。


 潮の香りが鼻をつく。

 窓の外には、普段見えない海が、窓いっぱいに広がっていた。

さて、夏休みらしいイベントに突入です!

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