表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/58

39 デートしようよ(3)

 僕は、帽子のツバを引き下げて、伊達メガネをぐっと持ち上げる。


 こんなことをしても、どうにもならないことはわかっていた。

 後をつけていったところで、それを阻止できる権利もなければ勇気もない。


 けれど、今朝、兄貴が莉子と出かけて行ったのを見て、居ても立っても居られなくなってしまったのだ。

 いつも通りと言えば、いつも通りだったのかもしれない。

 けど、莉子がちょっとオシャレをした格好で、顔を赤らめて誰かと二人連れ立って歩いている姿を見ると、もうどうにかしたい気持ちでいっぱいになった。


 このままついて行って、見たくない光景を目にする可能性だってあるのに。

 ……莉子と兄貴のキスシーンとか、トラウマものだろ……。


 そんなことを思いながら、それでも後をつけて行かないわけにはいかなかったのだ。


 電車の中の二人は、静かで、それでも嫌な空気が漂っているわけではないみたいだった。

 黙っていても居心地のいい間柄……。

 二人が二人きりで会う時間はかなり多かったはずだ。

 きっと、僕よりも。


 行き先は、どこかのイラストレーターの原画展だった。


 もしかしたら、何か用事があって、仕方なく二人で出掛けた可能性だってあるんじゃないか、なんて希望を持っていたことに気づいてしまった。

 そして、その希望は見事に打ち砕かれたのだ。


 莉子は子供の頃から絵が好きだった。最近では、デザインの勉強もしているようで、よくそれ関係の本を読んでいる。

 実際、学校の掲示板に貼り出すポスターのデザインもやったことがあった。


 兄貴の方は、絵が好きなのかどうかわからない。

 そもそも、兄貴が高校に入ったあたりからは、受験やら何やらで部屋に篭りがちになって。……アイツに趣味なんてあっただろうか。

 けど、十中八九、莉子の好みに合わせた、ということだろう。


 興味はないけれど、原画展の中に入る。

 ここまで来ればもう意地と言ってもよかった。


 莉子の好きそうな絵に囲まれて、茫然とする。

 たくさんの人間の隙間に、莉子の姿を探した。

 見つかったらヤバいくせに、立ち去る気持ちになれない。


 二人が同じものを見て嬉しそうにする度に、痛くて、痛くて。




 最後の土産物コーナーは素通りして、外でコッソリと莉子と兄貴を待った。


 二人は、話題のカフェに入っていく。


 二人で楽しそうに入っていく姿は、正直、付き合ってるカップル以外の何ものにも見えなかった。


 夏の入り口のカフェテラス。

 木漏れ日がさやさやと床に影を作る。

 カラフルなジュース。二人の笑顔。


 特に……兄貴。


 兄貴って、あんな風に笑うやつだったか?

 嬉しそうに話す姿は、相手が莉子だからに違いなくて。


 兄貴も莉子のこと好きとか、そんな……そんなのって…………。


「何やってんだよ……僕は……」


 苦しくなってその場を離れた。


 それでも僕は、莉子を嫌いになる方法が、ずっとわからずにいるんだ。

尚人の方はずっと辛そうですね!がんばれ〜!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ