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僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


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47 一緒にいるのは特別なこと(2)

 それは、いつものノリだった。

 けど、尚が断れるように。

 ちょっと大げさに。冗談で済むようなことを要求したつもりだった。

 断られた時に、アンナちゃんを気遣ったのか本当に要求が大きすぎたのか、あたしがわからなくなるように。


 けど、尚がすんなりと受け入れてしまったから、ちょっと拍子抜けする。


 そして、翌日。

 既に準備が出来たというので、あたしは夕方、お隣へお邪魔したのだった。


「お邪魔します」

 尚と一緒に学校から帰り、制服のままでお隣へ入っていく。

 もしかして、なんて思いながら様子を窺いつつ入っていったけれど、そこにアンナちゃんはいなかった。それ以外の誰も。


「着替えてくる。ちょっと待ってて」

 と尚が自分の部屋へ行ってしまうと、リビングに一人になる。

 つい、キョロキョロとしてしまう。


 ほんの数ヶ月前は、よくここでゴロゴロとしていた。ここに居座っている猫みたいに。

 尚がいるかどうかも、拓真がいるかどうかも関係がなくて、ただ、まるでここが散歩の目的地なんじゃないかって感じに、暇があればここに来ていた。

 アンナちゃんが来てから、そうもいかなくなったけど。


 数ヶ月経った今も、リビングは以前とほとんど変わらない。

 けど、いくつか変わったものもあった。

 新しく壁にコルクボードがかかっているということだ。

 コルクボードには、アンナちゃんを中心とした家族写真が写っている。

 その中には、もちろんアンナちゃんと尚がくっついている写真も。


 心臓をキュッとさせつつ、見なかったことに出来るほどポジティブでもなくて。

 そこに一緒に飾ってあるキーホルダーを見る。

 ちょっと風変わりなキャラクターのキーホルダー。きっとアメリカからのお土産なんだろう。


 やっぱり、ここはもうあたしの居場所はないや。




 ちょっとセンチメンタルになっているところへ、尚がラフなTシャツ姿で戻ってくる。

「ちょっと待ってて」

 その落ち着いた声に、少しだけドキッとする。


 そしてあたしは、いつものように尚の調理姿を眺めた。

 二人だけの空気は居心地がよくて。

 こんな風に扱われると、やっぱり嬉しい。


 フルーツナイフでサクサクと仕上げられていくフルーツを眺める。

 もう子供の手ではない手際の良さで、プリンとクリームが盛り付けられる。

「こんなにフルーツ用意してくれたんだ?」

「こういうのは缶詰とかじゃなくて、生のフルーツの方が美味しいじゃん?」


「うん。美味しそう」

 こんなことでニコニコしてしまう自分が悲しいけれど。

 それでも出来上がっていくプリン・ア・ラ・モードはキラキラしている。


 ほどなくして、二人の前に二人分のプリン・ア・ラ・モードは用意された。


「わー!ありがとう!」

 以前は当たり前だったひとときは、いつの間にこんなに特別になっていたんだろう。


「前にもプリン、作ってくれたことあったけど、あれと同じくらい嬉しい」


 ニコッとする。

 あの時は、あたしの誕生日だった。

 今年は誕生日プレゼントはなかったけれど、これを誕生日の代わりみたいに思ってもいいかな。


 ちょっと感動しながら、プリンを大事に味わう。


「あ……」


 尚が何か言いたそうにしたところで、玄関の扉の音が、家の中に響いた。

次回もイチャイチャ回になる、かな?

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